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⑦無様と護る者
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小桜の過去編
「おーい、佳織」
「一緒に帰ろう」
小桜舞が学生服で鞄を手に持ち、言葉を発しながら下駄箱の付近に来る。
「うん」
春花佳織も同じ格好で下駄箱の所で上履きと靴を変えようとしている。
「こないだの宿題できた」
明るくて快活な小桜は元気よく言葉を話している。
「出来たよ」
「見せようか」
少し暗めでショートカットの春花佳織は又かと思いつつも、自分の気持ちを押し殺して小桜に言い放つ。
「ただじゃないから」
少し意地悪っぽく小桜に言い放つ。
「駅前の喫茶店のパフェを奢るね」
小桜は、ここぞと自分が食べたいものを言い放つ。
「パフェ美味しいそう」
すかさず、小桜は呼吸をする前に春花に言い放つ。
「太一君とも来てさ、美味しかったから」
「佳織にも教えたくて」
小桜は前に来たことがあるということが言いたかった。でも、春花には別のことに聞こえる。
「そうなんだ」
春花も男の子とのデートのことは流して少しトーンダウンして言葉が出る。
カフェにて
「でさ、大学の進路決まった」
高校三年のこの時期に話すことなんて決まっている。それは、進学の話である。
「私は東京の私学の早総大学に行きたいんだ」
「佳織って頭いいもんね」
相槌を打った。
「私はね。空手の推薦きてるんだ。運動だけは誰にも負けないもんね」
少し張り合おうとしているが、張り合う分野が違う。でも、そこしか、私が彼女に勝てる分野がない。
「なに、それって、運動だけで頭は悪いって言ってるの」
佳織は、冗談ぽく言うが、少しピリッとした場の雰囲気がする。
「ひどいな」
少し真面目な顔つきで言う。
「あっはははっは」
二人は一斉に笑い出した。
「パフェ一口あげるからさ」
スプーンでアイスの所とイチゴを小桜の口に運んだ。
「イチゴってこういう味なんだ」
口をもぐもぐしながら言葉が出る。
「バナナパフェ食べてみる」
今度はこちらからお礼をしなくてはと考えて言葉がでる。
「うん。頂戴」
アイスとバナナを春花の口に運んだ。美味しいという顔つきになる。
「でさ、太一君はどこの大学に行くの」
春花は、言葉を出す。
小桜は、急な言葉の変換で驚く。
「さあ、どこ行くんだろうね」
小桜は、彼氏ではない太一とはデートをしている中であるが、正式に付き合っているわけではない。
「あんまり記憶ないな」
少し不機嫌そうに言葉を並べる。
「舞って太一君好きなの」
イチゴパフェの上段を平らげながら、聞く。
「何よ、佳織が応援してくれているから、デートはしているんでしょ」
少し満更でもなかった小桜は照れながら言葉を発している。
「好きか嫌いかでゆうと、好きな部類に入るけど、佳織の方が好きかな」
照れ隠しではなく本気で言ってみる。
「女の貴方から言われてもちっともうれしくありません」
春花に一括される。
「じゃ、私が男だったら付き合ってくれたってこと」
「悩むな」
春花は手の手刀で頭を殴られる。
小桜と春花は冗談で話している。いつものガールズトークの延長戦である。
「あっははっはは」
二人はお互い笑っている。
「遅くなった、予備校行かないと」
せわしなくパフェを平らげる。
「もう夜七時か」
「早くいかないと」
急いでいる。
「送って行こうか」
「いい、ここでお別れね」
「舞のこと好きよ」
また、冗談だと思って聞き流す。
これが、彼女との最後の別れだった。
その後、失踪する。
あくる日
警察が学校に来て小桜舞が会議室に呼ばれて聴取を受ける。
「春花佳織さんとは最後どこで会ったんですか」
強面とは言えないが優しそうな警官である。
「カフェでパフェ食べて、塾に」
「どうして、佳織が消えるんですか」
涙をこらえながらハンカチを両手に持ち机の下で力いっぱい握っている。
「友達なんです」
「見つけてください」
すがるような声と態度で話し始める。
「全力を尽くします」
警察官は優しく彼女に言う。
小桜は授業を受けれる感じではなかったが、頑張って授業を受けた。放課後になると、成宮太一が、舞の異変に気が付き、送っていくと申し出た。
「今日は送って行くよ」
「心配だからさ」
照れ隠しのつもりで頭を掻きながら言う。
「心配してくれてありがとう」
「送ってもらいます」
うつむきかげんで言った。太一の心づかいが嬉しい。
「はい」
成宮は、自転車を取りに行って、自転車を押しながらこっちに向かってくる。
「じゃあ、帰ろう」
自転車を押す成宮と小桜は無言で歩いている。
成宮の方から、話始めた。
「春花佳織ってどんな子なの」
「見た目は地味で性格もどっちかというと暗い感じで、でもさ、私とは妙に気が合うんだよね」
「聞いてる音楽とか。そういえばライブ行ったときに、どっちのファンかも被った。団扇をお互いに作って来てさ、同じだった」
「そうなんだ」
「佳織は、自分のことよりも相手のことを考えて動ける奴だったんだ」
周りは夕方で静けさが周りにある。妙に自転車のかたかたなる音に耳が持っていかれそうになる。
