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戦争に向けて
開戦は何時になるか
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「あの爺の言う通りにした方がいいのかもしれないわね。」
ツチイは、自国に戻り、ウスイが傍らにいない日々を寂しく思いながら、1週間後には彼が来てくれることを待ちわびながらも、呟いてしまった。
彼女が、リツシユン王国でウスイとともに過ごした最後の日、次の日には彼女は自国に向けて旅立った、それは
つい半月前のことだが彼女にはひどく長い日々のような気がしてならなかったが、三位一体教会の老修道士が、彼との拝謁を求めて参上した。彼は嫌な顔をもせず、それを許し、ツチイを伴って、彼と玉座に座りながら対面し、話しを聞いた。
「ツチイ様が、いかに陛下をお愛しになり、お美しく、貞節にして、誠実で、寛大にして、聡明な、お優しい、有能である方であることは、よく知っております。あなたほどの女性は、人間界にあっても得がたいほどのお方であると思っております。」
と前置きして、それが全くのお世辞抜きであること、彼が世辞などは言わない男であることは良く知っていたし、その場でも感じていた。
「それでも。」
と彼が言ったのは、平和のために、女魔法と離婚し、二重王国を解消し、ウスイが三位一体教会信徒に復帰することをウスイに諫言したのであった。
ウスイは、彼の諫言に可とも不可とも言わず、彼に謝辞を述べ、聖都に赴き教皇に自分に戦意はないこと、三位一体教会信徒の保護を確約することを伝えてほしいと命じただけだった。もちろん、穏やかに、丁重にだった。
老修道士は、大きなため息と失望した表情だったが、それに同意して立ち上がった。一瞬、すがるような視線をツチイに送った。
彼が、何のかんのとは言っても、師として以上に、父のような慈愛をウスイに向けていることは、彼女には理解できた。
「何故、人間達は小難しい教義のことに、かくもまでこだわり、問題にして対立しあうのだろうか?」
と思うのだが、彼が三位一体教会信徒を正統、正義と信じているものの、それを超えて人命が失われることを憂慮していることは分かった。そのことは、ウスイにも通じていると、彼女は思った。
タイカーン国魔王として、この再洗礼派教会の信仰を守るための戦いに協力すべきかどうかも考えなければならなかった。単純に考えれば、全くないし、迷惑千番だ。ミーナ国は倒れたが、その残党というか、各地の何人かの有力者の下に結集して抵抗の姿勢を見せている勢力があるし、ミーナ国がなくなったせいで、他の魔族の国と境を接したことになる。人間達の争いに力など削ぎたくはない、というのが本音だ。彼らがミーナ国との戦いで協力、支援してくれたとはいえ、その借りは、既に返していると思っていた。
その一方で、これも本音であるが、人間、リツシユン王国と二重王国となったことで、農林水産鉱工業、商業が盛んになり、物資は豊かになり、国力は強くなり、民の生活は豊かになった。彼女の領内でも、新たな魔獣の加工場や魔法石の加工場ができたし、田畑は一部灌漑も進み、そうでないところも以前では考えられないくらいにりっぱになっていた。魔族達もなかなかやるじゃないか、やってきた人間達に大いに関心させるほど、仲間達からも驚かれるくらい器用で、巧で、優秀な連中が現れた。本当はいたのに誰も気が付かなかったのだ、いや、価値を見出さなかったのだ。人間達のおかげで、多くの魔族が自分の生きがい、働き甲斐、能力を振るえる場所をみつけることができたわけである。そのことも、そこから、そういうことから出て来る利益は、もう捨てがたいほどなのだ。軍事的にもリツシユン王国の支援は、出来れば、いやどうしても欲しい、必要だ。色々な軋轢もある、人間風情と二重王国などとはとかの反対派もいる。それを差し引いても、リツシユン王国との二重王国は、有益この上ないのだ。タイカーン国だけになったら、と考えるとその未来は実に不安だ。
