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襲撃してきた鳥達を全て倒し終わった後、
ようやく警察や自衛隊が到着して、現場の事後処理を始めた。
死骸の回収、清掃、市民の誘導。
幾度となく駆り出された彼らにとって、その仕事はもう手馴れたものだった。
自分達が荒らした場所が綺麗になっていくのを、烏は空から見下ろしていた。
ふと視線を感じる。
見ると、1人の中年の警官がこちらを睨みつけていた。
嫌な目だ。
こういった視線には慣れている。だが何も思わないわけではない。
ふいに教授の姿が頭に浮かんだ。
怯えられた事はあったが、彼女からそういう類の感情を向けられたことはない。
そう改めて実感すると、教授の顔が早く見たいと思った。
「烏さん?」
燕が飛んできて、どうかしたかと首を傾げる。
「・・・何でもないよ。戻ろうか」
男から視線を外すと、烏達は教授の元へ帰っていった。
模擬戦で得たデータを元に練った戦法は、上手くいっている。
カラスには勝てないが、ツバメは見事な動きを見せていた。
素早い動きに敵はついていくことができず、知らぬ間に間合いに入られ切られている。
同期の中では一番飛ぶのが上手い、と少年は誇らしげに語った。
恩返しという動機はあったが、彼の仲間はちゃんと実力のあるツバメを推してくれたらしい。
その戦いの合間に、ツバメは何度もカラスに勝負を挑んでいるが、今の所全敗だ。
しかしカラス曰く、戦う毎に力をつけていて、力の調整も上手くなっているらしい。
近いうちに負けるかもしれない、まあ負けるつもりはないが、と笑っていた。
研究も着々と進んでいる。
倒した鳥を回収し、データを取り、実験を重ねていく。
そうして出来上がった試験薬。
そろそろ次の段階へ進む時だ。
私は2人に、鳥を1羽生け捕りにしてきて欲しいと頼んだ。
「・・・生きていれば良いんですか?」
カラスは一瞬こちらを気遣うような視線を投げてから言った。
「はい」
「わかりました」
翌日、任務を終え帰ってきたカラスの手に、1羽の鳥が収まっていた。
目立った外傷はないが散々暴れたのだろう。
力無くぐったりとしてしいて、風切羽を切ったのか、翼は既に動かなかった。
「私が抑えていますので、どうぞ」
差し出された体に針を刺す。
鳥はピクリと反応しただけで、特に抵抗はしなかった。
ケースに入れて、観察をする。
しばらく何の反応も無く、鳥は中で横たわったままだった。
「・・・何も起きませんね」
そうツバメが呟いた直後、鳥はカッと目を見開き、苦しそうに暴れだした。
その体のどこにそんな力が残っていたのか。
耳をつんざく様な叫びを上げ、くちばしから泡を飛ばしながら、
体をケースにぶつけもがく。
割り破らんばかりの勢いに、ケースを押さえつけていると、目が合った。
怒り、憎悪。
人間への悪感情が込められた瞳を、目を逸らさずに見つめ返す。
そうして数分後。
鳥の動きは次第に鈍くなり、倒れ、動かなくなった。
「・・・失敗です」
ケースを開けて、サンプルを採取する。
結果は完成とはほど遠いものだった。
「・・・この鳥はどうしますか」
カラスが言った。
「処分してください・・・すいません」
カラスはわかりました、と言うと、鳥を袋に入れて出て行った。
「先生」
見ると、ツバメは水の入ったコップを差し出していた。
お礼を言って、それを受け取る。
「・・・大丈夫ですか」
「・・・うん。大丈夫。折角持ってきてくれたのに、失敗してごめんなさい」
ツバメは首を横に振る。
「また作り直すから、その時はまた、お願いね」
はい、とツバメは頷く。
それになんとか笑みを返して、私は乾ききった喉に水を一気に流し込んだ。
ようやく警察や自衛隊が到着して、現場の事後処理を始めた。
死骸の回収、清掃、市民の誘導。
幾度となく駆り出された彼らにとって、その仕事はもう手馴れたものだった。
自分達が荒らした場所が綺麗になっていくのを、烏は空から見下ろしていた。
ふと視線を感じる。
見ると、1人の中年の警官がこちらを睨みつけていた。
嫌な目だ。
こういった視線には慣れている。だが何も思わないわけではない。
ふいに教授の姿が頭に浮かんだ。
怯えられた事はあったが、彼女からそういう類の感情を向けられたことはない。
そう改めて実感すると、教授の顔が早く見たいと思った。
「烏さん?」
燕が飛んできて、どうかしたかと首を傾げる。
「・・・何でもないよ。戻ろうか」
男から視線を外すと、烏達は教授の元へ帰っていった。
模擬戦で得たデータを元に練った戦法は、上手くいっている。
カラスには勝てないが、ツバメは見事な動きを見せていた。
素早い動きに敵はついていくことができず、知らぬ間に間合いに入られ切られている。
同期の中では一番飛ぶのが上手い、と少年は誇らしげに語った。
恩返しという動機はあったが、彼の仲間はちゃんと実力のあるツバメを推してくれたらしい。
その戦いの合間に、ツバメは何度もカラスに勝負を挑んでいるが、今の所全敗だ。
しかしカラス曰く、戦う毎に力をつけていて、力の調整も上手くなっているらしい。
近いうちに負けるかもしれない、まあ負けるつもりはないが、と笑っていた。
研究も着々と進んでいる。
倒した鳥を回収し、データを取り、実験を重ねていく。
そうして出来上がった試験薬。
そろそろ次の段階へ進む時だ。
私は2人に、鳥を1羽生け捕りにしてきて欲しいと頼んだ。
「・・・生きていれば良いんですか?」
カラスは一瞬こちらを気遣うような視線を投げてから言った。
「はい」
「わかりました」
翌日、任務を終え帰ってきたカラスの手に、1羽の鳥が収まっていた。
目立った外傷はないが散々暴れたのだろう。
力無くぐったりとしてしいて、風切羽を切ったのか、翼は既に動かなかった。
「私が抑えていますので、どうぞ」
差し出された体に針を刺す。
鳥はピクリと反応しただけで、特に抵抗はしなかった。
ケースに入れて、観察をする。
しばらく何の反応も無く、鳥は中で横たわったままだった。
「・・・何も起きませんね」
そうツバメが呟いた直後、鳥はカッと目を見開き、苦しそうに暴れだした。
その体のどこにそんな力が残っていたのか。
耳をつんざく様な叫びを上げ、くちばしから泡を飛ばしながら、
体をケースにぶつけもがく。
割り破らんばかりの勢いに、ケースを押さえつけていると、目が合った。
怒り、憎悪。
人間への悪感情が込められた瞳を、目を逸らさずに見つめ返す。
そうして数分後。
鳥の動きは次第に鈍くなり、倒れ、動かなくなった。
「・・・失敗です」
ケースを開けて、サンプルを採取する。
結果は完成とはほど遠いものだった。
「・・・この鳥はどうしますか」
カラスが言った。
「処分してください・・・すいません」
カラスはわかりました、と言うと、鳥を袋に入れて出て行った。
「先生」
見ると、ツバメは水の入ったコップを差し出していた。
お礼を言って、それを受け取る。
「・・・大丈夫ですか」
「・・・うん。大丈夫。折角持ってきてくれたのに、失敗してごめんなさい」
ツバメは首を横に振る。
「また作り直すから、その時はまた、お願いね」
はい、とツバメは頷く。
それになんとか笑みを返して、私は乾ききった喉に水を一気に流し込んだ。
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