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第7章
第67話 再来の黒槍
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港の岸壁に、重い着地音が響いた。
石造りの岸壁が狩人の重量で軽く震動し、着地の衝撃がいかに大きいかを物語っている。黒槍の狩人が立っている。その姿は昨夜と変わらず、いや、むしろさらに研ぎ澄まされていた。鎧の継ぎ目からは海水が滴っているが、動きに支障はまったく見られない。
水中での活動にも対応した特殊装備か、それとも魔術的な防護が施されているのか。いずれにせよ、常人では不可能な芸当だった。
海に沈んだというのに、この身のこなし……
筋肉の損傷も、呼吸器への水の侵入も、ほぼゼロ。まるで落下すら計算のうちだったかのような完璧な状態だ。重装甲での海中落下から、なんの問題もなく復帰するなど、人間業とは思えない。
(くそ……完全に復活してやがる)
昨夜の死闘が無意味だったかのように、狩人は万全の状態で再び立ちはだかっている。
狩人は無言のまま槍を構え、港の防衛線を一瞥する。その視線が止まったのは、俺――ではなく、後方のリィナだった。
戦術的な判断で、最も危険な相手を最初に排除しようとしている。彼女こそが、昨夜の戦いで汚染液を暴発させた張本人。狩人にとっては最優先で排除すべき相手だ。
リィナの薬学知識が、黒羽同盟にとって最大の脅威であることを理解している。
「狙いはリィナだ! バルグ、正面を塞げ!」
「任せろ!」
バルグが巨斧を構えて狩人の前に立つ。
重装戦士同士の対峙で、まさに力と力のぶつかり合いが始まろうとしている。しかし狩人は踏み込みの一歩で、まるで風のように間合いを詰めてきた。巨斧が受け止めた瞬間、金属同士がぶつかる轟音が響き、バルグが半歩押し戻される。
バルグの怪力をもってしても、狩人の攻撃を完全には受け止められない。
(やっぱりパワーも速度も化け物級だ……)
昨夜の戦いでも感じた狩人の異常な身体能力が、今回も健在だった。
◆
俺は空へ舞い上がり、上から戦場全体を俯瞰する。
空中からの視点で、戦況を正確に把握し、適切な指示を出すことが重要だ。狩人の動きは直線的だが、その一撃は致命的。回避が遅れれば一瞬で終わる。
しかし、完璧に見える敵にも必ず弱点は存在するはずだ。ただし、あの重装鎧では持久戦に弱いはずだ。ならば、消耗戦に持ち込む。
長期戦に持ち込めば、重装備のデメリットが表面化する可能性がある。
「バルグ、右回りで誘導しろ! リィナは左へ下がって障害物の影!」
高所からの指示で、二人の位置を入れ替えるように動かす。狩人の槍は長く、横の動きには強いが、縦方向の連続追撃は苦手だ。そこを突く。
武器の特性を理解し、その弱点を突く戦術的アプローチだった。
だが、狩人も学習している。
昨夜の戦いから、俺たちの戦術パターンを分析しているようだ。俺が風を起こして視界を乱そうとした瞬間、槍の柄で地面を叩き、砂埃を逆にこちらへ巻き上げた。
同じ戦術は二度通用しないということを、身をもって示している。
(しまった……逆風利用か!)
砂埃で一瞬視界を奪われる。その隙に、狩人はリィナへと一直線に迫った。
わずかな隙を見逃さない、プロフェッショナルな戦闘技術だった。
「くっ……!」
彼女が瓶を構えるより早く、槍の穂先が閃く――
リィナの生命が危険にさらされる瞬間だった。
◆
その瞬間、俺は急降下し、狩人とリィナの間を横切った。
仲間を守るため、危険を顧みずに割って入る。翼で生じた風圧が槍の角度をわずかに逸らし、穂先は地面を抉るに留まる。
間一髪のタイミングで、致命的な攻撃を阻止することができた。
「今だ、リィナ!」
反撃のチャンスを作り出し、リィナに指示を出す。
彼女は即座に後方へ下がり、用意していた白煙瓶を投げつける。
港の一角が煙に包まれ、狩人の視界が遮られる。視界妨害により、一時的に戦況を有利にすることができた。
煙越しに見えるその影は、まったく動じず槍を構え直していた。
予想外の妨害を受けても、狩人の冷静さは微塵も揺らがない。黒槍の狩人――やはり、この男は一筋縄ではいかない。
これまで戦った敵の中でも、最強クラスの実力者であることは間違いない。
(こいつをここで足止めしなきゃ、港は終わる)
狩人を野放しにすれば、港の防衛線は瞬く間に突破されてしまう。船団の残りも着岸に向けて迫っている。
複数の脅威に同時対処しなければならない、極めて困難な状況だった。時間を稼ぎつつ、仲間と連携して狩人を封じ込めるしかない。
第二幕の戦いが、本格的に始まった。
昨夜以上に過酷な戦いになることは確実で、俺たちの連携力が真に試される時が来た。しかし、昨夜の勝利という経験があり、仲間との絆も深まっている。
どれほど強大な敵であろうと、三人が力を合わせれば必ず勝利できるはずだ。
港町の住民たちの命を守るため、俺たちは最後まで戦い抜く。朝の光が戦場を照らす中、運命を分ける戦いが続いていく。
