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第四章 ヒロインは世界を救う、かもしれない
5.死亡フラグとの闘い
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アレクは素早く私の腕から離れると、にっと口を笑ませた。
そして震える人差し指を口の前に立てる。
「ユニカ。こういうときは絶対に泣いちゃだめだよ。悲劇にしちゃだめ。それが俺の死亡フラグになる。さらっと、なんでもないことのようにここを去るんだ」
死亡フラグ。
私の頭の半分は真っ白。半分は状況を冷静に観察していた。
国王の周りでは味方となってくれた人たちが周囲に事情を説明していた。さっき大声を荒げて攻撃を指示したホクロの側近も、アレクを刺したやつも取り押さえられている。
ちゃんと聞いてる。
ちゃんと耳に入っている。
けれど私は、アレクが口から流した血と、アレクの脇腹から流れる血をぼんやりと見ていた。
「アレク、やっぱり私のこと好きでしょう。大好きなんでしょう」
ずっと思ってた。
なんで私たちは結ばれないのか、って。
諦められなかったのは、これっぽっちも望みがないわけじゃないと思っていたから。
私はアレクのことが大好きだ。だけどそれだけじゃない。確かにアレクも、時折私をいとおしそうに見つめてくれる。
だから、結ばれないのは何故なのかって、思っていた。
アレクは笑った。いつもの顔で。
「だから、おあずけだっていったでしょ? 今それに答えたら、そこで終わっちゃうから。帰るまで待ってね。ユニカ、いいこだ」
アレクが死んじゃう。
死なないで。
ここでお別れなんて嫌だ。
だけど私が泣いて取り乱せばそれは劇的な展開となって本当にアレクが死んでしまう。
そうさせてはならない。アレクが言うように、ここでアレクが死んでもつまらないと思われるようにしなければならない。
瞼の淵で揺れる涙を零すまいと堪える私に、アレクは手を伸ばし――鼻をつまんだ。
「ふっが!!」
「はははははは。ユニカかわいいよ。いいね、そんなかんじで帰ろう」
深刻さを消そうとしているのはわかるのに。それでも涙は今にも溢れそうだ。
「待て」
そう声をかけられた。
昨日はいなかった男だ。敵か味方か判断しあぐねているうちに、男は真剣な瞳で言った。
「治療を、させてくれ。話は聞いた。我がギスモーダ国のため身の危険を顧みずここまでしてくれたこと、感謝している。おかげでギスモーダ国王は無事だ」
振り返れば、ギスモーダ国王の不摂生がたたったような顔はそのままではあったが、その呆然とした表情からは何か悪いものが抜け落ちたようだった。
私の答えは一つだった。
「よろしくお願いします」
一刻も早く治療してほしい。少しでも助かる可能性を上げたい。
「ちなみに」
アレクを託した私は、アレクを刺した奴を振り返る。
「もしアレクが死んだら、この世界ぶっこわすから」
手始めにあいつから。
私は顔を覚えておこうとじっくりとその顔を見た。次にホクロのあいつを見る。
アレクの無事が確認できるまで、この二人のことは絶対に忘れない。
「はは、そうだよその感じ。はー、いいなー、やっぱりユニカは最高だなー」
そう笑って、アレクは医療室に連れて行かれた。
◇
アレクはギスモーダ国に残って治療することになった。
離れたがらなかった私に、アレクは言った。
「離れた方が僕の死亡確率は減る。怪我の場合は目の前でお涙ちょうだいで死ぬことが多い。容態が悪くなって遠方で死んだ知らせが届くパターンが多いのは病気だから。だから、ユニカは彼らと一緒に国に帰って」
そう言われたら選択肢はなかった。
だけど私はアレクに聞きたいことがたくさんあった。
最初から最後まで、何故で埋め尽くされている。
本当は、なんとなくわかっていることもある。
