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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。
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しおりを挟む「わたくしは、何度もお断りいたしました。誰に言われなくても、一矢と釣り合わない事は、自身が重々承知しておりますもの。しかし彼は、どうしてもわたくしが良いとおっしゃって下さり、こんなわたくしを選んで下さいましたので、彼のプロポーズを謹んでお受けいたしました。感謝しております」
にっこり笑って言ってやったら、相手の顔がみるみる般若のようになった。
まあ、怖い。中松とやり合っている時の私のようだ。
「花蓮様も、一矢様を幼い頃から慕っていたとおっしゃいましたが、それはわたくしも同じで御座います。彼を支え愛したいと思っている気持ちだけは、誰にも負けないつもりでおります。花蓮様は花蓮様の知らない一矢様を存じていらっしゃるように、わたくしはわたくしにしか知らない一矢様を存じております。それで、良いではございませんか。花蓮様が知る一矢様は、どうか花蓮様の思い出として、大切になさって下さい」
では、と部屋を出ようとした私を、低い、ひくーい声が制した。
「・・・・初めて、だったのに」
「えっ?」
「一矢様は」一旦深呼吸した花蓮様が、マシンガンの如く喋り始めた。「幼い頃から花蓮を可愛がってくださっていて、花蓮の初めては全て一矢様に捧げ、将来を誓い合いましたのに、こんな裏切りはございませんわ! 花蓮はずっと、一矢様が迎えに来て下さる日を夢見て、ずっとずっとお慕いし、お待ちしておりましたのに! こんなどこの馬の骨かもわからないクズ女に一矢様を盗られてしまうなんて、絶対に絶対に赦せませんわ――っ!!」
唖然とした。
ちょっと・・・・いくら何でも酷くない?
クズ呼ばわりされる筋合い、アンタにござーませんからぁああああ――――っ!
一矢も・・・・こんな面倒な令嬢に手ぇ出すなら、きちんと後始末くらいしておきなさいよね!
遊ぶなら、もっと上手に遊びなさいよ!
これだから一矢は! 麗しく美しくてカッコイイから、女がうじゃうじゃ寄ってくるのよ!
ニセ嫁の苦労も解って欲しいわ、全く!!
それにしても、あまりの勝手ぶりに、怒りを通り越して笑えてきた。彼女は要注意人物ね。これから、気を付けなきゃ。刺されたら洒落にならない。
「文句があるなら」私は真顔で、更に笑顔で伝えた。「直接、貴女が一矢様にお伝え下さい。よろしくお願いいたします。では、ごきげんよう」
まだ喚き散らす花蓮様を置き去りにして、私は部屋を出た。
「――待ちなさいよっ!! まだ話は終わっていませんわ!」
部屋を出て戻ろうと歩いている私の髪を、思いきり掴まれて渾身の力で引っ張られた。ああっ、折角中松が綺麗にセットしてくれた髪がぁっ!! なんて悠長な事を言っている場合ではない!!
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