リツシユン王国にとってはどうか?プラス、マイナスある。
それでも、戦争を、人間同士の戦争を回避することができれば、人間達は野蛮ではあるが、魔族と違って支配する者と支配される者以外の関係で平和を維持、それが一時的であったり、永続的なものではないとは言え、する手段を持っていることをツチイは知っていたし、他の魔族の部族との間で、その関係を結ぶ構想を持っていたが。
「だけど・・・。」
五歳の時に初めて会った時、泣いている自分を、自分が泣きたいくらいの時なのに、励まして、笑わせようとして・・・その後は常に優しく励まし、道を指示し、相談に乗り、困難を解決してくれ、ともに戦い、支援、協力してくれて、助けてくれて・・・そして愛してくれて、愛し続けてくれるウスイと別れたくない、と思ってしまう。
「別れたくないよ~。」
一人寝のベットの上で、自分でも大きく、形のいい乳房を自分の手で揉み、ブリッジを作って喘ぎ声を出しながら、ツチイは呟いていた。それが続いていた。
「君がいなくて寂しかったよ~。」
「わ、私だってよ。」
と、もうほとんど強行軍でやってきたウスイは、会う早々ツチイを強く抱きしめた。もう、その2人には国王と魔王の威厳はなかった。側近も侍女もそそくさとその場を離れた、気を利かせて。
「体が汚れているから・・・。」
と言いながらもそそくさに衣服を脱ぐツチイと、
「それは俺の方だよ。」
といって、自分も裸になり、彼女をベッドに押し倒す、ウスイ。
声を上げ、激しく動いた後、ぐったりして、
「もう、死にそう。」
というツチイ、何度目かである、を対面で座って抱きあげながら、ウスイは
「国が、国民がどうなろうと、俺は君といたい、それだけなんだよ。」
と強く抱きしめる彼に、頷きながら、それまでの全ての悩みを、迷いを忘れるツチイだった。
その頃、シユン王国では、聖女ケイはその大きな胸を鷲掴みにされながら、喘いでいた、第三王子の下で。
「素晴らしいよ。聖女様。」
「ケイと、ここではケイと呼んで下さい。」
「せ・・・ケ、ケイ。愛しているよ。」
「わ、私もです。」
ツチイは、自国に戻り、ウスイが傍らにいない日々を寂しく思いながら、1週間後には彼が来てくれることを待ちわびながらも、呟いてしまった。
彼女が、リツシユン王国でウスイとともに過ごした最後の日、次の日には彼女は自国に向けて旅立った、それは
つい半月前のことだが彼女にはひどく長い日々のような気がしてならなかったが、三位一体教会の老修道士が、彼との拝謁を求めて参上した。彼は嫌な顔をもせず、それを許し、ツチイを伴って、彼と玉座に座りながら対面し、話しを聞いた。
「ツチイ様が、いかに陛下をお愛しになり、お美しく、貞節にして、誠実で、寛大にして、聡明な、お優しい、有能である方であることは、よく知っております。あなたほどの女性は、人間界にあっても得がたいほどのお方であると思っております。」
と前置きして、それが全くのお世辞抜きであること、彼が世辞などは言わない男であることは良く知っていたし、その場でも感じていた。
「それでも。」
と彼が言ったのは、平和のために、女魔法と離婚し、二重王国を解消し、ウスイが三位一体教会信徒に復帰することをウスイに諫言したのであった。
ウスイは、彼の諫言に可とも不可とも言わず、彼に謝辞を述べ、聖都に赴き教皇に自分に戦意はないこと、三位一体教会信徒の保護を確約することを伝えてほしいと命じただけだった。もちろん、穏やかに、丁重にだった。
老修道士は、大きなため息と失望した表情だったが、それに同意して立ち上がった。一瞬、すがるような視線をツチイに送った。
彼が、何のかんのとは言っても、師として以上に、父のような慈愛をウスイに向けていることは、彼女には理解できた。
「何故、人間達は小難しい教義のことに、かくもまでこだわり、問題にして対立しあうのだろうか?」
と思うのだが、彼が三位一体教会信徒を正統、正義と信じているものの、それを超えて人命が失われることを憂慮していることは分かった。そのことは、ウスイにも通じていると、彼女は思った。
