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第7章
第66話 再び迫る黒き影
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朝の光に照らされた港町の海面が、不穏な影で覆われていく。
穏やかだった朝の海が、次第に緊張感に満ちた戦場へと変貌していく。北の沖合から、黒い外套を掲げた船団がじわじわと近づいていた。数は……ざっと見積もって五隻。昨夜の戦闘で失った戦力を補うどころか、それ以上の規模で押し寄せてくる。
黒羽同盟の組織力と資金力を改めて思い知らされる光景だった。一夜にしてこれほどの戦力を結集できるということは、本拠地の規模は想像以上に大きいのだろう。
俺は高く舞い上がり、空から船団を観察した。
上空からの偵察で、敵の戦力と装備を詳細に把握する必要がある。上空からの視界は広い。船の甲板には多数の兵士、その中には魔導装置らしきものを操作する者も見える。さらに、甲板中央に覆いをかけられた大型の樽――嫌な予感しかしない。
昨夜の戦いで学習した敵が、より強力な装備で再襲来してきている。
(……昨夜の汚染液だ。しかも数が桁違い)
触れられなくても、嗅覚が微量の揮発成分を拾っている。鷲の鋭敏な感覚が、遠距離からでも危険物質の存在を感知している。昨夜のものより濃い、刺すような刺激臭が海風に混じっていた。
改良された汚染兵器を積んでいる可能性が高く、被害はさらに深刻になる恐れがある。
港の防衛隊長が叫ぶ。
「町の防衛線を敷け! 弓隊は南岸へ、投石部隊は高台に!」
迅速な対応で防衛態勢を整えようとしているが、港町は昨夜の被害で戦力を削られている。連戦となれば、住民の避難と防衛を同時進行する必要がある。
人員不足と装備の制約が、防衛作戦を困難にしている。
◆
「リィナ、あの樽……やばいぞ。あれを港に近づけるな」
「分かってる! でも船まで届く火力が……」
「だったら、誘導だ」
直接攻撃が困難なら、別の方法で敵を阻止する必要がある。
俺は港の外れまで飛び、海面すれすれを高速で滑空する。
低空飛行による風圧を利用して、敵船の進路を妨害する作戦だった。翼で巻き起こす風が波を乱し、船団の一部が進路を変える。黒羽同盟の操舵手が、目の前の水柱や突風に驚き、わずかに速度を落とす。
予想通りの効果で、敵の侵攻速度を遅らせることに成功した。
その瞬間、バルグの投げた大石が船首を直撃し、船の進行がさらに鈍った。
絶妙なタイミングでの連携攻撃が、敵にダメージを与えている。
「おお、効いたな!」
「だから言っただろ、的を作ってやるって!」
バルグとの息の合った連携が、劣勢な状況でも有効な攻撃を可能にしている。直接攻撃はできないが、敵の注意と進路を操作するのは俺の役目だ。
空中からの支援で、地上部隊の攻撃精度を向上させることができる。
◆
だが、敵もただ遅れるだけではない。
黒羽同盟も昨夜の戦いから学習しており、対策を講じてきている。船団の一隻から、黒い外套の指揮官らしき人物が魔導装置を展開した。海面に黒い霧が広がり、視界が急速に奪われていく。
魔術的な霧で、物理的な攻撃だけでなく視界妨害も組み合わせてきた。
(これは……視界妨害と毒霧の併用か)
単純な煙幕ではなく、毒性を持った霧による複合攻撃だった。港町の防衛線が霧に包まれれば、敵の上陸を防げない。俺は急いで霧の発生源へ向かい、甲板上の魔導器に接近した。
危険を承知で敵船に接近し、霧の拡散を阻止しようとする。
直接壊すことはできない。だが、翼で風向きを変え、霧を船団側へ押し返すことはできる。
物理的な破壊ではなく、環境操作による対抗策を実行する。
船上の兵士たちが突然の逆風に翻弄され、霧が自軍側を覆って混乱が広がる。
敵の戦術を逆利用し、自爆的な状況を作り出すことに成功した。その隙をつき、リィナの投擲した火薬瓶が霧の中で爆ぜた。甲板が炎に包まれ、敵の指揮が乱れる。
チームワークによる連続攻撃で、敵の戦術を無効化している。
◆
しかし、まだ油断はできない。
これまでの攻撃で敵にダメージは与えたが、決定打には至っていない。船団の後方、最も大きな一隻の甲板に――見覚えのある黒い槍の影が立っていた。