「気が合って気づけば一番大切な存在までになる」
今の現実を直視が出来ない。だからこそ、昔の思い出に浸っている。
照れながら言う小桜を見て、成宮はいいなと感じる。
「大好きだったんだね、春花さんのこと」
「うん」
「何か涙出てくる」
佳織のことを考えると泣けてくる。周りが一層静かに聞こえていた。それが、小桜の心に反応している。
「ちょっと待って」
成宮は鞄からハンカチを小桜に手渡す。
「ありがとう」
そういつもそうだ、成宮はやさしい。
急に寒気がした、振り向くと小桜たちの後ろに女の人が立っている。
三十代くらいのお姉さんという感じで、見た目もよく頭がよさそうに見える。
何も話さずにこちらに短剣を投げる。
短剣が小桜の足に刺さる。
「ああああ」
声にならない痛みが全身に走る。
痛みで小桜は動けない。
でも、必死に遠ざかろうとしている。
「早く逃げろ、小桜」
「男の俺が逃げてどうする」
ゆっくりと女性は近づいてくる。
大声を出し女性の方へ成宮が殴りかかる。
「私のね、憎悪があんたを殺せって言ってるの」
「ごめんね」
「大好きだった。太一君」
女の人は言葉を発する声に悲しみが込められていた。
「えっ」
成宮は自分の名前を呼ばれたことに驚きを隠せなかった。しかし、それを頭で処理している間に、女性の攻撃が成宮を貫いた。
もう一つの短剣で首を切った。
小桜はわけが分からない。
「どうして」
「どうして」
「どうして」
「こんな状況が現実なの」
「きっと、夢よ」
「幻なんだ」
その言葉を話し自分が置かれている状況より逃避を選ぼうとしている。しかし、現実に引き戻される。顔は涙で溢れている。どうしようもない悲しみの中で存在している。
「ようやく自我が目覚めた」
この言葉に何が含まれているか、今の小桜には到底考えが及ばない。
「私はね春花佳織なの」
小桜は、意味が分からない。
「憎悪になったの」
髪をくるくるしながら話している。
「それより大好きだった人が二人いて一人は死んじゃった。私が殺したの。もう一人は貴方」
「私を殺すの」
表情は恐怖に満ち満ちている。
ああ、こういう顔もするんだと心の中で春花は楽しんでいる。
「貴方が好きだから」
この時に考えがまとまらなかったが、向こうの意見を信じることにする。
「待って、止めて」
恐怖という感情しかない。
「いい具合に泣くね」
「いつもの強い、貴方はどこへ行ったの」
「そんなあなただから、私は憧れていて、それと同じだけ憎悪を抱いていた」
「知らなかったでしょ、私は、本当は貴方が嫌いなの」
その言葉の裏に隠された大好きが読み取れなかった小桜は恐怖で心が痛い。もしも、春花が言葉を続けるならこうだ。
(貴方はいつも輝いていた。それに比べ私は地味で、言いたいことも言えない。貴方はいいよね、いつも、羨望の眼差しで周りから見られていて)
つまり、春花は小桜に嫉妬しているんだ。
何の感情も載せずに淡々と言葉を連ねていく。
小桜の肩を蹴飛ばす。
「どうこの顔いいでしょ。あんたよりも、可愛いでしょ」
「この体が自分のものになると知って、喜びに震えたわ」
「貴方は貴方じゃない」
小桜は必死に言葉を続ける。
「今日から成瀬咲になったの」
自慢げに話している。話す言葉に感情が含まれてきた。
「この顔でこの体で、この頭で私は未来が開けたの」
「だから、私は貴方を殺すの」
「だって、過去と決別したいじゃない」
「それをあのお方が許してくれた」
泣きひしがれている小桜をよそに期待に胸を含ませている。
「本当に醜くなったのね、佳織」
「佳織ってよばないで」
「いいや、佳織だよ」
怖い気持ちが消えて、佳織の親友として間違った道へ行くことを止めるためだけに言葉を選んでいる。
小桜を突き動かしているのは正義の心だ。
「私が、あの男を好きだったことも知らずにあの男と付き合って」
佳織は感情的になり、体を大きく動かしながら近づいてきた。
「私がどれだけ傷ついていたか。分からなかったじゃない」
言葉は低く声質は冷酷な風に聞こえる。
佳織は胸の辺りを叩きながら話している。
「だから、私は言えなかった、太一が好きって」
「でも、貴方は私に聞いてきた。あれほど、腹が立ったことはなかった。あれほどひどい仕打ちはなかった」
声が一段と大きくなってきた。
「彼も彼で私には見向きもしないで、舞に言い寄ってた」
「私なんかこの世界のどこにも居場所がなかった」
「でもそれは違ったんだ」
「そんな時にあのお方が導いてくれた」
「そう、神様なんだと」
「だから、私は契約をした」
「私は憎悪になると。世界が変わって見える。いつも卑屈な私が今は、貴方と対等に話せる」
息を飲むくらいの激しい佳織からの怒りである。
「私の憎悪は彼に向いたの」
「世の中、男は腐るほどいる」
「だから、貴方に嫉妬していた私は馬鹿なんだって」
佳織は。今から、小桜の命を狩り取ろうと、短剣を右手に持ちかえた。佳織は内に秘めていた舞への怒りを表に出すことですっきりとした気分へと変わっていく。
「いや、貴方を否定する」
舞は。助かりたいから言うのではない。自分の中の貴方を消したくない。今度は小桜が自分の中の春花への怒りを吐露しだした。
「だって親友なんだから。私だって貴方にひかれていたんだから」
