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8.専務に呼び出され、社長と神戸に出張へ(緊張します)

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 あれから倉庫業の作業員の方々も総動員、更にどこからか呼びつけた取引先やらなにやら、顔の広い浅岡専務の知り合いが続々と駆け付け、何とか新長田の駅前にあるシューズプラザという会場に商品を搬入まで出来た。午後五時きっかり、終えることが出来た。
 搬入の手伝いもやったので、ほおーっと一息、大きなため息を吐いた。

「やぁー、福士社長、杉浦さん、本当に助かったよ、ありがとう!!」

 浅岡専務に頭を下げられた。

「いえいえ。困った時はお互い様ですよ。お役に立てて何よりです」

「本当にありがとう。新商品の事、高丸さんと手を組んだって聞いたよ。凄くいい商品できるんじゃないのぉー? 楽しみにしてるよ。お礼に千足追加で受注するから!」

 千足の追加受注なんて、最高!
 神戸まで来て、頑張った甲斐があった! 良かった!!
 今すぐ飛び跳ねて喜びたい気持ちになったが、そんな醜態を晒す訳にはいかない。いつも通り冷静に言った。「有難うございます。よろしくお願いいたします」

「あのまま不具合出た状態で売ったらさぁー、タダ同然で叩き売れば、売れない事も無いけれど、折角の靴が可哀想でしょ。きっと各家の靴箱の肥やしになって、もう履いて貰えずに捨てられちゃうと思うんだよねー。僕が折角作った靴だから、やっぱり修理してみんなに履いて欲しいって思ったんだ」

 浅岡専務のこういう所、好きだな。私もそう思う。

「それに二人が特に綺麗に補修してくれたから、特売にしたって、もっと値段付けて高く売れそうだし」

 商売人は、ちゃっかりしている。

「このシューズイベントもさぁー、昔と違って正直儲けは無いんだけど、やっぱり靴業界って下火だからさ、何とか盛り上げたいんだよね。明日、完売目指して頑張るよ」

「はい。頑張って下さい」

 彼の言葉に握手で応えた。

「今から打ち上げ行くけど、来ない?」

「折角ですが専務、二人きりで神戸デートして関東に戻ります」

 専務の言葉に、すかさず福士社長が切り込んだ。うっ・・・・。二人でデート・・・・。嬉しいと思うが、顔に出さないように気を付けた。


「そうか。それがいいね。デート行っておいで。あ、これ、お礼」

 専務が『お車代』と書かれた白い封筒を差し出してきた。交通費やらが入っているのだろう。

「いやそんな、結構です。何時も良くして頂いているのに」

「デートの足しにしてよ。本当に助かったから。明日、修理してくれた靴で稼ぐから!」

 福士社長は断ったが、専務に無理やり押し付けられた。
 この際だから有難く受け取って専務と別れ、駅前でタクシーに乗り込み、ハーバーランドへと告げ、二人で大きな安堵のため息をついた。
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