タブー的幻想録

ももいろ珊瑚

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第十二章 繭美というヒト

変化のない、これからに向ける思い

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「やさしいね……グスッ……お姉さん……それに落ち着いてて……流されない強さみたいの感じた。 綺麗だしさ……話せてラッキーだった、とおるが好きになったの分かるかも」

「まだ返事はしていないのよ? ただ申し訳ないけれど、あなたの手助けは出来ないと思う」

「ううん、最初に聞かされてわかってたからいい、グスッ。 好きになった人が現れたら、その人しか……グスッ、、って言ってたしぃ……」

 嗚咽を堪えて言葉が途切れる。

「仕方ないの! マユミには代わりにもなれないの知ってる、とおるのこと、まだ好きだしぃ、忘れられるかわかんないけどぉ。 相手にして貰えただけで嬉しかった。 欲張らなきゃ! これからも顔見れるし、それでいい」

「彼を呼びましょうか?」

「ダメダメダメーェ! そんなことしたらバレちゃうじゃない、ここで私に聞いたことはとおるには内緒にしてね。 会ったこともね。 とおるからって言われてたのに、バレたら嫌いになられちゃうから。 そんなの悲し過ぎでしょォー」

 また再び涙が流れだした。

「わかった、わかった、約束する。 困らせたくて言ったのじゃなの」

「言わないでくれるのぉ? マユミ意地悪言ったこと黙ってくれるぅ?」

「うん」

「それと、とおるを泣かしたらダメだよぉ。 お父さんもお母さんもいないんだって。 だから一人にさせないでね、泣かしたらマユミ、許さないかんね!」

 (御両親と同居していたのじゃないのか。 じゃあ誰と暮らしているのかしら)

 黙ってただ点頭うなずく。 彼女の想いと、私のとは別物で、口にするのを思いあぐねてしまう。 交差することの無い二つを擦り合わせるなど不可能だから。




 友人達が姿を見せるまで、彼女は幾度も自分の知り得る彼の事情を教えたがったけれど、話をすり替えて聞かない様にした。
 彼女と彼との間にあったであろう事については、身振りと表情を以て謝絶した。
 始めに公言した『一切関せず』を貫きたい為。

 私も前の人との事は、彼に尋ねられない限りは話さないだろう。
 全て真っさらな恋をしたい。
 今、それは譲れないから。

 部分規制はあるけれど、互い関する情報公開をする間に食事を一緒して、彼女の友人達が訪れるのを見届け、私は解放して貰った。
 流石に現役女子大生の会話に馴染む自信は無い。 挨拶を交わす程度でさえ、満々たる若さのパワーというか、年代の差と呼ばれるもの感じさせられ、殊更ゲンナリした。

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