「貴方はいつもそう、人の物を欲しがる癖がある。でも、自分からは言い出せないし鈍感だし」
「この際だから私も言うけど」
「そういったもじもじした所、嫌いだから。貴方だって気づいていたでしょ」
感情がそのまま言葉にのって話している。春花に少しでも届くように言葉を選ばずに心のまま話しているように聞こえる。
「何でこんなように変わっちゃったのさ。私達は、いつも一緒だったでしょ。彼氏ができたとか。この服屋さん可愛いって私達で、話すの楽しかったじゃない」
「もうできないんだよ」
なにも考えずに頭に浮かんだ言葉をただ、並べている。これこそ、心からの叫び声である。
「私はもっと佳織と話がしたいんだよ」
「貴方はもう私と話すのも嫌」
真剣な声に真剣な感情を込めた。春花に届きますようにと言葉を選び投げる。
春花佳織の心の声
(そうだ、いつからだろう。舞と比較して勝手に劣等感を感じて、憎悪を募らせてきたのは)
(私は小学生のころ友達がいなくてよく、その輪から外れていた。そんな私を外の世界に連れてくれていたのは貴方だった)
(そうだ、いつからだろう)
(こんなにも気持ちをぶつけられたのは。これが、友達だって)
(言いたいことを隠して嫌でも好きと言って卑屈になり、なんで、こんな付き合い方しかできなかったんだろう)
(そうだ、私は舞の親友だ)
(腹を割って話せばよかったんだ、お互い)
「ごめん」
佳織は、泣きながら地に足を下す。
小桜の所に行こうとしたとき声が聞こえる。
「待ちなさいよ」
「貴方の役目を忘れたんですか」
ピエロの格好で身長は低く子供くらいの身長のハーメルンが現れる。
「貴方に力を渡したのは親友を殺すから渡したのに、気が変わって殺さないのは、なしですよ」
頭を振りながら手を振りながら話している。
「すみません、ハーメルン様」
「でも、もう一度希望が湧いてきたのです。舞とやり直せることが」
地に伏せながら涙をぬぐいハーメルンに意見する。
「だめ」
ハーメルンは。からかう感じで声をのせる。
「殺せないのなら」
手をパチンと鳴らす。
「解体屋」
ハーメルンの横の男に声を投げる。
「はい、ハーメルン様」
格好はイケメンの三十代くらいの今どきのファッションをしている。
「二人を殺しなさい」
「希望を狩り取りなさい」
まるで、子供が駄々を言っている風にハーメルンの声が聞こえる。
「舞は私が守るんだ」
「安心して守るから」
解体屋と春花が応戦している。
春花は、「雨」と書き円で囲み触れる。
雨雲が来て雨が降り出す。もう一度「雨」と書き円で囲み龍と書き触れる。雨粒が寄り集まって龍の形になる。
「行け、水龍神」
解体屋が水龍神の攻撃を避けている。
「雨なんてじとじとして気持ち悪いし陰気で気持ち悪いのを文字として使用する所からして、陰気な女だな」
解体屋はまず、心を折ることから始めている。
「そう、それが私なんだから」
その言葉に肯定をし、自分自身の至らなさを言葉ではっした。
「へえ、怒らないのか」
解体屋は。驚く様子だが、こいつが憎悪を乗り越えたことに賞賛はしないが、称えてもいいかなとは感じている。
「怒らない、それが、私だから。受け入れるんだ」
「それが、未来を創るのならば」
春花は毅然と言い放つ。
「そうか、じゃ、俺の仕事を見せてやるよ」
「解体」と文字を書き円で囲み手に触れて、手に何か分からないものを纏っている。
水龍神に向かっていき。龍の体を解体する。龍がただの雨粒になる。
「これが、俺の憎悪だ」
何が起こったか分からない。
「分からないようだから教えてやるよ。俺の憎悪は解体だ」
「すべての文字や物を解体する憎悪だ」
じゃ、「雨」と書き円で囲み触れる。
「水龍弾」
周りの雨が鋭く尖り幾多の雨粒が解体屋に向かって攻撃をする。
「残念」
すべてを解体しつくした。
「私の憎悪は貴方と違って。今日やそこらで会得した憎悪ではないんです」
「ちゃんと裏付けられた力なんです」
強者の微笑みをしている。
「舞、逃げて」
春花は逃げる方を選択する。
「無理みたい足を怪我してるんだ」
足の怪我はさほどではない、しかし、恐怖で足が動かないんだ。
「ごめんね、私が巻き込んだ」
春花は自ら謝り許してもらいたいという気持ちで溢れていた。
「それよりこの場を乗り切ることを考えて」
「戦って勝てるほど甘くわない」
舞は。今までの空手の大会で何度も味わった、
挑むという感覚。
弱者ゆえの気持ちだ。
「だからこそ、そこに勝機がある」
「向こうは、こちらを三下と考えている。そこに付け入るスキがある。絶対に大丈夫。貴方ならこの場をのり切れるから」
「舞に言われると勇気が湧く」
春花が笑顔になった。
(やっぱり、舞はこうだよね)
「絶対に貴方だけは助けるから」
春花は決意を固めた。
「雨」と書き円で囲み纏いと付加する。体を雨が覆う。そのあと雨のローブがでて体を纏う衣服になる。そのフォームを手に入れたことにより。いっそう二人は激しく応戦している。
勝つか負けるかの勝負の中で守ることを優先している春花佳織は少し、ずれている。
しかし、守るものがあると人は大きく成長する。つまり、強くなるんだ。
