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第十八話 令嬢達とのお茶会後編
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当然のようにジェイコブ様は私の隣に腰を掛けて座った。
この短い期間でも、彼の人となりは大体分かったつもりだ。
そう、彼はきちんと婚約者たる私を立てる。
私の隣に座ることをためらわなかった彼の態度を、密かに安堵した自分もいる。
座るのが当たり前。
だけど、確実に座ってくれるかどうかの自信はなかったから。
私も大人しく彼の隣に座る。
ほんの一瞬、そう、本当に一瞬だと思う。
ジェシカ嬢の目が大きく開いた。そして微笑んだ。
その、微笑みは彼女にしては失敗だろう。
瞳に嘲りの色が浮かんでいた。
私とジェイコブ様の身長差に驚いたのだろう。
そんな素振りは彼女も早々見せないのだけど、私は見逃さなかった。
だって、私は彼女の事が気になって横目でずっと見ていたのだから。
ジェイコブ様は、本当に立ち寄っただけ、だったらしくお茶を飲むでもなくすぐにまた席を立って執務に戻っていった。
「素敵な婚約者がいて、アリシア王女殿下はとてもお幸せですね。
もしよろしければ、私、幼少の頃からジェイキ-…ジェイコブ王太子殿下とは親しくしていましたので、幼い時の事など御教えしましょうか?」
コロコロと笑いながら上目遣いに私に聞くジェシカ嬢の思惑が分からず、どう返事をすべきか考えあぐね、私は曖昧に微笑んだ。
「その話は、追々…
そういえば、ジェシカ嬢は婚約者などはいらっしゃらないのですか?」
「はい、残念ながら…」
彼女は口をつぐみ、言い淀む。
口調には残念など思っていないのがありありと分かる言い方だ。
こんなに儚げで可愛らしいご令嬢の顔だというのに片方の眉だけを器用に上げたその表情は、中々にエキセントリックな感じで私の方が彼女の迫力に飲まれてしまいそうだ。
彼女は私を見つめて口の端をあげて意味ありげに微笑む。
…侯爵家の令嬢だ。
しかも、ちょうど適齢期の。
婚約者がいないのは、かなり不自然で、異常な事だ。
それを言うなら、マ-ガレット嬢も同じ。
…この国は、一夫一妻ではあるけれど、側妃が認められているんだっけ…
政略結婚でどんどんと販路を開いていったカンタベルの歴史を思い出す。
そして現王にも、側妃が一人いることは知っている。側妃との間に子供がいることも。
あんなに王妃様と仲良さそうに見えたけど、そこはそれ、これはこれ、なのだろうか。
だから、嫌だけど考えてしまう。
この二人は側妃候補なのか、と。
まだ結婚もしていないのに、候補がいるものなのだろうか…?
オタゴリアだったら許されないだろう。
独裁政権だけど、信仰的にオタゴリアは完全なる一夫一妻制。
王や、その家の長に子供がいない場合は兄弟もしくは甥やら従兄やらが後を継ぐ。
逆に、王家の力がそこまで強くないカンタベルは血統第一主義と聞いている。
王の血が一番濃い人間を欲する、だから。
そう、違うのだ。
ここは自国じゃない。
ここは、カンタベル、なのだ。
王女の仮面が厚くて良かった。
剥がれないで良かった。
私は無事に役割を終えただろうか?
王太子の婚約者として完璧な対応だったろうか?
オタゴリアの王女として合格点を貰えただろうか?
円満に和やかに終わらせたモ-ニングティ-の後、ぐったりと疲れてしまった私は早々に部屋に引き籠った。
何も考えたくない。
ソファに座り目を閉じる。
思い出すのはオタゴリアの草原。
馬で駆け回る、自由の息吹。
…帰りたいなぁ…
思わず声に出して言いそうになり、慌てて体を立て直す。
いけない、いけない。
私はオタゴリアの第一王女で、ここは他国だ!
