聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

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平和に向けて?あるいは新たな戦いの幕間

平和のための戦いの準備?

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「あの偽王ウスイは、魔の力があるようだ。」
 シユン王国王太子は、ため息をつくように言った。王太子妃と二人だけの寝室で、寝酒を酌み交わしながらつぶやいた。
「それは、どのような力なの?」
 小柄で見事な金髪の美しい王太子妃は、煽情的な夜着を着ていたが、真剣そうな表情で尋ねた。
「聖なる力を無効にしたり、自分の味方の魔力・・・兵器の力まで強めるというものだ。だから、奴と娼婦魔王ずいるところでは、我が軍は大敗したのだ。」
「それなら、彼は一人ですから、別のところで99勝すればよろしいでしょう?」
は微笑みかけた。賢い女だ、兄にはやっぱりもったいなかったな、と彼は思った。だからこそ、彼女にこの話をしたのだ。一方、この人は、もうそんなことを考えているでしょうね、と彼女は考えていた。
「どのようなことを考えられているのかしら?」
「こちらも、魔族を利用しようと思っている?」
 少し驚いた。しかし、どうやって、もう考えているわよね、と思って、
「どのようにして?魔族の女を妻に迎えると言うのではないでしょうね?」
彼女は、冗談めかして問うた。ただし、最後には嫉妬の色が出ていた。
「利用するだけだ。相手も、そのつもりだろうが、裏をかいてやるさ。リツシユン王国内の不満分子と連絡が取れている。奴らを利用して、魔族との伝手にした。こいつらを利用する。」
 流石ね、と彼女は思ったが、さらに詳しいことまでは、彼が語らないと思ったので、質問はしなかった。話題を変えた。
「兄上はどうするの?あのつまらない女達に夢中なようだから、大したことはないのでは?」
 最後は付け足し、途中からは嫉妬まるだしだった。二人は、彼女のものを奪って、好き勝手にやっていると思えてならなかった、彼女にとっては。自分が捨てておいて、未練はあるのか、と半ば嫉妬も感じながら、彼は、
「二人とも競うように、実家に事細かく、兄者の行動を伝えている。それが、そのままこちらに来ている。愛されていると思い込んで、哀れなものだ。」
 自分で婚約破棄しておいて、くやしいのかしら?とも思い、また、なんて女達かしら、あの人、哀れ過ぎるわね、それが、彼女の思いだった。

「シユン王国と三位一体教会と和解ですって?」
「平和は何よりですが、国王陛下に対する反逆ではありませんか?」
「なによりも、私達の信仰に対する裏切り・・・多くの信徒達は、そう思うでしょう?」
「魔族とはいえ、同じ信徒となったタイカーン国の魔族達を裏切るというのは・・・。」
とある城の一室で、集まっていた貴族達が一斉に疑問の声をあげた。 
「まあ、待ちたまえ、結論は急いではだめだよ。」
 広間の奥に座った、中年の、すでに顔がブルドッグのように膨らんではいたが、脂ぎってはいるが、なかなか逞しい体と聡明そうな、それは少し狡猾さも感じさせる顔つきの、それ故に人を惹きつける男だった。王族に連なるというより、既に亡くなっているが、王族出身のを持っていた有力貴族の一人だった。
「国王が三位一体教会信徒に復帰するという条件を飲むが、当面は棚上げにして事を進める、和解する。そして、平和を共有するということだ。タイカーン国のことは、あくまで彼らの選択だ。不満をもつ者達がいるということは、その王に問題があるということだ。私一身のことで、信仰が守られ、平和が実現するなら、それでいいではないか?」
 彼は自信ありげに、かつ、恫喝するように、さらに、自分が使徒達のような苦難を背負う者だということを押し付けるように、皆を見回した。
「しかし、ウスイ陛下とツチイ陛下により勝利を得たわけですから・・・。そのお二人と戦うというのは・・・勝算はおありなのですか?」
「それに・・・硝石の生産や魔法石の確保など・・・我らは供給を受ける側ですから・・・。」
と心配の声が上がる。
「硝石の生産も、魔石もだ、私の知的戦略で解決している。」
"本当かよ?"と半ば以上が引いていた。その時、いつも発言が多すぎる男が、黙ってきいるのに誰もが気が付いた。その視線を感じたのか、その髭面の、好感がどういうわけか持てる逞しい男は、
「分かりましたよ。あなたを支持しますよ。」
とにっこり言いながら、"前は灰汁の強い男だったが、有能ではあったのだがな・・・。あの後妻と一緒になってから・・・もうダメだ。信仰を売りかねない。"彼は、既に離反して、国王の元に駆けこもうと決めていた。

「おい、魔族って・・・。ツチイ様に反旗をひるがえして、他の魔族、人間を皆殺しか、奴隷か、略奪の対象としかみない連中と共闘する、そのための支援をしてくれと人間の都市に言ってくるとは・・・どういう頭だい?」
 ターイカン国の人間が主に居住する都市では、評議員が市議会で嘆くような発言をしていた。
「我々の態度は、決まっているではないか?」
と誰かが言うと、
「この機を利用して、魔族からの独立をという考えを持つ者もいるだろう。」
「三位一体教会信徒も新教各派の信徒もいるしな。皆で共存するより、自分達だけでという連中もいる・・・。」
と、本当は自分の心内を他の者にかこつけて発言する者も相次いだ。
「現実的にだな、ツチイ様から離脱して、我らがここでうまくやっていく方策はあるのか?納得させてくれる方策なりを提示してくれないとだな、それなしには、私としては乗れないな。私としては、ツチイ様の陣営にはっきり立つ方が勝算があると思う。それに、その方が色々と価値が高まる。」
 それに反論できるものが、続かなかった。
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