聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

文字の大きさ
59 / 65
その後?

ただいま③

しおりを挟む
 カサギは、結論を、理性の声に従って、口に出そうとした。三人の緊張している表情も心の内からも、圧力の強さを感じた。今ならエイリもマキイアも、まだ帰ることができる、幸福な家庭に、夫と子供のもとに。自分よりずっと快感を与えてくれているだろう、雄としての悦びを与えてくれるだろう、それに子供は、腹を痛めた子供への気持ちはかけがえないものだろう。ミナは、既にウスイ様とツチイ様の信頼を得ているし、あの方々はかつての敵を受け入れる、度量が十分ある。彼女と彼女の部族を安堵させてくれるだろう、自分などいなくても。いや、自分がいなくなった方が、やりやすいだろう。シユン王国にとって害のある存在である自分には、領地はあまり与えられない、勢力が強まって、シユン王国への野心が生まれては困るし、シユン王国の疑惑を招いては避けないといけない。自分と関係なければ、彼女達は、よりよい土地を与えられるだろう。理性はそのように、彼に語り掛けた。
 だから結論は、一番彼女達のためになるのは、エイリとマキイアを追い返し、ミナを捨てることだった。できるだけ言葉を選んで、彼女の心を傷つけないように、自分を悪者にして、彼女達に愛想をつかされるようにしなければならない、語ることだった。その言葉を考えているうちに、彼女達の裸身の匂い、感触、喘ぎ声、味、美しさ・乱れる姿が五感に感じてしまった。
"そんなことに・・・。俺は、そんな屑野郎なのか。"
 理性が、自分を押しとどめる、欲情に走る自分を、のを感じたが、"だめだよー!"彼は心の中で叫び狂った。

「ただいま。遅くなった。」
 カサギからの口から出た言葉は、それだった。本来なら、「おかえり」が正しいのかもしれないが、彼女らの待つところにやってきた形であったこと、彼女達が出ていったのではないことにしたいと彼なりの思いやりではあった。
 そして、ミナの手をしっかりと握りしめた。
 長い、実はほんの僅かの時間だったが、不安と期待で不安に胸が潰されんばかりに緊張していた3人は、涙が溢れさせた。そのまま、エイリとマキイアは立ち上がり、時間が過ぎるのを恐れるかのように駆け寄り、彼に寄り添った。ミナは、彼の肩に自分の頭を預けた。
「離したくない。」
とカサギは三人を抱きしめた。

「ただいま・・・か。」
 報告をうけたウスイは、呟いた。
「その夜は、カサギ様は3人の奥方様と一室で過ごしました。」
 報告者は、その模様を語った。
 それは、ウスイとツチイの軍が、反乱を起こした親シュン王国の、三位一体教会信徒の諸侯の砦を、完全に分断され、孤立無援になっていた、落とした、僅か半日の力攻めで陥落させた直後のことだった。その攻略の先鋒には、三位一体教会信徒の領主達の部隊が動員された。自身の忠誠心を示すためにも、彼らは奮戦した、かなり。冷酷なようだが、社会の常識であり、ウスイは寛大すぎる、社会常識から見て、条件で彼らの復帰を、帰順を許したし、無理な戦いを要求してはいなかった、これもまた常識からすれば寛大な措置だった。そもそもウスイとツチイが陣頭に立、圧倒的な銃砲の火力で砦は瞬く間に城壁が打ち砕かれてしまったからだ。城主は、そのことも読めなかったのであるから、愚か過ぎた。攻め落とされた砦の領主は、統治が厳しく、つまり税金も賦役も多かったことなどから領民達からの支持が少なく、また、再洗礼派教徒やエルフなどの亜人達多数を殺害したことから責任追及として誰しもこの攻撃は認められ、見せしめとしても都合がよかった。本当なら領主一族は皆殺しにしてしまった方がいいのだが、最後の最後での投降を許した。それには理由があった。カサギにも関係していた。

 報告には、その夜のことも触れられていた。
"三人とも美しいな。ナイスバディだ。エイリとマキイアは子供を産んだというのに、体形が崩れていない。たまらないな・・・。全く俺は、最低な男だな。"とカサギが思ったのは、3人の妻が全裸になって彼の前に立って、自分の体を鑑賞させるようにしていた時だった。彼は自分自身にため息をつくと、三人に歩み寄った。
「マキイア。きれいだよ。」
と言って抱きしめ唇を重ねた。彼女はすぐに、もう我慢できないというように、手を彼の後頭部にまわし、自分の唇にいっそう強く彼の唇を押し付けた。二人は、舌を差し入れ合い、絡ませあった、唾液を飲みあい、長い口付けをからした。マキイアはそれだけで体が反応して、膝ががくがくとなり、体の力が抜けてしまった。その彼女をベットに彼は寝かせると、振り返り、
「エイリ。美しいよ。」
と同じように抱きしめ、唇を重ね、彼女もマキイアと同様に強く、深く口付けを長く続けた。ぐったりしてベットの上に横たわる彼女から離れると、カサギはミヤを二人と同様に抱きしめ、唇を重ねた。
「ミナ。可愛いよ。」
と声をかけて。彼女は、2人と同様にぐったりして、ベッドの上で彼女らと並んで横たわることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

処理中です...