【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ~笑顔でお断りしましたが、何か?~

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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6.ピンチはチャンスと言うが、それは絶対に嘘だ(笑顔で乗り切れない!)

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 相変わらず顔色ひとつ変えず、不気味な笑顔を湛えたまま神原が続ける。

「金銭を要求するなど、無粋な事は致しませんよ。杉浦さん、私はプライベートでパートナーを失ってしまったのですよ。これから結婚して神原を大きくしなくてはいけない大切な時期にこの様な痛手、大変困っております」

「それで、弊社にどうしろと?」

「補填頂けませんか? 杉浦さんを私のパートナーにしたいのです。それで手を打ちましょう」

「お言葉ですが」にっこり笑って言ってやった。「それはできない相談でございます。私は福士成彰――現フクシの代表取締役の彼と、婚約関係にあります。一方的な破棄はできません」

 ニセ契約でもしておいて良かった。こんな時本当の事だと、饒舌に誤魔化せる。彼とそんな約束をしていなければ、この場で狼狽えて嘘を見破られていただろう。しかし補填扱い・・・・。つくづく腹の立つ男だ。やっぱり嫌味眼鏡ね。

「貴方が福士と婚約している事は、承知しております。ですが私も困っております。更に、私の申し出を断れば、フクシはたちまち窮地に陥るでしょう。融資、下りないと思いますよ?」


 ・・・・どうして融資の事を、神原社長が知っているのだろう。私の顔色から読み取った神原社長は、更に続けた。


「浅草は狭い。まあ、私の庭みたいなものですからね。高丸さんとの共同開発の事も耳にしておりますよ。止めておけばいいのに」

「わが社の事については、神原様には関係ございません」

「そうも言っていられませんよ? 高丸さんは金策に走る際、大切な金型を売りに出される予定があったようです。というのも、神原が買い取るつもりだったのですがね。急にキャンセルされましたから、聞けばフクシさんと共同開発するのに使うなんて言い出されましたから、融資が入らないとなれば、これ、困るでしょう?」

「何か・・・・妨害を?」

「滅相もありません。しかし――」神原社長は、挑戦的な笑みを浮かべた。「私は欲しいものを手に入れる時、手段は選びません。一年前からスギウラと共に貴女も欲しかったし、高丸の金型も手に入れたい」

「弊社の融資先担当の方に、何かしたのは神原社長ですね?」

「なんのことでしょう」

 あくまでもシラを切るつもりだ。しかし、合点がいった。あれだけ熱意を持っていた行員の春日部さんが、手のひらを返したように冷たくなった理由――おそらく何かしらの圧力をかけたのだろう。フクシの悪いイメージを吹き込まれたのか、それとも計画書事態に信ぴょう性も無く、失敗して赤字だけが残り、フクシを処分しても回収は難しい――その位の事を、春日部さんに吹き込んだのかもしれない。もしかしたら、想像も及ばない別の事かもしれない。

 この男なら、言う通り手段を択ばないだろう。何でもやってのけそうだ。


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