春花は追い込まれて、この雨の纏いを考えた。頭がいい春花らしい考え方である。雨、つまり、天候を支配する憎悪はこれほど強い。さっきまでとは違い、春花が優勢である。
「じゃあ、これを使いますか」
解体屋は、手に銃を持ち引き金を引いた。纏いが銃の弾をはじいた。
「これを防ぎますよね」
「なら、こっちはどうでしょう」
銃口が春花から小桜に向けられた。
「雨」と書き円で囲み盾を付加し小桜の周りを透明なシールドで守っている。
「これが、狙い何ですよ」
「そう、貴方は今、極寒に防御服を持たずに裸一貫でいるのと同じですよ。その防護服を他人に貸して自分は裸だ」
「それでも、その子を助けたいんですね」
「何て仲間思い何でしょう」
解体屋は。(そういう奴は、虫唾が走る)
(きれいごとだ)
(人間なんて自分のことしか考えていない自己中である)
(それが、誰かを助ける。そんなあまちゃんを殺すことは楽しいでしょう)
銃の先を小桜に向けつつ春花に近寄る。
解体を変異し剣にした。その剣で春花の肩を突いた。
「あっあああああ」
声にならない声が出た。
「痛いでしょ」
「早く憎悪で自分を守らないと死んじゃいますよ」
また、腹に剣を突き立てた。
「あっああああああ」
「何だ、面白くありませんね」
「そんな奴みすてればいいのに」
剣を抜きつつ言葉を発する。
「見捨てれるわけないじゃない」
「友達なんだ」
解体屋は剣を消し、不満そうな顔でこちらを睨んでいる。
「私は人間の醜い姿が見たかったのに。こんな人間を見たいわけじゃない。こんな甘っちょろい奴は久々に見た。反吐が出る」
春花は、これが私の最後になるんだ。
最後に言わなくっちゃ。
「舞、友達でいてくれてありがとう」
小桜は、春花が死ぬつもりなんだと気づく。
そのあとだった、解体屋が春花の心臓に剣を刺した。
「エクセレント」
「素晴らしい私の憎悪」
解体屋は余韻に浸っている。
「許さない」
小桜は声が自然に出た。
心の中で何度も祈った。何度も叫んだ。親友を殺した奴を殺すと。
声にならない声で何度も泣いた。一瞬のできごとだが、小桜にとっては何年もたっているくらいの出来事である。
「絶対に許さない」
(もしかしたらやり直せたかもしれないのに、希望を摘み取った。許さない。世界を敵にしてでもあいつは撃つ。どんな力でもいい。あいつを殺せる力が欲しい。殺せれば後は要らない)
(悪魔にこの身を捧げてもいい)
(力を私にくれ)
「いいだろう」
どこともなく声が聞こえる。
「力を貸してやるよ」
「その代り」
「取引だ」
「私の記憶を取り戻してくれ」
小桜は何も言わずに決断する。
力を欲すると。
解体屋が銃を私に向ける。
「恐怖で失神したんですか」
「情けないですね」
「まあ、親友が死んだところを見せられて、死を受け入れたんですかね」
「違う」
「受け入れたんだ」
「死をですか」
「憎悪だ」
「まさか、ハーメルン様がお力を加えるわけがない」
「お前」
解体屋の銃を触った。すると銃は無くなり、「銃」の文字を小桜は書いて触れる。
「バン」
「あれ、痛い何だ。この痛みは」
解体屋が目をぱちくりとしている間に小桜は立つ。
痛みがある腹を触りその手を見た。血が出ている。何をした。
解体屋はその場に倒れて、小桜は銃をこちらに向けた。
「あばよ」
解体屋の頭を撃ち抜く。
何が起こったかそれは、小桜の中に憎悪が生まれた。普通ハーメルンによって憎悪にされたのなら死んで体が憎悪になった対象の魂が入る。
しかし、小桜は自我を保ちつつ憎悪と共生している。つまり、小桜の中に別人格が一人いる。
これは、稀なことである。それよりも奇怪なことは、憎悪が憎悪になる器を選んだことだ。
この世界は完璧な世界ではなく不完全な世界である。
つまり、色々なイレギュラーが起こる。それが、今回のことだった。
この状況でハーメルンが観戦していたモードから戦うモードへと変える。憎悪を使うのは体力がいる。今しがた手に入れた。憎悪で体力は使い切ってしまった。その場に倒れる。
ハーメルンは、小桜に話しかけた。
「貴方は一体何者なんです」
「私は」
小桜は、息も絶え絶えに話している。
「お前じゃない」
「憎悪の方だ」
「俺はな、記憶を探すものだ」
小桜と入れ替わり話している。
「そうですか」
「今殺しとかないといけない気がしてくる」
「恨みはありませんが」
笛を剣に変え突き刺そうとした瞬間。
気配を感じる。
ハーメルンは気配の出た所を見ると。杖を突いた情報屋がいる。
「なぜ、お前がここにいる」
「その子を殺すんですか」
お洒落な着物を着ている六十代くらいの人がいた。
「そうだ」
「そうですか」
意味深げに話している。
気配が消え存在も消える。
次に気配が感じた瞬間に。
処刑人が鎌をハーメルンの首元に存在していた。すかさず鎌を手で止める。
「流石ですね」
死刑人の名の通った、情報屋のコードネーム処刑人。
それに、自分の存在を大きくしたり、小さくできるコードネーム存在。
「貴方達二人が出てくるということは。この小桜の中に入った憎悪に関係あるんですか」
「お前は知らなくてもいい。ハーメルン」
口調が冷たく言い放っている。
「ここは、引きましょう」
「アディオス」
ハーメルンは去っていく。
気が飛びそうなくらいになっている小桜には、今どうなっているかが分からない状態である。
