Birds

遠野

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迎撃と研究。それらの任務と並行して、
他の鳥達にも協力を仰ぎ交渉を試みたが、成果は芳しくなかった。
ほとんどが傍観、もしくは友好的ではあったが、
非力な為に報復を恐れ、人間に力を貸すことはできなかった。
「なかなか上手くいきませんね」
バツが増えていくばかりのリストを見て、溜息をついた。
「まあ、想定内ではあります」
カラスが言う。
確かに予想していたことだったが、これだけ断られ続けると辛い。
だが、彼らにしてみれば、この騒ぎは対岸の火事。
危険を冒してまで人間に力を貸す理由も義理もない。
傍観してやり過ごすのが一番安全で、賢い方法だ。
こうして考えると、改めて、2人の存在がどれだけありがたいかわかる。
「力を貸して頂いて・・・本当にありがとうございます」
お礼を言うと、2人は微笑んだ。
「私達は、自分の利益の為にやっているだけです。気にしないでください」
「そうです!それに僕達も、敵をかわす手段が無ければ協力はできなかったと思います」
でも・・・。ツバメは俯く。
「今の所僕達だけでなんとかなっていますが、いつまでもつか・・・」
沈黙が流れる。

確かに、敵の数は戦いを重ねる毎に増え続け、襲い方も変化してきた。
こちらが現場に到着するのを見計らったかのように援軍が押し寄せ、
それを相手にしている間に、残りの鳥が人間を狙うというように、
明らかに2人が来る事を見越したものになっていた。
多勢に無勢。
人に援軍を頼もうにも、彼らが街中での襲撃に対応するのは難しい。
いくら2人が強いといっても、このまま数で押されれば、いつか限界が来るだろう。

今私にできることは、なんだろうか。
俯いたままのツバメと、考えに耽っているカラスを見て考える。
研究や、仲間の勧誘以外に、できること。
浮かない顔をした2人に、してあげられること。

「・・・ちょっと、出かけませんか?」
明るい声を心がけて、提案をする。
これぐらいしか思いつかない。
2人がやりたいこと、行きたい所に連れて行って、
少しの間だけでも戦いの事を忘れ楽しんで、
英気を養ってもらう事くらいしか。

私の考えを、カラスは理解してくれたらしい。
口の端を上げると、立ち上がった。
「いいですね。どこに行きますか?」
「どこでも。行きたい所はありますか?」
話を進める私達に、ツバメは戸惑っている。
「い、いいんですか?こんな時に?」
「こんな時だからこそ、だよ。今の我々に必要なのは、気分転換だ」
「そう。あなた達へのお礼も兼ねて、ね。研究も手伝ってくれて、本当に助かっています」
そう。
本来なら私1人でやらなければならない事を、2人は嫌な顔一つせず助けてくれる。
検体の確保や実験の補助、そして失敗した際の、鳥の処分。
体力的にも精神的にも、側で支えてくれる彼らの存在に、
どれだけ救われていることか。
そう伝えると、ツバメは納得したようで、硬くなっていた表情が緩んだ。
私はもう一度、行きたい所はあるかと聞く。
「沢山本を読んでみたいです。もっと色んな事を、僕は知りたい」
「わかった。一番大きな本屋に連れて行ってあげる」
「じゃあ私は先週駅の地下街にリニューアルオープンしたイタリアンで」
「すごく具体的ですね」
「ええ。オススメです。味は保障しますよ」
カラスはいつもの調子で微笑んだ。

沈んだ空気が晴れ行き先も決まり、私達はまず書店へ向かう事にした。
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