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11.打ち上げの後に・・・・!(二人のオトナ時間)※
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しおりを挟む「あの・・・・さっき、私の事がずっと好きだったって言ってくれたでしょう? 何時から好きになってくれたのかな、って思ったの。教えてくれる?」
「ん。丁度その話も、何かの機会があればしたいなーって思ってた」
「じゃあ、教えて」
「教えて欲しい?」
「うん。欲しい」
「お・し・え・な・い」
成彰さんが悪い男の顔で囁いた。
「はあっ? 今、何かの機会があればしたいなーって思ってた、って言いましたが」
思わず何時もの秘書の口調&ブリザード目線を送り付けてしまった。
「うーん、たまらんっ。やっぱ、その顔好き」
ぎゅっと抱きしめられた。「今のは冗談だよ。聞いてくれ。もう紗那が気になってから、十年くらいになるかなぁ。一回、フクシがスニーカーのゴム接着で強烈な不良出した事あっただろ。スギウラに修理手伝って貰ったあん時。解る?」
私の記憶が正しければ、十年程前、フクシとスギウラはそこまで取引が無く、まだフクシがスニーカーの特許を取る前、商品開発で模索していた時の事だ。
海外で初めて自社生産した靴が納品された時、ゴム接着部分の溶接が悪く、スニーカーに接着剤の色が染みだして、ゴムが黄色くなってしまった事があったのだ。彼は恐らく、その時の事を言っている。
「その時、取引も殆ど無かったスギウラが、フクシを助けてくれただろ。まだ高校生だった紗那も、不良の汚れの除去を手伝ってくれた。あの時だ」
「うん、それ解るけど、その時社長、いた?」
「いたよ。大学二回生だった。フクシに入社はしてなかったし、学生だったから遊んでたけどな。フクシの危機だっつって、親父に呼び出されて、嫌々修理の手伝いをさせられた。俺、実は当時、靴が好きじゃなくてさ。家庭を疎かにする、典型的な会社人間だった親父にも反発していたし、どうせフクシに就職させられるのは解っていたから、せめて大学通う間くらいは、と遊んでいて、靴の勉強なんか何ひとつしていなかったんだ。だから知識が全然無くて。修理の時、作業も遅いし、クソの役に立たなかった」
そんなことあったんだ・・・・。知らなかった。
「とにかく不良の足数も多かったし、フクシだけじゃやりきれなくて、ゴム専門で、どんな修理もやってくれるって言うスギウラに頼み込んで、修理を手伝って貰ったんだ。あの時、職人に混じって紗那が一生懸命修理してくれたから、フクシは生き残れた。フクシもまだここまで大きくなかったし、小さな会社だから、あの在庫が全部不良になってしまっていたら、多分、商品が売れないし信用も落としてしまったと思うんだ。そうなったら資金繰りがショートして、フクシは潰れていたと思う」
「そんな危機がフクシにもあったんだ」
「ああ。でも紗那が、俺に教えてくれたんだ。黄色に染まったスニーカーゴムを、真っ白に修理する方法を――」
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