聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

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戦争に向けて

それぞれの思い②

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「どうするのよ。私の力では・・・あの女には・・・。」
 リツシウン王国の聖女の一人が、頭を抱えながら悲痛な声をあげた。
「おいおい、いつもの態度はどうしたんだよ?」
「あんたのように、魔族の女と楽しんでいるお気楽野郎にはわからないわよ。」
 そんなやり取りがあったことを、彼女は思い出していた。
 魔界で、他の魔族部族との交渉で、タイカーン国使節として行って、帰国、自分達の、再洗礼派教会信徒の聖樹などの世話をしていると、何故、そのようなことを言ったのか、かつて、あの聖女のことで対抗心、とても比べられないことなのに、を抱いたのか不思議に思えてさえいた。
 魔界と呼ばれる地で、自分により育てられている聖樹、聖花、聖草・・・。あの聖女達が現れたせいで、消えてしまったと思われた、代々伝えられた、リツシユン王国に昔から自生していた、そして、三位一体教会の聖女達が来て以来、その聖結界が張られてから消え失せたと思われていた、再洗礼派教会の聖女、信徒により大切に育てられていたと伝えられていた、聖樹などが復活したが、魔界の地に、それを見つけ、見つけたのはウスイが派遣したソウテツという思想家というか、錬金術師というか、医師というか、学者というか、農学者というか、建築家というか、土木工事家というか、全てに通じた技術者というか、だった。それを聖女の一人である彼女が世話をすることになったが、直ぐに元気になった。それだけでなく、魔樹とかの類のものまで、彼女の世話で温和な性格になりながらも、元気に育つようになった。三位一体教会の聖女の下で、圧倒的な輝きを見せた聖樹の類も、ずつと小さくだが、育っていた。ソウテツの技術、知識のおかげが大きいのか、彼女ら聖女の力が大きいのか分からないが、彼女らは地震の聖女の力の行使も、ソウテツの指示した世話を両方とも休まずやっているので、ますますわからない。その日々を続けていると、少し前の自分の気持ちが分からなくなるほど、やりがいと落ち着きと満足感を感じる毎日になっていた。
 いまでは、彼女はタイカーン国のかなりの聖樹の類の世話をする立場に、ツチイに抜擢されていた。

 ツチイが言い出し、ウスイが乗ったというより、のめり込んでいった他の魔族への使節の派遣、平和、共存を目指す交渉は、大きな動揺を魔界と呼ばれる魔族達の生存領域に、与えていた。2/3近くの魔族は、門前払いかけんもほろろの対応だったが、ソウテツの弁舌に酔いしれるほどの反応をみせ、提携によるメリットに耳を傾ける魔王もいた。しかもソウテツが伝える、指導する技術や組織などが、効果を示すことが大きかったので当然なことでもあった。

 中には学問好きで博識の、彼のようなのは珍しいが、勇者は、やはり学問好きの女魔王に気に入られ、魔王城で毎日毎日、書物に埋もれて、議論し合っているうちに結ばれるとか、その地で聖樹も魔樹の世話をしている聖女のところに、その血の魔王が様子を見に訪れていたところ、もちろん元々は聖樹、魔樹の成長具合を確認するためにだった、すっかり親しくなって結ばれるという例が続いたのである。結果、少なくない魔族の国々が、リツシユン・タイカーン二重王国と提携を図る、和平条約を締結する方向に進んだのである。そう簡単に交渉が成立、妥結するというわけではなかったが、使節の交換、交渉という事自体が非敵対的な関係ということであり、それだけでも一歩前進だったし、少しでも国力をとりあえずは他の方面にまわすことができた。

「我らは、敬虔な三位一体教会の信徒ではないか?」
「そのとおりだ。だからと言って、王家に反旗をひるがえすことなどは出来ない。」
「匹夫の義に拘る時ではないのではないか?」
「私は、こだわる。」
 リツシユン王国とシュン王国との国境に付近の三位一体教会信徒である領主の館の一室で、そのような会話が飛び交っていた。
 シユン王国は、自分の側の領主達の取り込みを図るのは当然として、リツシユン王国にあくまでも忠誠を守ろうとする三位一体教会信徒の領主達には、飴と鞭での取り組みを図ろうとしてきた。後者は、失敗に終わってしまった。

「魔族に・・・あの女魔王ら敵対する勢力に情報を流せないか?背後を突かせる・・・は不可能か?」
「・・・・。」
 シユン王国王太子の下問に、宰相、三位一体教会修道士である顧問官、側近達も声が出なかった。理屈はわかるが、魔族と提携しようなどというリツシユン王国と同様な行動、おぞましい行動を取っていいものか迷ったのであると同時に、方法が思いつかなかったのだ。
「魔族の捕虜に情報を伝え、解放してみてはどうだろうか?」
 ああ、その手があったか、と誰しもが思ったが、それでも誰もが躊躇した。

「魔族の捕虜を解放して、情報を伝えて、帰せ?なんで俺に・・・。」
 王都からの勅書を読んで、首を捻ったのは、第一王子カサギだった。それはしばらくたってからだった。

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