言葉で表すと無様である。
「おーい、佳織」
「一緒に帰ろう」
小桜舞が学生服で鞄を手に持ち、言葉を発しながら下駄箱の付近に来る。
「うん」
春花佳織も同じ格好で下駄箱の所で上履きと靴を変えようとしている。
「こないだの宿題できた」
明るくて快活な小桜は元気よく言葉を話している。
「出来たよ」
「見せようか」
少し暗めでショートカットの春花佳織は又かと思いつつも、自分の気持ちを押し殺して小桜に言い放つ。
「ただじゃないから」
少し意地悪っぽく小桜に言い放つ。
「駅前の喫茶店のパフェを奢るね」
小桜は、ここぞと自分が食べたいものを言い放つ。
「パフェ美味しいそう」
すかさず、小桜は呼吸をする前に春花に言い放つ。
「太一君とも来てさ、美味しかったから」
「佳織にも教えたくて」
小桜は前に来たことがあるということが言いたかった。でも、春花には別のことに聞こえる。
「そうなんだ」
春花も男の子とのデートのことは流して少しトーンダウンして言葉が出る。
カフェにて
「でさ、大学の進路決まった」
高校三年のこの時期に話すことなんて決まっている。それは、進学の話である。
「私は東京の私学の早総大学に行きたいんだ」
「佳織って頭いいもんね」
相槌を打った。
「私はね。空手の推薦きてるんだ。運動だけは誰にも負けないもんね」
少し張り合おうとしているが、張り合う分野が違う。でも、そこしか、私が彼女に勝てる分野がない。
「なに、それって、運動だけで頭は悪いって言ってるの」
佳織は、冗談ぽく言うが、少しピリッとした場の雰囲気がする。
「ひどいな」
少し真面目な顔つきで言う。
「あっはははっは」
二人は一斉に笑い出した。
「パフェ一口あげるからさ」
スプーンでアイスの所とイチゴを小桜の口に運んだ。
「イチゴってこういう味なんだ」
口をもぐもぐしながら言葉が出る。
「バナナパフェ食べてみる」
今度はこちらからお礼をしなくてはと考えて言葉がでる。
「うん。頂戴」
アイスとバナナを春花の口に運んだ。美味しいという顔つきになる。
「でさ、太一君はどこの大学に行くの」
春花は、言葉を出す。
小桜は、急な言葉の変換で驚く。
「さあ、どこ行くんだろうね」
小桜は、彼氏ではない太一とはデートをしている中であるが、正式に付き合っているわけではない。
「あんまり記憶ないな」
少し不機嫌そうに言葉を並べる。
「舞って太一君好きなの」
イチゴパフェの上段を平らげながら、聞く。
「何よ、佳織が応援してくれているから、デートはしているんでしょ」
少し満更でもなかった小桜は照れながら言葉を発している。
「好きか嫌いかでゆうと、好きな部類に入るけど、佳織の方が好きかな」
照れ隠しではなく本気で言ってみる。
「女の貴方から言われてもちっともうれしくありません」
春花に一括される。
「じゃ、私が男だったら付き合ってくれたってこと」
「悩むな」
春花は手の手刀で頭を殴られる。
小桜と春花は冗談で話している。いつものガールズトークの延長戦である。
「あっははっはは」
二人はお互い笑っている。
「遅くなった、予備校行かないと」
せわしなくパフェを平らげる。
「もう夜七時か」
「早くいかないと」
急いでいる。
「送って行こうか」
「いい、ここでお別れね」
「舞のこと好きよ」
また、冗談だと思って聞き流す。
これが、彼女との最後の別れだった。
その後、失踪する。
あくる日
警察が学校に来て小桜舞が会議室に呼ばれて聴取を受ける。
「春花佳織さんとは最後どこで会ったんですか」
強面とは言えないが優しそうな警官である。
「カフェでパフェ食べて、塾に」
「どうして、佳織が消えるんですか」
涙をこらえながらハンカチを両手に持ち机の下で力いっぱい握っている。
「友達なんです」
「見つけてください」
すがるような声と態度で話し始める。
「全力を尽くします」
警察官は優しく彼女に言う。
小桜は授業を受けれる感じではなかったが、頑張って授業を受けた。放課後になると、成宮太一が、舞の異変に気が付き、送っていくと申し出た。
「今日は送って行くよ」
「心配だからさ」
照れ隠しのつもりで頭を掻きながら言う。
「心配してくれてありがとう」
「送ってもらいます」
うつむきかげんで言った。太一の心づかいが嬉しい。
「はい」
成宮は、自転車を取りに行って、自転車を押しながらこっちに向かってくる。
「じゃあ、帰ろう」
自転車を押す成宮と小桜は無言で歩いている。
成宮の方から、話始めた。
「春花佳織ってどんな子なの」
「見た目は地味で性格もどっちかというと暗い感じで、でもさ、私とは妙に気が合うんだよね」
「聞いてる音楽とか。そういえばライブ行ったときに、どっちのファンかも被った。団扇をお互いに作って来てさ、同じだった」
「そうなんだ」
「佳織は、自分のことよりも相手のことを考えて動ける奴だったんだ」
周りは夕方で静けさが周りにある。妙に自転車のかたかたなる音に耳が持っていかれそうになる。
「気が合って気づけば一番大切な存在までになる」
今の現実を直視が出来ない。だからこそ、昔の思い出に浸っている。
照れながら言う小桜を見て、成宮はいいなと感じる。
