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11.ニセ嫁の大ピンチに駆けつける執事が、実は本物の鬼だった件。

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「中松、私にも忠誠を誓って。【この程度】の事なんかに、私は負けない! 強くなるわ。どんな目に遭わされても、平気よ。貴方が付いているんですもの。きっと一矢も同じ気持ちだと思う」

 私は右手の甲を差し出した。私の気持ちを汲み取ってくれた中松は、うやうやしく跪き、手の甲にキスを落としてくれた。「この中松、一矢様と伊織様を生涯、命を懸けてお守りする事を誓います」

 これでいい。私と中松は主従関係よ。それ以上であってはいけない。

「こんな格好じゃ、パーティーに出られないわ。予備の着替え、あるわよね?」

「当然です」

 流石神執事。出来る男は用意もいい。

「美緒も呼んで、支度するわよ。貧民の私を、貴女の手で極上のシンデレラに変身させてちょうだい。シンデレラガールの底力、見せてやるんだから!」



 中松は、シンデレラ(私)に魔法をかけてくれる、魔法使いのおばあさん(中身は鬼執事だけど)。



 まだ震えの残る手を、自分の掌でぐっと包んで抑え込んだ。本当は怖いけど、負けるもんか!
 ここまで用意しておいて、今更破棄なんかできない。そんな事をしたら、一生後悔する。
 実らない初恋なら、せめて綺麗に終わらせたい。大好きな、一矢の為に。


「さあ、やりましょう!」


 強く、笑って見せた。

「それでこそ、気高き令嬢でございます。伊織様に、俺から教える事はもう何もございません。立派に成長なさいました」

 中松が笑った。でも、今までとは違う。目の奥が笑っていなかった感情を見せない顔じゃなくて、本当に、心からの彼の笑顔。


 よよよ、と言って泣きはしなかったが、あの鬼松が認めてくれた。それが、こんなに嬉しい事だなんて、思いもしなかった。
 辛い日々。散々鬼にしごかれた苦しい毎日が、今日、ようやく実を結ぶの。
 一矢の為だけに頑張ってきた。だから、自分で幕を下ろすなんて事、しなくて良かった。


 できる事は全部やろう。後悔しないように。
 好きな男の為なら、女はなんだってできるって所、見せつけてやるんだから!!


 ニセでも、嫁ですからねっ。
 愛する旦那様(ニセだけど)の為に、頑張るしかない!
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