Birds

遠野

文字の大きさ
28 / 31

27

しおりを挟む
研究室は気まずい空気に包まれていた。

タカはカラスを睨みつけ、カラスはそれを無視してお茶を飲み、ツバメはそんな2人を見てオロオロとし、ハトはその様子をマイペースに観察している。

話は少し遡る。
研究室に戻り、私達はタカとハトの事情を詳しく聞いた。
2人は郊外で鷹匠を営む老人に飼われており、タカはそこで育てられ、今は飼い主と共に鷹狩りとして働き、
ハトは怪我をしていた所を助けられ、そのまま居ついているという。

話を聞いて、2人の協力をツバメは素直に喜んだが、カラスは納得はしたものの、あまり乗り気ではなかった。
その態度にタカが噛み付き、それにカラスが皮肉交じりに返すものだから、彼女の怒りは収まらない。
それをなんとかなだめて、今に至る。
2人ともそういう態度を取るのはお互いだけで、どうやら根本的に合わないらしかった。

「お2人に力を貸して頂けて、心強いです!」
ツバメが大きな声で言う。
場の空気を和らげようと、なんとか捻り出した言葉なのだろう。
チラ、とツバメがこちらを伺ったので微笑むと、ホッと顔を緩ませた。
タカはそれに気分を良くしたのかニヤ、と笑う。
「任せなさい。どんな敵もぶっ潰してやるわ」
そこの優男よりもね。

振り出しに、いやそれ以上に空気が悪くなった気がする。
「・・・タカ子さん、言い過ぎ」
流石にハトが口を挟んだ。
「何よ!こいつが悪いんでしょ!」
指をさされ、煽られたカラスはニッコリと笑った。
これは良くない笑顔だ。
「それは心強い。猛禽類がこちらについてくれるとは思っていなかったからね。君達の事は歓迎するよ」
拍子抜けしたタカへの笑みを崩さずにカラスは続ける。
「ただ、君達の行動に関して、いくつか指摘しておきたいことがあるんだが、良いかな?」
「・・・どうぞ」
ハトが頷く。
そうかい、では。
カラスが2人を見据える。
「まずタカ、君だ。君は自分の身分を明かさず私達を尾行し、更にその後、力ずくで事を進めようとしたね。こちらが警戒するのは当然だ。鳥の姿になったのも良くない。あのような公共の、人目に晒される場所で変身すれば正体がばれ、今後の活動に支障が出る。いずれも思慮に欠ける行動だ。そしてハト。君は教授の手を掴んでこう言ったそうじゃないか。捕まえた、と。この言動で、君が味方で我々に力を貸す存在だと、どれだけの人間が思う?君も身分を明かし、キチンと説明をするべきだった。・・・わかるかい?君達には、その場での状況把握と、想像力、危機感が全く足りていない。そんな2人が加わろうとしているんだ。私が気乗りしない理由もわかっただろう?」
つらつらつらと、流れるような指摘が、表情を変えないカラスの口から出てくる。
「・・・怒ってる?」
「空気を読む、というのも追加しておこうか」
ハトが言うと、カラスは眉間に皺を寄せ、はっきりと不快さを表した。
「それで?納得してもらえたかな?仲間になる以上、さっき言った事は最低限改善して欲しいんだが」
わかった、とハトはあっさり頷いたが、もう一方はそう簡単にはいかないらしい。
「そんなものより、どれだけ敵を倒したかが大事でしょう!?」
タカの言葉を、カラスは鼻で笑った。
「確かにそれも一理ある。・・・だが君にそれができるかな?さっきはああ言ったが、所詮飼い慣らされた温室育ち。出来る事など知れている」
「その温室育ちを倒せなかったのはどこのどいつよ!?」
「その私を取り逃がしたのは誰だろうな?」

2人睨み合う中、襲撃の連絡が入った。
丁度良いとばかりにタカは目をギラつかせ、
「見てなさい!瞬殺してきてやるわ!」
そう宣言して勢い良く翼を出して窓から飛び立とうとしたので、私は慌てて顔を隠す為のマスクを渡す。
お礼を言って素早く取り付けると、タカは敵が出現した方角へ飛び出していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...