【R18】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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8.ニセ嫁、旦那様(ニセ)の為に、腕を振るって愛妻弁当を作ります。

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 翌日。昨日の様に失敗しない為に、遠慮なく一矢をゆり起こした。ニセ嫁修行に向かおうとする私を一矢が引き留めてくる。もう少し一緒に居てくれないか、と。

「ゴメン、無理よ。中松に叱られちゃう」

 六時からグリーンバンブーの開店時間前まで、私はニセ嫁修行を行う事になっているのだ。
 一分でも遅れようものなら、鬼松にどやされる。
 現在午前五時十五分過ぎ。まだ大丈夫だが、着替えたりメイクしたりする時間があるから、そろそろちゃんと準備せねば。

「どうしても行くのか」

 しかし一矢に抱きしめられていて、どうしようもできない。嬉しい反面、困っている。

「パーティーまでの一か月は、朝からみっちり修行なんだから、我儘言わずに我慢してよ。これが終わったら、もう少し時間取れるから」

「・・・・それまでの辛抱、という訳だな」

「そうね」

「・・・・仕方ない。手を打とう」

 しぶしぶ一矢がそう言って名残惜しそうに離れたのが、すぐにもう一度抱きしめられた。「やはり、行くな」

「ダメよ、行かなきゃ。中松に怒られるから」

「・・・・仕方ない」

 そうは言うが、なかなか離してくれない。三回くらい同じことを繰り返してようやく解放してもらい、ダッシュで隣の部屋に駆け込み、中松が既に用意してくれているドレスを身にまとい、お手洗いを済ませ、化粧をして髪を整え、修行部屋に向かった。


 中松は既に到着しており、私を待っていた。五分前到着だから、文句は無いだろう。
 それにしても、寸分の隙も無い男。オーラが半端ない。本気で怖いわ、この鬼。


「あのっ」

「伊織様、朝から開口一発で説教はしたくありませんが、先ずは挨拶です」

「おはようございます」

 深々とお辞儀をして、中松を睨んだ。

「もう少し上品に微笑むことはできませんか?」

 目の笑っていない笑顔で言われた。


「そんな事より、昨日のあれは何?」

「あれ、とは何でございますか」

 しれっとした顔で言われた。

「とぼけないで! 何よ、貸しひとつだからな、って!」


 今日、朝一番に聞いてやろうと思っていたのよ!
 羊の皮なんか被っちゃってさ! 鬼の癖に!!
 化けの皮、剥いでやるっ。

「何の事でしょうか」

「昨日お風呂場で水着を着る、着ないで一矢と揉めていた時、私に囁いて出て行ったでしょう。その時の事よ」

「覚えがございません」

 再びしれっと言われた。
 ちぃくしょぉおおおぉぉ――――! とぼける気ねっ!!
 そうは問屋が卸さないんだからっ!
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