聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

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その後?

誰が得をしたのだろうか?

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「女房に逃げられた男どもの泣き言、遠吠えをお聞きになってどうなさるおつもりですか?」
 シュン国王妃は、奥に戻ってきて寛ごうとしている夫である国王に向って声をかけた。少し不機嫌な顔をしていたが、苦笑しながら彼女の方を見て、脇にいる女達を下がらせた。そして、王妃を脇に座るように誘った。それに従って、彼の座る長椅子に素直に従った。
「まあ、彼らは被害者なのだから、同情してやらねばならないのだろう。そのように言っては、可哀想ではないか?私もお前を失ったら、彼らのようになるやもしれないからな。」
と彼女の肩を抱いた大笑いした。まんざらでもない表情を浮べたものの、
「そうかしら?誰を私の後釜にすれば一番利益になるか、あるいは私をうまく駒に、交渉の材料にするのにはどうしたらいいか考えるのではありませんか?陛下はそのような方かと思いますけれど?」
といたずらっぽい目で見た。
「それは、私だけではないさ。あの二人も、私に訴えることで利益を計算もしている。あの涙も、女々しさからだけではないのさ。」
「あら、涙まで流して訴えたのですか?それこそ、どんな企みをもっていたとしても、女々しいですわよ。」
「手厳しいな。」

 エイリとマキイアの夫たちは、訴えることで国王から利益を引き出せると考え、引き出そうとしてしてもいる。国民が不当な処置を外国から受ければ、救済することが国王の義務である。高位な貴族がその立場になているのであれば、なおさらである。国王が二人の妻を取り返すことができないのであれば、何らかな補償をしなければならない、一応建前的には。だから、涙を流してでも訴えているのである、妻を連れ戻してほしいと。
 それだけではない。彼らが訴えることで、シユン王国は、二重王国に対して交渉力を与えることになる、国王に恩を売っていることになることを、彼らは知っているからである。
 どうするか、と彼は考えていた。が、国境に圧力を与えるために送っていた軍からは、三位一体教会信徒領主の反乱があまりに簡単に鎮圧されたこと、二重王国側の軍は質量ともに圧倒的な軍で対峙しており、引き取った反乱の首謀者とともに、撤収せざるをえない、要求は拒否されたが、抗議することはできない状況だという報告がきたのだった。

「撤収したわね。まあ、最初から戦うつもりはなかったようだけどね。何時でも、壊滅させられたけど・・・私とあなたもいるし。」
と言ったのはツチイだった。
「まあ、また、あの3人のことを持ちだすだろうが。」
とため息をついたのはウスイだった。それに頷くツチイ。
 二人はの視線の先には、撤収していくシユン王国軍の隊列があった。シユン王国としては、多少の成果を期待してはいたが、全くなかったといえよう。三位一体教会信徒領主の領地が全体的に減らさないという使命も、ウスイは巧みに分割して、一部分を色々な名目で領主支配から外してしまった。だれもが、文句は言えない形で行っている。交渉は常にリードしていた。"主様は、本当にやるのよね。"ツチイは誇らしく感じていた。ウスイは、
「君が隣に座って、落ち着いて見守っていてくれて、頷いてくれて、相手を威圧し、懐柔してくれるおかげだけどね。」
と言っているのだが。
 シュン王国軍の隊列が見えなくなっても、半ば警戒しつつ、夜営した。引き返してきて、後方を襲うかもしれないという理由からだ。
 ウスイとツチイも武装姿のままで、食事をとり、少しばかりの寝酒を口にした。酒は少しだけということで、交代制での警備ということで、一般兵士たちにも許している。魔族と人間、亜人の男女の将兵が酒を酌み交わしながら、笑いあっていた。その声が聞こえてきた、ウスイとツチイの天幕にも。
「あの4人は、今日も、今頃は浴室で体を洗い合っている頃かな?それとも一緒に湯に使っている頃かな?羨ましいな。」
「あの聖女も、イケメン王子とともに入浴しているころかもしれないわよ。あら、未練でも?」
といたずらっぽく笑いながら、腕を抓った。
「早く帰って、一緒に風呂に入りたいな。」
 彼は、話をそらすように言った。ツチイは、もっと追及しようとも思ったがやめた。
「早く体をきれいにして・・・。臭くて、あなたに嫌われたくないし・・・。ちょっと、へんなところに・・・。臭いのに・・・もう、変態。」
「今の君も煽情的だよ・・・でも、俺の手を、その変なところに導いているのは君の方じゃないか?」
と反論して、彼女の頭に手をやって唇を重ねて、舌を差し入れた。彼女も舌を絡ませてきた。鎧を緩めて、ずらして指と舌で愛撫しあったあと、一体になって激しく動き、彼女は喘ぎ声をあげるまでにそれほど時間がかからなかった。
「私を選んだことを後悔していないわよね?」
「ああ、皆を不幸にしたとしても、絶対後悔しない、していないよ。」
 2人は動きがとまり、快感の余韻を楽しみながら、そう言いあうと、また強く抱きしめ合った。それで残り火に火がついて、また激しく体をぶつけ合った。

  
 
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