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その後ツバメは何度もカラスに挑み、そして叩き伏せられるのを繰り返した。
そろそろ止めようかと思っていると、一撃を喰らい倒れこんだツバメは、そのまま動かなくなってしまった。
慌てて走り寄って助け起こす。
体中傷だらけだが、その顔は穏やかで、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「実戦なら死んでるぞ」
カラスは呆れたようにため息をつくと、ツバメを抱え、隅まで運び、床に転がした。
結構雑に扱われたように見えたが、ツバメが起きる気配はない。
その横にカラスも腰を下ろし、壁にもたれる。
「お疲れ様でした」
お茶を差し出すと、カラスはお礼を言って一気に飲み干した。
2杯目を注ぐと、それも空にする。
3杯目を半分ほど飲んだ所で止まり、息を吐いた。
「これも、良かったら・・・」
ラップで包まれたおにぎりに、カラスは視線を落とす。
「・・・あなたが?」
「はい」
「・・・いただきます」
カラスは1つ手に取ると、一口食べる。
「・・・うまい」
「良かった」
時間にして30分にも満たない、けれど高密度の連戦だった。
カラスの体に傷は無いが、かなり体力を消耗したらしい。
相当疲れているのかいつもより口数が少なく、表情はどこか無防備だ。
無言でおにぎりを頬張る彼を、新鮮な気持ちで眺める。
そうして休んでいる内に、回復してきたのか、段々といつもの調子が戻ってきた。
「奇妙な感覚です」
カラスは呟いた。
「ツバメが私に、向かってくるなんて」
「・・・そうですね。本来ならありえないことです」
自然界において、巣立ったばかりのツバメはまだまだ軟弱だ。
それが捕食者であるカラスを攻撃することなどめったにない。
返り討ちにあい、食べられるのが関の山だからだ。
だから例え出会ったとしても、逃げるしかない。
絶対的な力の差、その関係が、人になった事によって揺らいでいるのだ。
「はい。餌が自ら食べてくれと突っ込んでくるようなもの。それがこうも変わるとは・・・」
カラスは笑った。
「いつかツバメに負ける日が来るのかもしれないな」
「・・・可能性はなくはないかもしれませんが・・・人になったからといって、元の捕食関係を逆転させるほどの違いが出るのでしょうか」
「その辺りはなんとも。同じ人型と戦ったのはこれが初めてですからね。勝因が経験の差なのか、それとも鳥本来の力関係にあるのか分かりません。それは、ツバメがこれから更に経験を積み、強くなる事でわかるでしょう」
そう言ってカラスは指でツバメの額をコツコツと叩く。
「とりあえず、少年には力の抜き方を教えなければいけないな」
「そうですね。常に全力では、長期戦になった時不利ですし、倒れられたら命に関わります・・・お願いできますか?」
「任せてください」
カラスは頷くと、ツバメを起こす為に、今度は拳で額をゴンと叩いた。
そろそろ止めようかと思っていると、一撃を喰らい倒れこんだツバメは、そのまま動かなくなってしまった。
慌てて走り寄って助け起こす。
体中傷だらけだが、その顔は穏やかで、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「実戦なら死んでるぞ」
カラスは呆れたようにため息をつくと、ツバメを抱え、隅まで運び、床に転がした。
結構雑に扱われたように見えたが、ツバメが起きる気配はない。
その横にカラスも腰を下ろし、壁にもたれる。
「お疲れ様でした」
お茶を差し出すと、カラスはお礼を言って一気に飲み干した。
2杯目を注ぐと、それも空にする。
3杯目を半分ほど飲んだ所で止まり、息を吐いた。
「これも、良かったら・・・」
ラップで包まれたおにぎりに、カラスは視線を落とす。
「・・・あなたが?」
「はい」
「・・・いただきます」
カラスは1つ手に取ると、一口食べる。
「・・・うまい」
「良かった」
時間にして30分にも満たない、けれど高密度の連戦だった。
カラスの体に傷は無いが、かなり体力を消耗したらしい。
相当疲れているのかいつもより口数が少なく、表情はどこか無防備だ。
無言でおにぎりを頬張る彼を、新鮮な気持ちで眺める。
そうして休んでいる内に、回復してきたのか、段々といつもの調子が戻ってきた。
「奇妙な感覚です」
カラスは呟いた。
「ツバメが私に、向かってくるなんて」
「・・・そうですね。本来ならありえないことです」
自然界において、巣立ったばかりのツバメはまだまだ軟弱だ。
それが捕食者であるカラスを攻撃することなどめったにない。
返り討ちにあい、食べられるのが関の山だからだ。
だから例え出会ったとしても、逃げるしかない。
絶対的な力の差、その関係が、人になった事によって揺らいでいるのだ。
「はい。餌が自ら食べてくれと突っ込んでくるようなもの。それがこうも変わるとは・・・」
カラスは笑った。
「いつかツバメに負ける日が来るのかもしれないな」
「・・・可能性はなくはないかもしれませんが・・・人になったからといって、元の捕食関係を逆転させるほどの違いが出るのでしょうか」
「その辺りはなんとも。同じ人型と戦ったのはこれが初めてですからね。勝因が経験の差なのか、それとも鳥本来の力関係にあるのか分かりません。それは、ツバメがこれから更に経験を積み、強くなる事でわかるでしょう」
そう言ってカラスは指でツバメの額をコツコツと叩く。
「とりあえず、少年には力の抜き方を教えなければいけないな」
「そうですね。常に全力では、長期戦になった時不利ですし、倒れられたら命に関わります・・・お願いできますか?」
「任せてください」
カラスは頷くと、ツバメを起こす為に、今度は拳で額をゴンと叩いた。
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