タイカーン国魔王として、この再洗礼派教会の信仰を守るための戦いに協力すべきかどうかも考えなければならなかった。単純に考えれば、全くないし、迷惑千番だ。ミーナ国は倒れたが、その残党というか、各地の何人かの有力者の下に結集して抵抗の姿勢を見せている勢力があるし、ミーナ国がなくなったせいで、他の魔族の国と境を接したことになる。人間達の争いに力など削ぎたくはない、というのが本音だ。彼らがミーナ国との戦いで協力、支援してくれたとはいえ、その借りは、既に返していると思っていた。
その一方で、これも本音であるが、人間、リツシユン王国と二重王国となったことで、農林水産鉱工業、商業が盛んになり、物資は豊かになり、国力は強くなり、民の生活は豊かになった。彼女の領内でも、新たな魔獣の加工場や魔法石の加工場ができたし、田畑は一部灌漑も進み、そうでないところも以前では考えられないくらいにりっぱになっていた。魔族達もなかなかやるじゃないか、やってきた人間達に大いに関心させるほど、仲間達からも驚かれるくらい器用で、巧で、優秀な連中が現れた。本当はいたのに誰も気が付かなかったのだ、いや、価値を見出さなかったのだ。人間達のおかげで、多くの魔族が自分の生きがい、働き甲斐、能力を振るえる場所をみつけることができたわけである。そのことも、そこから、そういうことから出て来る利益は、もう捨てがたいほどなのだ。軍事的にもリツシユン王国の支援は、出来れば、いやどうしても欲しい、必要だ。色々な軋轢もある、人間風情と二重王国などとはとかの反対派もいる。それを差し引いても、リツシユン王国との二重王国は、有益この上ないのだ。タイカーン国だけになったら、と考えるとその未来は実に不安だ。
リツシユン王国にとってはどうか?プラス、マイナスある。
それでも、戦争を、人間同士の戦争を回避することができれば、人間達は野蛮ではあるが、魔族と違って支配する者と支配される者以外の関係で平和を維持、それが一時的であったり、永続的なものではないとは言え、する手段を持っていることをツチイは知っていたし、他の魔族の部族との間で、その関係を結ぶ構想を持っていたが。
「だけど・・・。」
五歳の時に初めて会った時、泣いている自分を、自分が泣きたいくらいの時なのに、励まして、笑わせようとして・・・その後は常に優しく励まし、道を指示し、相談に乗り、困難を解決してくれ、ともに戦い、支援、協力してくれて、助けてくれて・・・そして愛してくれて、愛し続けてくれるウスイと別れたくない、と思ってしまう。
「別れたくないよ~。」
一人寝のベットの上で、自分でも大きく、形のいい乳房を自分の手で揉み、ブリッジを作って喘ぎ声を出しながら、ツチイは呟いていた。それが続いていた。
「君がいなくて寂しかったよ~。」
「わ、私だってよ。」
と、もうほとんど強行軍でやってきたウスイは、会う早々ツチイを強く抱きしめた。もう、その2人には国王と魔王の威厳はなかった。側近も侍女もそそくさとその場を離れた、気を利かせて。
「体が汚れているから・・・。」
と言いながらもそそくさに衣服を脱ぐツチイと、
「それは俺の方だよ。」
といって、自分も裸になり、彼女をベッドに押し倒す、ウスイ。
声を上げ、激しく動いた後、ぐったりして、
「もう、死にそう。」
というツチイ、何度目かである、を対面で座って抱きあげながら、ウスイは
「国が、国民がどうなろうと、俺は君といたい、それだけなんだよ。」
と強く抱きしめる彼に、頷きながら、それまでの全ての悩みを、迷いを忘れるツチイだった。
その頃、シユン王国では、聖女ケイはその大きな胸を鷲掴みにされながら、喘いでいた、第三王子の下で。
「素晴らしいよ。聖女様。」
「ケイと、ここではケイと呼んで下さい。」
「せ・・・ケ、ケイ。愛しているよ。」
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