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10.ニセ嫁、披露パーティーで何やらひと悶着ありそうな予感がいたします。
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しおりを挟む「伊織さん、でしたわよね。丁度良かったわ。お祝いを渡したいのだけど、一矢に渡しても受け取らないと思うから、貴女にお渡しするわ。高額なものだから、部屋に置いてあるの。一緒に来て下さらない?」
「あ、はい。承知致しました。ここを離れるので、中松に一言声をかけて来ますのでお待ち頂けますか?」
うええー、行きたくないよおおー。でも嫌って言えずに承諾した。
「すぐ済むからいいわよ。いちいちあの嫌味男にいわなくても。それに私、待たされるのは嫌い」
「は、はい・・・・」
杏香さんでも中松は嫌味男認定なのね。その部分については話が合いそうだ。
「花蓮様、それでは失礼致します」
私はお辞儀をしてその場を離れた。杏香さんに連れられ、一般のものとは違うエレベーターに乗り込んだ。
高速エレベーターは、あっという間に別世界へと私達を運んでくれた。
「今日はこのホテルに部屋を取ったのよ。可愛い義弟(おとうと)の婚約パーティーだし」
一矢を可愛いなんて思った事、一度だって無い癖に!
意地悪の限りを尽くしている事、私は知っているんだからね!!
「わざわざありがとうございます」
こちらも丁寧にお礼を伝えておいた。嫌味に嫌味を返す必要なんか無い。それにそんな事をして杏香さんの怒りを買えば、矛先は全て一矢に向いてくる。それは避けなきゃ。
高速エレベーターを降りた先は、フロアの絨毯が一際重厚なものに変わった。恐らくVIP顧客しか泊まらないような、ロイヤルスウィートの部屋がある階なのだろう。私は生まれてこの方、こんな場所に立ち入った事は無い。空気が違う。土足で歩くのが勿体ないくらい、高級な絨毯なのだろう。
杏香さんはカードキーを取り出し、今日宿泊するであろう部屋の扉を開けた。入るように促されたので、失礼します、と伝えて中に入った。
中は入り口から広く、贅を尽くした極上ルームだった。かなりの広さを誇るデラックススイート。お金持ちしか宿泊できないそこは、上品な調度品が施されていた。入口から奥に見えるベッドは白く、さぞかし心地よく眠れるのだろう。一矢の本家みたいな部屋だと思った。全面ガラス張りで夜景は独り占め。空調も快適で言う事無しだ。一度でいいから家族全員でこんな部屋に泊まってみたい。みんな喜びそうだ。まあ、絶対にできないと思うけど。家族多いから、
お金持ちは、こういう贅沢空間が当たり前なのだろう。庶民が迂闊に泊まれるような部屋ではない。相当な記念日でさえ、こんな部屋に軽々しくは泊まったりできない。一人当たりの宿泊費用は、グリーンバンブーの基本八百円の定食が何回食べれるのだろうとか、貧乏ったらしい考えではすぐに算出できなかった。百食・・・・いや、二百食以上はゆうに食べれるだろう。所詮その程度しか概算できない。
「一矢をどうやってたらしこんだの?」
「はい?」
鍵をかけた途端、杏香さんは豹変した。口調も柔らかいものから、すごくキツイものに変わった。
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