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資料を見ながら思考に耽っていると、カラスが部屋に戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「お疲れ様です」
彼は手に持った袋を掲げて見せる。
「今日は3羽回収してきました。確認して下さい」
「・・・ありがとうございます」
袋を置くと、カラスは私が持っていた資料に目をやる。
「進捗はどうですか?」
「・・・これを見てください」
持っていた資料を彼に見せる。
「鳥と、人のDNA図です」
カラスはしばらくそれを見て、そして目を細めた。
「・・・こんなことが、可能なのですか?」
事件後の鳥達から採取したDNA。
そこには、人を構成するゲノムが組み込まれていた。
「理論上は。通常、DNAには機能していない領域・・・ジャンクと呼ばれる場所があります。その鳥のジャンク領域に、ヒトゲノムが全て組み込まれているんです。何の破綻もなく、正常に機能している。にわかには信じられません」
「・・・解決策はあるのでしょうか?」
「そうですね・・・とりあえずの方針ですが・・・」
なるべく専門用語を使わずに、噛み砕いて説明をしていくと、彼はしきりに感心して見せた。
「・・・本当にあなたは、優秀なのですね。思ったより早くカタがつきそうで良かった」
「まだこれは仮説の域をでません。もっとサンプルを集め、研究を重ねなければ」
「わかりました。ではもう少し持ってくる数を増やしましょう」
頷いたカラスを、私は見つめる。
「・・・どうしました?」
「あなたはなぜ人になれるのですか?」
「なりたいと思ったからですが?この姿の方が、人と接触するのに都合が良いと思いまして」
「思うだけで、人になれるというんですか」
「そういうことになります」
今の所、採取したDNAで、敵もカラスも、同じものを持っていた。
だとすれば、ただ自分の意思一つで、遺伝子のスイッチを切り換え、
姿形を変えることができるということになる。
嫌な考えが頭の中を埋め尽くす。
もし、自分達を蹂躙するカラスを見て、人型の方が強い、有利だと相手が思ったら。
今まで襲ってきた鳥が、全て人になったら。
人より遥かに身体能力が高く、空を飛び、海を泳ぎ、大地を駆けることができる、
全てに適応する事のできる悪魔が、人間に紛れ込んできたとしたら。
ふいに、先日のカラスの姿が頭をよぎり、慌ててそれをかき消す。
考え込んで黙ってしまった私に、柔らかな声が降り注いだ。
「少し出かけませんか?」
「・・・こんな時間にですか?」
外はとっくに夜になり、店もほとんど空いてないだろう。
「ええ、こんな時間だからこそです」
カラスは手を差し出す。
少し躊躇ったが、私はその手を取る。
しっかりと握られて、私達は研究室を出た。
「ただいま戻りました」
「お疲れ様です」
彼は手に持った袋を掲げて見せる。
「今日は3羽回収してきました。確認して下さい」
「・・・ありがとうございます」
袋を置くと、カラスは私が持っていた資料に目をやる。
「進捗はどうですか?」
「・・・これを見てください」
持っていた資料を彼に見せる。
「鳥と、人のDNA図です」
カラスはしばらくそれを見て、そして目を細めた。
「・・・こんなことが、可能なのですか?」
事件後の鳥達から採取したDNA。
そこには、人を構成するゲノムが組み込まれていた。
「理論上は。通常、DNAには機能していない領域・・・ジャンクと呼ばれる場所があります。その鳥のジャンク領域に、ヒトゲノムが全て組み込まれているんです。何の破綻もなく、正常に機能している。にわかには信じられません」
「・・・解決策はあるのでしょうか?」
「そうですね・・・とりあえずの方針ですが・・・」
なるべく専門用語を使わずに、噛み砕いて説明をしていくと、彼はしきりに感心して見せた。
「・・・本当にあなたは、優秀なのですね。思ったより早くカタがつきそうで良かった」
「まだこれは仮説の域をでません。もっとサンプルを集め、研究を重ねなければ」
「わかりました。ではもう少し持ってくる数を増やしましょう」
頷いたカラスを、私は見つめる。
「・・・どうしました?」
「あなたはなぜ人になれるのですか?」
「なりたいと思ったからですが?この姿の方が、人と接触するのに都合が良いと思いまして」
「思うだけで、人になれるというんですか」
「そういうことになります」
今の所、採取したDNAで、敵もカラスも、同じものを持っていた。
だとすれば、ただ自分の意思一つで、遺伝子のスイッチを切り換え、
姿形を変えることができるということになる。
嫌な考えが頭の中を埋め尽くす。
もし、自分達を蹂躙するカラスを見て、人型の方が強い、有利だと相手が思ったら。
今まで襲ってきた鳥が、全て人になったら。
人より遥かに身体能力が高く、空を飛び、海を泳ぎ、大地を駆けることができる、
全てに適応する事のできる悪魔が、人間に紛れ込んできたとしたら。
ふいに、先日のカラスの姿が頭をよぎり、慌ててそれをかき消す。
考え込んで黙ってしまった私に、柔らかな声が降り注いだ。
「少し出かけませんか?」
「・・・こんな時間にですか?」
外はとっくに夜になり、店もほとんど空いてないだろう。
「ええ、こんな時間だからこそです」
カラスは手を差し出す。
少し躊躇ったが、私はその手を取る。
しっかりと握られて、私達は研究室を出た。
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