「大好きだったんだね、春花さんのこと」
「うん」
「何か涙出てくる」
佳織のことを考えると泣けてくる。周りが一層静かに聞こえていた。それが、小桜の心に反応している。
「ちょっと待って」
成宮は鞄からハンカチを小桜に手渡す。
「ありがとう」
そういつもそうだ、成宮はやさしい。
急に寒気がした、振り向くと小桜たちの後ろに女の人が立っている。
三十代くらいのお姉さんという感じで、見た目もよく頭がよさそうに見える。
何も話さずにこちらに短剣を投げる。
短剣が小桜の足に刺さる。
「ああああ」
声にならない痛みが全身に走る。
痛みで小桜は動けない。
でも、必死に遠ざかろうとしている。
「早く逃げろ、小桜」
「男の俺が逃げてどうする」
ゆっくりと女性は近づいてくる。
大声を出し女性の方へ成宮が殴りかかる。
「私のね、憎悪があんたを殺せって言ってるの」
「ごめんね」
「大好きだった。太一君」
女の人は言葉を発する声に悲しみが込められていた。
「えっ」
成宮は自分の名前を呼ばれたことに驚きを隠せなかった。しかし、それを頭で処理している間に、女性の攻撃が成宮を貫いた。
もう一つの短剣で首を切った。
小桜はわけが分からない。
「どうして」
「どうして」
「どうして」
「こんな状況が現実なの」
「きっと、夢よ」
「幻なんだ」
その言葉を話し自分が置かれている状況より逃避を選ぼうとしている。しかし、現実に引き戻される。顔は涙で溢れている。どうしようもない悲しみの中で存在している。
「ようやく自我が目覚めた」
この言葉に何が含まれているか、今の小桜には到底考えが及ばない。
「私はね春花佳織なの」
小桜は、意味が分からない。
「憎悪になったの」
髪をくるくるしながら話している。
「それより大好きだった人が二人いて一人は死んじゃった。私が殺したの。もう一人は貴方」
「私を殺すの」
表情は恐怖に満ち満ちている。
ああ、こういう顔もするんだと心の中で春花は楽しんでいる。
「貴方が好きだから」
この時に考えがまとまらなかったが、向こうの意見を信じることにする。
「待って、止めて」
恐怖という感情しかない。
「いい具合に泣くね」
「いつもの強い、貴方はどこへ行ったの」
「そんなあなただから、私は憧れていて、それと同じだけ憎悪を抱いていた」
「知らなかったでしょ、私は、本当は貴方が嫌いなの」
その言葉の裏に隠された大好きが読み取れなかった小桜は恐怖で心が痛い。もしも、春花が言葉を続けるならこうだ。
(貴方はいつも輝いていた。それに比べ私は地味で、言いたいことも言えない。貴方はいいよね、いつも、羨望の眼差しで周りから見られていて)
つまり、春花は小桜に嫉妬しているんだ。
何の感情も載せずに淡々と言葉を連ねていく。
小桜の肩を蹴飛ばす。
「どうこの顔いいでしょ。あんたよりも、可愛いでしょ」
「この体が自分のものになると知って、喜びに震えたわ」
「貴方は貴方じゃない」
小桜は必死に言葉を続ける。
「今日から成瀬咲になったの」
自慢げに話している。話す言葉に感情が含まれてきた。
「この顔でこの体で、この頭で私は未来が開けたの」
「だから、私は貴方を殺すの」
「だって、過去と決別したいじゃない」
「それをあのお方が許してくれた」
泣きひしがれている小桜をよそに期待に胸を含ませている。
「本当に醜くなったのね、佳織」
「佳織ってよばないで」
「いいや、佳織だよ」
怖い気持ちが消えて、佳織の親友として間違った道へ行くことを止めるためだけに言葉を選んでいる。
小桜を突き動かしているのは正義の心だ。
「私が、あの男を好きだったことも知らずにあの男と付き合って」
佳織は感情的になり、体を大きく動かしながら近づいてきた。
「私がどれだけ傷ついていたか。分からなかったじゃない」
言葉は低く声質は冷酷な風に聞こえる。
佳織は胸の辺りを叩きながら話している。
「だから、私は言えなかった、太一が好きって」
「でも、貴方は私に聞いてきた。あれほど、腹が立ったことはなかった。あれほどひどい仕打ちはなかった」
声が一段と大きくなってきた。
「彼も彼で私には見向きもしないで、舞に言い寄ってた」
「私なんかこの世界のどこにも居場所がなかった」
「でもそれは違ったんだ」
「そんな時にあのお方が導いてくれた」
「そう、神様なんだと」
「だから、私は契約をした」
「私は憎悪になると。世界が変わって見える。いつも卑屈な私が今は、貴方と対等に話せる」
息を飲むくらいの激しい佳織からの怒りである。
「私の憎悪は彼に向いたの」
「世の中、男は腐るほどいる」
「だから、貴方に嫉妬していた私は馬鹿なんだって」
佳織は。今から、小桜の命を狩り取ろうと、短剣を右手に持ちかえた。佳織は内に秘めていた舞への怒りを表に出すことですっきりとした気分へと変わっていく。
「いや、貴方を否定する」
舞は。助かりたいから言うのではない。自分の中の貴方を消したくない。今度は小桜が自分の中の春花への怒りを吐露しだした。
「だって親友なんだから。私だって貴方にひかれていたんだから」
「貴方はいつもそう、人の物を欲しがる癖がある。でも、自分からは言い出せないし鈍感だし」
「この際だから私も言うけど」
「そういったもじもじした所、嫌いだから。貴方だって気づいていたでしょ」
