Birds

遠野

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政府が用意した訓練場で、2人は対峙した。
私は少し離れた所でビデオを回し、彼らを見守る。
初めて見る、鳥人同士の対決だ。
2人の力は、未知数。
カラスの戦いは、あれから何度か目にしたが、
その戦いぶりはまだ余裕があるようで、
本気を出していないように見える。
対してツバメは、おそらくその速さを生かした戦いをするだろうと予測できる。
なんにせよ、この模擬戦でわかる彼らの力と戦い方を分析することは、
今後作戦を立てていくのに重要だ。
しっかりとデータを取らなければ。

「よろしくお願いします!」
「こちらこそ」
緊張した様子で頭を下げたツバメに対し、
カラスは笑みを浮かべてそれに応えた。
手を上げ、始まりの合図を告げる。
「始め!」

そう言うのと、音が響いたのは同じだった。
首を狙ったツバメの二刀を、カラスは銃身で防いでいる。
全く目で追えなかった。
「なるほど」
ニイ、とカラスは目を細める。
ナイフを弾き返し下がったツバメに、躊躇うことなく銃口を向け、撃った。
眉間を狙った弾丸を、ツバメは首を反らしかわす。
グッと体を低くした後、地面を蹴って、宙を舞い、ジグザグに飛びかく乱しながら、
今度はカラスの背後を取った。
繰り出された二度目の斬撃を、カラスは体を捻りまた防ぐ。
と、素早く後ろに向き直り、今度はツバメを蹴り上げた。
ぐう、とツバメがよろける。
そこにもう一撃、勢いをつけて蹴りを叩き込むと、軽いその体は吹っ飛んだ。
倒れたツバメに起き上がる隙を与えず間合いを詰め、
カラスはその眉間に、銃口を押し付けた。
ツバメを見下ろす、その目。
捕食者の、冷徹な瞳。
本能的な恐怖で、少年の体は震え、喘ぐように呼吸をする。
それでもその目は相手を睨みつけ、両手のナイフはしっかりと握られていた。

「初めてにしては上出来じゃないかな」
フッとカラスは微笑んで、私に視線を寄越す。
僅か数十秒の出来事。
ペンを持った手は役に立たず、私はただ2人の、人間離れした動きを見て、呆然とすることしかできなかった。
教授、とカラスに促され、慌てて終了、と宣言した。
カラスは銃を下ろし、ツバメを助け起こそうと手を差し伸べる。
だがツバメはその手を取らず、弾みをつけて態勢を立て直し、カラスから距離を取って身構えた。
「もう1回お願いします!」
ふむ、とカラスは行き場を無くした手で顎を撫でた後、私にまた視線を寄越す。
「・・・わかりました。もう無理だと判断したら止めます。それで良いですか?」
「ありがとうございます!」
「構いませんよ」
2人とも返事をして、再び構える。
「殺すつもりで来い。このカラスに、膝をつかせてみろ」
「はい!」
叫ぶようにツバメは答え、不敵に笑うカラスの元へ飛び込んでいった。

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