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気分転換もできて、和やかに話しながら大学へ向かって歩いていると、
ふいにツバメの顔が固まった。
立ち止まりはしないが、落ち着き無く周りに視線をさまよわせ、
次第に顔が青ざめていく。
「大丈夫?ちょっと休もうか?」
肩を揺すると、ツバメは聞こえるギリギリの大きさで、
「・・・見られています」
と囁いた。
思わず止まりそうになると、カラスは私とツバメの肩を抱いた。
「そのまま歩いて」
平静を装ってなんとか歩き続ける。
ずっと前を見ているので、ツバメの恐怖の正体はわからない。
けれど悪いままのツバメの顔色が、私達を害する存在が確かにあるという事を示していた。
自然界において捕食される側故の、気配の敏感さなのだろうか。
人通りの少ない場所に出た所で、
カラスは表情を崩さぬまま聞いた。
「まだ来ているか」
「・・・はい」
「数は?」
「1人、だと思います」
「・・・人なのか?」
「・・・はい、背が高くて、目の鋭い、女の、人です」
私とカラスは視線を交わす。
ただの人間に、ツバメがこんなに怯えるだろうか。
嫌な考えが頭を過ぎる。
カラスはポーカーフェイスを崩し、険しい顔つきでツバメに言う。
「あの角を曲がったら、教授を連れて走れ」
頼んだぞ。
肩をグッと掴まれ任務を与えられたツバメの瞳に、じわじわと力が戻ってきて、
「はい」
そう返事をして私の手をギュッと握った。
曲がり角まで後少し。
一歩、二歩、三歩。
そして角を曲がった所で、
カラスはツバメの背を押した。
瞬間ツバメは駆け出し、私はそれに引っ張られるようにしてその場を離れた。
走り去っていく教授達を見て女は舌打ちし、すぐに追いかけようとするが、
その進路を塞ぐように烏が立つ。
「こんにちは」
「・・・どきなさいよ」
鋭い視線で睨まれ、鳥肌が立つ。
本能が、目の前の相手が格上だと告げている。
それでも烏は笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。
「用があるなら、声を掛けてくれれば良かったのに」
「私が用があるのは先生よ。あんたじゃないわ」
そう言われて思い浮かぶのは、1人しかいない。
「先生?」
烏がとぼけてみせると、女はまた舌打ちをする。
「さっき走っていったじゃない。いつも一緒にいるの、知ってるのよ」
「人違いでは?私はこの町には今日来たばかりですし」
「・・・ああ、そう」
女の雰囲気が変わった。
どうやら烏が時間稼ぎをしている事に気付いたらしい。
目を細め、ニヤリと口は弧を描く。
「間が悪かったわね。今この辺りは物騒なのよ。知らないの?」
「そうみたいですね。なんでも、鳥が人を襲うとか」
「ええ。恐ろしいわよね」
歌うように女は答える。
「・・・とても信じられないな」
女の目と唇が吊り上った。
「じゃあ、見せてあげるわ!」
女の手足が羽毛に覆われる。
そして翼となった腕を広げ飛び上がり上昇、
烏めがけて急降下し、鋭い鉤爪を持つ足を振り下ろす。
烏は身構え、来るであろう一撃に備えた。
ふいにツバメの顔が固まった。
立ち止まりはしないが、落ち着き無く周りに視線をさまよわせ、
次第に顔が青ざめていく。
「大丈夫?ちょっと休もうか?」
肩を揺すると、ツバメは聞こえるギリギリの大きさで、
「・・・見られています」
と囁いた。
思わず止まりそうになると、カラスは私とツバメの肩を抱いた。
「そのまま歩いて」
平静を装ってなんとか歩き続ける。
ずっと前を見ているので、ツバメの恐怖の正体はわからない。
けれど悪いままのツバメの顔色が、私達を害する存在が確かにあるという事を示していた。
自然界において捕食される側故の、気配の敏感さなのだろうか。
人通りの少ない場所に出た所で、
カラスは表情を崩さぬまま聞いた。
「まだ来ているか」
「・・・はい」
「数は?」
「1人、だと思います」
「・・・人なのか?」
「・・・はい、背が高くて、目の鋭い、女の、人です」
私とカラスは視線を交わす。
ただの人間に、ツバメがこんなに怯えるだろうか。
嫌な考えが頭を過ぎる。
カラスはポーカーフェイスを崩し、険しい顔つきでツバメに言う。
「あの角を曲がったら、教授を連れて走れ」
頼んだぞ。
肩をグッと掴まれ任務を与えられたツバメの瞳に、じわじわと力が戻ってきて、
「はい」
そう返事をして私の手をギュッと握った。
曲がり角まで後少し。
一歩、二歩、三歩。
そして角を曲がった所で、
カラスはツバメの背を押した。
瞬間ツバメは駆け出し、私はそれに引っ張られるようにしてその場を離れた。
走り去っていく教授達を見て女は舌打ちし、すぐに追いかけようとするが、
その進路を塞ぐように烏が立つ。
「こんにちは」
「・・・どきなさいよ」
鋭い視線で睨まれ、鳥肌が立つ。
本能が、目の前の相手が格上だと告げている。
それでも烏は笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。
「用があるなら、声を掛けてくれれば良かったのに」
「私が用があるのは先生よ。あんたじゃないわ」
そう言われて思い浮かぶのは、1人しかいない。
「先生?」
烏がとぼけてみせると、女はまた舌打ちをする。
「さっき走っていったじゃない。いつも一緒にいるの、知ってるのよ」
「人違いでは?私はこの町には今日来たばかりですし」
「・・・ああ、そう」
女の雰囲気が変わった。
どうやら烏が時間稼ぎをしている事に気付いたらしい。
目を細め、ニヤリと口は弧を描く。
「間が悪かったわね。今この辺りは物騒なのよ。知らないの?」
「そうみたいですね。なんでも、鳥が人を襲うとか」
「ええ。恐ろしいわよね」
歌うように女は答える。
「・・・とても信じられないな」
女の目と唇が吊り上った。
「じゃあ、見せてあげるわ!」
女の手足が羽毛に覆われる。
そして翼となった腕を広げ飛び上がり上昇、
烏めがけて急降下し、鋭い鉤爪を持つ足を振り下ろす。
烏は身構え、来るであろう一撃に備えた。
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