感情がそのまま言葉にのって話している。春花に少しでも届くように言葉を選ばずに心のまま話しているように聞こえる。
「何でこんなように変わっちゃったのさ。私達は、いつも一緒だったでしょ。彼氏ができたとか。この服屋さん可愛いって私達で、話すの楽しかったじゃない」
「もうできないんだよ」
なにも考えずに頭に浮かんだ言葉をただ、並べている。これこそ、心からの叫び声である。
「私はもっと佳織と話がしたいんだよ」
「貴方はもう私と話すのも嫌」
真剣な声に真剣な感情を込めた。春花に届きますようにと言葉を選び投げる。
春花佳織の心の声
(そうだ、いつからだろう。舞と比較して勝手に劣等感を感じて、憎悪を募らせてきたのは)
(私は小学生のころ友達がいなくてよく、その輪から外れていた。そんな私を外の世界に連れてくれていたのは貴方だった)
(そうだ、いつからだろう)
(こんなにも気持ちをぶつけられたのは。これが、友達だって)
(言いたいことを隠して嫌でも好きと言って卑屈になり、なんで、こんな付き合い方しかできなかったんだろう)
(そうだ、私は舞の親友だ)
(腹を割って話せばよかったんだ、お互い)
「ごめん」
佳織は、泣きながら地に足を下す。
小桜の所に行こうとしたとき声が聞こえる。
「待ちなさいよ」
「貴方の役目を忘れたんですか」
ピエロの格好で身長は低く子供くらいの身長のハーメルンが現れる。
「貴方に力を渡したのは親友を殺すから渡したのに、気が変わって殺さないのは、なしですよ」
頭を振りながら手を振りながら話している。
「すみません、ハーメルン様」
「でも、もう一度希望が湧いてきたのです。舞とやり直せることが」
地に伏せながら涙をぬぐいハーメルンに意見する。
「だめ」
ハーメルンは。からかう感じで声をのせる。
「殺せないのなら」
手をパチンと鳴らす。
「解体屋」
ハーメルンの横の男に声を投げる。
「はい、ハーメルン様」
格好はイケメンの三十代くらいの今どきのファッションをしている。
「二人を殺しなさい」
「希望を狩り取りなさい」
まるで、子供が駄々を言っている風にハーメルンの声が聞こえる。
「舞は私が守るんだ」
「安心して守るから」
解体屋と春花が応戦している。
春花は、「雨」と書き円で囲み触れる。
雨雲が来て雨が降り出す。もう一度「雨」と書き円で囲み龍と書き触れる。雨粒が寄り集まって龍の形になる。
「行け、水龍神」
解体屋が水龍神の攻撃を避けている。
「雨なんてじとじとして気持ち悪いし陰気で気持ち悪いのを文字として使用する所からして、陰気な女だな」
解体屋はまず、心を折ることから始めている。
「そう、それが私なんだから」
その言葉に肯定をし、自分自身の至らなさを言葉ではっした。
「へえ、怒らないのか」
解体屋は。驚く様子だが、こいつが憎悪を乗り越えたことに賞賛はしないが、称えてもいいかなとは感じている。
「怒らない、それが、私だから。受け入れるんだ」
「それが、未来を創るのならば」
春花は毅然と言い放つ。
「そうか、じゃ、俺の仕事を見せてやるよ」
「解体」と文字を書き円で囲み手に触れて、手に何か分からないものを纏っている。
水龍神に向かっていき。龍の体を解体する。龍がただの雨粒になる。
「これが、俺の憎悪だ」
何が起こったか分からない。
「分からないようだから教えてやるよ。俺の憎悪は解体だ」
「すべての文字や物を解体する憎悪だ」
じゃ、「雨」と書き円で囲み触れる。
「水龍弾」
周りの雨が鋭く尖り幾多の雨粒が解体屋に向かって攻撃をする。
「残念」
すべてを解体しつくした。
「私の憎悪は貴方と違って。今日やそこらで会得した憎悪ではないんです」
「ちゃんと裏付けられた力なんです」
強者の微笑みをしている。
「舞、逃げて」
春花は逃げる方を選択する。
「無理みたい足を怪我してるんだ」
足の怪我はさほどではない、しかし、恐怖で足が動かないんだ。
「ごめんね、私が巻き込んだ」
春花は自ら謝り許してもらいたいという気持ちで溢れていた。
「それよりこの場を乗り切ることを考えて」
「戦って勝てるほど甘くわない」
舞は。今までの空手の大会で何度も味わった、
挑むという感覚。
弱者ゆえの気持ちだ。
「だからこそ、そこに勝機がある」
「向こうは、こちらを三下と考えている。そこに付け入るスキがある。絶対に大丈夫。貴方ならこの場をのり切れるから」
「舞に言われると勇気が湧く」
春花が笑顔になった。
(やっぱり、舞はこうだよね)
「絶対に貴方だけは助けるから」
春花は決意を固めた。
「雨」と書き円で囲み纏いと付加する。体を雨が覆う。そのあと雨のローブがでて体を纏う衣服になる。そのフォームを手に入れたことにより。いっそう二人は激しく応戦している。
勝つか負けるかの勝負の中で守ることを優先している春花佳織は少し、ずれている。
しかし、守るものがあると人は大きく成長する。つまり、強くなるんだ。
春花は追い込まれて、この雨の纏いを考えた。頭がいい春花らしい考え方である。雨、つまり、天候を支配する憎悪はこれほど強い。さっきまでとは違い、春花が優勢である。
「じゃあ、これを使いますか」
解体屋は、手に銃を持ち引き金を引いた。纏いが銃の弾をはじいた。