しっかりしないと。
その夜、見上げた月は雲一つなく冴え冴えとして、逆に私を拒否しているように見えた。
だから、なのか目に焼き付いたジェシカ嬢と、ジェイコブ様の姿が頭をちらついてしまい、何度も寝返りを打つ。
焼き付いてしまったあの光景を打ち消すように違うことを考えてみたが、結局諦めた。
この短い期間でも、彼の人となりは大体分かったつもりだ。
そう、彼はきちんと婚約者たる私を立てる。
私の隣に座ることをためらわなかった彼の態度を、密かに安堵した自分もいる。
座るのが当たり前。
だけど、確実に座ってくれるかどうかの自信はなかったから。
私も大人しく彼の隣に座る。
ほんの一瞬、そう、本当に一瞬だと思う。
ジェシカ嬢の目が大きく開いた。そして微笑んだ。
その、微笑みは彼女にしては失敗だろう。
瞳に嘲りの色が浮かんでいた。
私とジェイコブ様の身長差に驚いたのだろう。
そんな素振りは彼女も早々見せないのだけど、私は見逃さなかった。
だって、私は彼女の事が気になって横目でずっと見ていたのだから。
ジェイコブ様は、本当に立ち寄っただけ、だったらしくお茶を飲むでもなくすぐにまた席を立って執務に戻っていった。
「素敵な婚約者がいて、アリシア王女殿下はとてもお幸せですね。
もしよろしければ、私、幼少の頃からジェイキ-…ジェイコブ王太子殿下とは親しくしていましたので、幼い時の事など御教えしましょうか?」
コロコロと笑いながら上目遣いに私に聞くジェシカ嬢の思惑が分からず、どう返事をすべきか考えあぐね、私は曖昧に微笑んだ。
「その話は、追々…
そういえば、ジェシカ嬢は婚約者などはいらっしゃらないのですか?」
「はい、残念ながら…」
彼女は口をつぐみ、言い淀む。
口調には残念など思っていないのがありありと分かる言い方だ。
こんなに儚げで可愛らしいご令嬢の顔だというのに片方の眉だけを器用に上げたその表情は、中々にエキセントリックな感じで私の方が彼女の迫力に飲まれてしまいそうだ。
彼女は私を見つめて口の端をあげて意味ありげに微笑む。
…侯爵家の令嬢だ。
しかも、ちょうど適齢期の。
婚約者がいないのは、かなり不自然で、異常な事だ。
それを言うなら、マ-ガレット嬢も同じ。
…この国は、一夫一妻ではあるけれど、側妃が認められているんだっけ…
政略結婚でどんどんと販路を開いていったカンタベルの歴史を思い出す。
そして現王にも、側妃が一人いることは知っている。側妃との間に子供がいることも。
あんなに王妃様と仲良さそうに見えたけど、そこはそれ、これはこれ、なのだろうか。
だから、嫌だけど考えてしまう。
この二人は側妃候補なのか、と。
まだ結婚もしていないのに、候補がいるものなのだろうか…?
オタゴリアだったら許されないだろう。
独裁政権だけど、信仰的にオタゴリアは完全なる一夫一妻制。
王や、その家の長に子供がいない場合は兄弟もしくは甥やら従兄やらが後を継ぐ。
逆に、王家の力がそこまで強くないカンタベルは血統第一主義と聞いている。
王の血が一番濃い人間を欲する、だから。
そう、違うのだ。
ここは自国じゃない。
ここは、カンタベル、なのだ。
王女の仮面が厚くて良かった。
剥がれないで良かった。
私は無事に役割を終えただろうか?
王太子の婚約者として完璧な対応だったろうか?
オタゴリアの王女として合格点を貰えただろうか?
円満に和やかに終わらせたモ-ニングティ-の後、ぐったりと疲れてしまった私は早々に部屋に引き籠った。
何も考えたくない。
ソファに座り目を閉じる。
思い出すのはオタゴリアの草原。
馬で駆け回る、自由の息吹。
…帰りたいなぁ…
思わず声に出して言いそうになり、慌てて体を立て直す。
いけない、いけない。
私はオタゴリアの第一王女で、ここは他国だ!
しっかりしないと。
その夜、見上げた月は雲一つなく冴え冴えとして、逆に私を拒否しているように見えた。
だから、なのか目に焼き付いたジェシカ嬢と、ジェイコブ様の姿が頭をちらついてしまい、何度も寝返りを打つ。
焼き付いてしまったあの光景を打ち消すように違うことを考えてみたが、結局諦めた。
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