だけどアレクの口から聞きたい。
私はアレクの帰りを待った。
けれどアレクはまだ帰って来ないまま、私は卒業式を迎えることになった。
そして震える人差し指を口の前に立てる。
「ユニカ。こういうときは絶対に泣いちゃだめだよ。悲劇にしちゃだめ。それが俺の死亡フラグになる。さらっと、なんでもないことのようにここを去るんだ」
死亡フラグ。
私の頭の半分は真っ白。半分は状況を冷静に観察していた。
国王の周りでは味方となってくれた人たちが周囲に事情を説明していた。さっき大声を荒げて攻撃を指示したホクロの側近も、アレクを刺したやつも取り押さえられている。
ちゃんと聞いてる。
ちゃんと耳に入っている。
けれど私は、アレクが口から流した血と、アレクの脇腹から流れる血をぼんやりと見ていた。
「アレク、やっぱり私のこと好きでしょう。大好きなんでしょう」
ずっと思ってた。
なんで私たちは結ばれないのか、って。
諦められなかったのは、これっぽっちも望みがないわけじゃないと思っていたから。
私はアレクのことが大好きだ。だけどそれだけじゃない。確かにアレクも、時折私をいとおしそうに見つめてくれる。
だから、結ばれないのは何故なのかって、思っていた。
アレクは笑った。いつもの顔で。
「だから、おあずけだっていったでしょ? 今それに答えたら、そこで終わっちゃうから。帰るまで待ってね。ユニカ、いいこだ」
アレクが死んじゃう。
死なないで。
ここでお別れなんて嫌だ。
だけど私が泣いて取り乱せばそれは劇的な展開となって本当にアレクが死んでしまう。
そうさせてはならない。アレクが言うように、ここでアレクが死んでもつまらないと思われるようにしなければならない。
瞼の淵で揺れる涙を零すまいと堪える私に、アレクは手を伸ばし――鼻をつまんだ。
「ふっが!!」
「はははははは。ユニカかわいいよ。いいね、そんなかんじで帰ろう」
深刻さを消そうとしているのはわかるのに。それでも涙は今にも溢れそうだ。
「待て」
そう声をかけられた。
昨日はいなかった男だ。敵か味方か判断しあぐねているうちに、男は真剣な瞳で言った。
「治療を、させてくれ。話は聞いた。我がギスモーダ国のため身の危険を顧みずここまでしてくれたこと、感謝している。おかげでギスモーダ国王は無事だ」
振り返れば、ギスモーダ国王の不摂生がたたったような顔はそのままではあったが、その呆然とした表情からは何か悪いものが抜け落ちたようだった。
私の答えは一つだった。
「よろしくお願いします」
一刻も早く治療してほしい。少しでも助かる可能性を上げたい。
「ちなみに」
アレクを託した私は、アレクを刺した奴を振り返る。
「もしアレクが死んだら、この世界ぶっこわすから」
手始めにあいつから。
私は顔を覚えておこうとじっくりとその顔を見た。次にホクロのあいつを見る。
アレクの無事が確認できるまで、この二人のことは絶対に忘れない。
「はは、そうだよその感じ。はー、いいなー、やっぱりユニカは最高だなー」
そう笑って、アレクは医療室に連れて行かれた。
◇
アレクはギスモーダ国に残って治療することになった。
離れたがらなかった私に、アレクは言った。
「離れた方が僕の死亡確率は減る。怪我の場合は目の前でお涙ちょうだいで死ぬことが多い。容態が悪くなって遠方で死んだ知らせが届くパターンが多いのは病気だから。だから、ユニカは彼らと一緒に国に帰って」
そう言われたら選択肢はなかった。
だけど私はアレクに聞きたいことがたくさんあった。
最初から最後まで、何故で埋め尽くされている。
本当は、なんとなくわかっていることもある。
だけどアレクの口から聞きたい。
私はアレクの帰りを待った。
けれどアレクはまだ帰って来ないまま、私は卒業式を迎えることになった。
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