「これを防ぎますよね」
「なら、こっちはどうでしょう」
銃口が春花から小桜に向けられた。
「雨」と書き円で囲み盾を付加し小桜の周りを透明なシールドで守っている。
「これが、狙い何ですよ」
「そう、貴方は今、極寒に防御服を持たずに裸一貫でいるのと同じですよ。その防護服を他人に貸して自分は裸だ」
「それでも、その子を助けたいんですね」
「何て仲間思い何でしょう」
解体屋は。(そういう奴は、虫唾が走る)
(きれいごとだ)
(人間なんて自分のことしか考えていない自己中である)
(それが、誰かを助ける。そんなあまちゃんを殺すことは楽しいでしょう)
銃の先を小桜に向けつつ春花に近寄る。
解体を変異し剣にした。その剣で春花の肩を突いた。
「あっあああああ」
声にならない声が出た。
「痛いでしょ」
「早く憎悪で自分を守らないと死んじゃいますよ」
また、腹に剣を突き立てた。
「あっああああああ」
「何だ、面白くありませんね」
「そんな奴みすてればいいのに」
剣を抜きつつ言葉を発する。
「見捨てれるわけないじゃない」
「友達なんだ」
解体屋は剣を消し、不満そうな顔でこちらを睨んでいる。
「私は人間の醜い姿が見たかったのに。こんな人間を見たいわけじゃない。こんな甘っちょろい奴は久々に見た。反吐が出る」
春花は、これが私の最後になるんだ。
最後に言わなくっちゃ。
「舞、友達でいてくれてありがとう」
小桜は、春花が死ぬつもりなんだと気づく。
そのあとだった、解体屋が春花の心臓に剣を刺した。
「エクセレント」
「素晴らしい私の憎悪」
解体屋は余韻に浸っている。
「許さない」
小桜は声が自然に出た。
心の中で何度も祈った。何度も叫んだ。親友を殺した奴を殺すと。
声にならない声で何度も泣いた。一瞬のできごとだが、小桜にとっては何年もたっているくらいの出来事である。
「絶対に許さない」
(もしかしたらやり直せたかもしれないのに、希望を摘み取った。許さない。世界を敵にしてでもあいつは撃つ。どんな力でもいい。あいつを殺せる力が欲しい。殺せれば後は要らない)
(悪魔にこの身を捧げてもいい)
(力を私にくれ)
「いいだろう」
どこともなく声が聞こえる。
「力を貸してやるよ」
「その代り」
「取引だ」
「私の記憶を取り戻してくれ」
小桜は何も言わずに決断する。
力を欲すると。
解体屋が銃を私に向ける。
「恐怖で失神したんですか」
「情けないですね」
「まあ、親友が死んだところを見せられて、死を受け入れたんですかね」
「違う」
「受け入れたんだ」
「死をですか」
「憎悪だ」
「まさか、ハーメルン様がお力を加えるわけがない」
「お前」
解体屋の銃を触った。すると銃は無くなり、「銃」の文字を小桜は書いて触れる。
「バン」
「あれ、痛い何だ。この痛みは」
解体屋が目をぱちくりとしている間に小桜は立つ。
痛みがある腹を触りその手を見た。血が出ている。何をした。
解体屋はその場に倒れて、小桜は銃をこちらに向けた。
「あばよ」
解体屋の頭を撃ち抜く。
何が起こったかそれは、小桜の中に憎悪が生まれた。普通ハーメルンによって憎悪にされたのなら死んで体が憎悪になった対象の魂が入る。
しかし、小桜は自我を保ちつつ憎悪と共生している。つまり、小桜の中に別人格が一人いる。
これは、稀なことである。それよりも奇怪なことは、憎悪が憎悪になる器を選んだことだ。
この世界は完璧な世界ではなく不完全な世界である。
つまり、色々なイレギュラーが起こる。それが、今回のことだった。
この状況でハーメルンが観戦していたモードから戦うモードへと変える。憎悪を使うのは体力がいる。今しがた手に入れた。憎悪で体力は使い切ってしまった。その場に倒れる。
ハーメルンは、小桜に話しかけた。
「貴方は一体何者なんです」
「私は」
小桜は、息も絶え絶えに話している。
「お前じゃない」
「憎悪の方だ」
「俺はな、記憶を探すものだ」
小桜と入れ替わり話している。
「そうですか」
「今殺しとかないといけない気がしてくる」
「恨みはありませんが」
笛を剣に変え突き刺そうとした瞬間。
気配を感じる。
ハーメルンは気配の出た所を見ると。杖を突いた情報屋がいる。
「なぜ、お前がここにいる」
「その子を殺すんですか」
お洒落な着物を着ている六十代くらいの人がいた。
「そうだ」
「そうですか」
意味深げに話している。
気配が消え存在も消える。
次に気配が感じた瞬間に。
処刑人が鎌をハーメルンの首元に存在していた。すかさず鎌を手で止める。
「流石ですね」
死刑人の名の通った、情報屋のコードネーム処刑人。
それに、自分の存在を大きくしたり、小さくできるコードネーム存在。
「貴方達二人が出てくるということは。この小桜の中に入った憎悪に関係あるんですか」
「お前は知らなくてもいい。ハーメルン」
口調が冷たく言い放っている。
「ここは、引きましょう」
「アディオス」
ハーメルンは去っていく。
気が飛びそうなくらいになっている小桜には、今どうなっているかが分からない状態である。
言葉で表すと無様である。
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