狩人の槍が再び振るわれ、バルグの斧がそれを受け止める。金属音が響く中、俺は次の攻撃機会を狙って空中を舞った。
リィナも煙の陰から、狩人の動きを注視している。三人の連携で、この最強の敵を必ず打ち破ってみせる。
石造りの岸壁が狩人の重量で軽く震動し、着地の衝撃がいかに大きいかを物語っている。黒槍の狩人が立っている。その姿は昨夜と変わらず、いや、むしろさらに研ぎ澄まされていた。鎧の継ぎ目からは海水が滴っているが、動きに支障はまったく見られない。
水中での活動にも対応した特殊装備か、それとも魔術的な防護が施されているのか。いずれにせよ、常人では不可能な芸当だった。
海に沈んだというのに、この身のこなし……
筋肉の損傷も、呼吸器への水の侵入も、ほぼゼロ。まるで落下すら計算のうちだったかのような完璧な状態だ。重装甲での海中落下から、なんの問題もなく復帰するなど、人間業とは思えない。
(くそ……完全に復活してやがる)
昨夜の死闘が無意味だったかのように、狩人は万全の状態で再び立ちはだかっている。
狩人は無言のまま槍を構え、港の防衛線を一瞥する。その視線が止まったのは、俺――ではなく、後方のリィナだった。
戦術的な判断で、最も危険な相手を最初に排除しようとしている。彼女こそが、昨夜の戦いで汚染液を暴発させた張本人。狩人にとっては最優先で排除すべき相手だ。
リィナの薬学知識が、黒羽同盟にとって最大の脅威であることを理解している。
「狙いはリィナだ! バルグ、正面を塞げ!」
「任せろ!」
バルグが巨斧を構えて狩人の前に立つ。
重装戦士同士の対峙で、まさに力と力のぶつかり合いが始まろうとしている。しかし狩人は踏み込みの一歩で、まるで風のように間合いを詰めてきた。巨斧が受け止めた瞬間、金属同士がぶつかる轟音が響き、バルグが半歩押し戻される。
バルグの怪力をもってしても、狩人の攻撃を完全には受け止められない。
(やっぱりパワーも速度も化け物級だ……)
昨夜の戦いでも感じた狩人の異常な身体能力が、今回も健在だった。
◆
俺は空へ舞い上がり、上から戦場全体を俯瞰する。
空中からの視点で、戦況を正確に把握し、適切な指示を出すことが重要だ。狩人の動きは直線的だが、その一撃は致命的。回避が遅れれば一瞬で終わる。
しかし、完璧に見える敵にも必ず弱点は存在するはずだ。ただし、あの重装鎧では持久戦に弱いはずだ。ならば、消耗戦に持ち込む。
長期戦に持ち込めば、重装備のデメリットが表面化する可能性がある。
「バルグ、右回りで誘導しろ! リィナは左へ下がって障害物の影!」
高所からの指示で、二人の位置を入れ替えるように動かす。狩人の槍は長く、横の動きには強いが、縦方向の連続追撃は苦手だ。そこを突く。
武器の特性を理解し、その弱点を突く戦術的アプローチだった。
だが、狩人も学習している。
昨夜の戦いから、俺たちの戦術パターンを分析しているようだ。俺が風を起こして視界を乱そうとした瞬間、槍の柄で地面を叩き、砂埃を逆にこちらへ巻き上げた。
同じ戦術は二度通用しないということを、身をもって示している。
(しまった……逆風利用か!)
砂埃で一瞬視界を奪われる。その隙に、狩人はリィナへと一直線に迫った。
わずかな隙を見逃さない、プロフェッショナルな戦闘技術だった。
「くっ……!」
彼女が瓶を構えるより早く、槍の穂先が閃く――
リィナの生命が危険にさらされる瞬間だった。
◆
その瞬間、俺は急降下し、狩人とリィナの間を横切った。
仲間を守るため、危険を顧みずに割って入る。翼で生じた風圧が槍の角度をわずかに逸らし、穂先は地面を抉るに留まる。
間一髪のタイミングで、致命的な攻撃を阻止することができた。
「今だ、リィナ!」
反撃のチャンスを作り出し、リィナに指示を出す。
彼女は即座に後方へ下がり、用意していた白煙瓶を投げつける。
港の一角が煙に包まれ、狩人の視界が遮られる。視界妨害により、一時的に戦況を有利にすることができた。
煙越しに見えるその影は、まったく動じず槍を構え直していた。
予想外の妨害を受けても、狩人の冷静さは微塵も揺らがない。黒槍の狩人――やはり、この男は一筋縄ではいかない。
これまで戦った敵の中でも、最強クラスの実力者であることは間違いない。
(こいつをここで足止めしなきゃ、港は終わる)
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複数の脅威に同時対処しなければならない、極めて困難な状況だった。時間を稼ぎつつ、仲間と連携して狩人を封じ込めるしかない。
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港町の住民たちの命を守るため、俺たちは最後まで戦い抜く。朝の光が戦場を照らす中、運命を分ける戦いが続いていく。
狩人の槍が再び振るわれ、バルグの斧がそれを受け止める。金属音が響く中、俺は次の攻撃機会を狙って空中を舞った。
リィナも煙の陰から、狩人の動きを注視している。三人の連携で、この最強の敵を必ず打ち破ってみせる。
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