最悪の予感が現実となって現れた瞬間だった。
(……やっぱり、生きてたか)
海に沈んだはずの黒槍の狩人が、傷跡もほとんど見せずにこちらを見据えている。
重装甲での海中落下から生還するという、常識では考えられない生存力を見せている。あの眼光は、昨夜と同じく一切揺らいでいなかった。
敗北を経験してもなお、戦士としての意志は微塵も折れていない。
次の瞬間、奴が大きく跳躍し、港の岸壁めがけて飛び込んできた。
魔術的な身体強化により、人間離れした跳躍力を発揮している。
「バルグ! リィナ! 狩人来るぞ!」
仲間に緊急警告を発し、最強の敵の再来に備える。
再び、港町を揺るがす戦いの幕が上がった。
昨夜以上に困難な戦いになることは確実で、三人の結束がこれまで以上に試されることになる。黒槍の狩人という最強の敵と、増強された黒羽同盟の戦力。
しかし、俺たちには昨夜の勝利という経験と、揺るぎない仲間との絆がある。どれほど強大な敵が現れようとも、港町と住民を守り抜いてみせる。
朝日を背に受けながら、俺たちは再び戦いの渦中へと身を投じた。終わりなき戦いの中で、真の平和を掴むために。
穏やかだった朝の海が、次第に緊張感に満ちた戦場へと変貌していく。北の沖合から、黒い外套を掲げた船団がじわじわと近づいていた。数は……ざっと見積もって五隻。昨夜の戦闘で失った戦力を補うどころか、それ以上の規模で押し寄せてくる。
黒羽同盟の組織力と資金力を改めて思い知らされる光景だった。一夜にしてこれほどの戦力を結集できるということは、本拠地の規模は想像以上に大きいのだろう。
俺は高く舞い上がり、空から船団を観察した。
上空からの偵察で、敵の戦力と装備を詳細に把握する必要がある。上空からの視界は広い。船の甲板には多数の兵士、その中には魔導装置らしきものを操作する者も見える。さらに、甲板中央に覆いをかけられた大型の樽――嫌な予感しかしない。
昨夜の戦いで学習した敵が、より強力な装備で再襲来してきている。
(……昨夜の汚染液だ。しかも数が桁違い)
触れられなくても、嗅覚が微量の揮発成分を拾っている。鷲の鋭敏な感覚が、遠距離からでも危険物質の存在を感知している。昨夜のものより濃い、刺すような刺激臭が海風に混じっていた。
改良された汚染兵器を積んでいる可能性が高く、被害はさらに深刻になる恐れがある。
港の防衛隊長が叫ぶ。
「町の防衛線を敷け! 弓隊は南岸へ、投石部隊は高台に!」
迅速な対応で防衛態勢を整えようとしているが、港町は昨夜の被害で戦力を削られている。連戦となれば、住民の避難と防衛を同時進行する必要がある。
人員不足と装備の制約が、防衛作戦を困難にしている。
◆
「リィナ、あの樽……やばいぞ。あれを港に近づけるな」
「分かってる! でも船まで届く火力が……」
「だったら、誘導だ」
直接攻撃が困難なら、別の方法で敵を阻止する必要がある。
俺は港の外れまで飛び、海面すれすれを高速で滑空する。
低空飛行による風圧を利用して、敵船の進路を妨害する作戦だった。翼で巻き起こす風が波を乱し、船団の一部が進路を変える。黒羽同盟の操舵手が、目の前の水柱や突風に驚き、わずかに速度を落とす。
予想通りの効果で、敵の侵攻速度を遅らせることに成功した。
その瞬間、バルグの投げた大石が船首を直撃し、船の進行がさらに鈍った。
絶妙なタイミングでの連携攻撃が、敵にダメージを与えている。
「おお、効いたな!」
「だから言っただろ、的を作ってやるって!」
バルグとの息の合った連携が、劣勢な状況でも有効な攻撃を可能にしている。直接攻撃はできないが、敵の注意と進路を操作するのは俺の役目だ。
空中からの支援で、地上部隊の攻撃精度を向上させることができる。
◆
だが、敵もただ遅れるだけではない。
黒羽同盟も昨夜の戦いから学習しており、対策を講じてきている。船団の一隻から、黒い外套の指揮官らしき人物が魔導装置を展開した。海面に黒い霧が広がり、視界が急速に奪われていく。
魔術的な霧で、物理的な攻撃だけでなく視界妨害も組み合わせてきた。
(これは……視界妨害と毒霧の併用か)
単純な煙幕ではなく、毒性を持った霧による複合攻撃だった。港町の防衛線が霧に包まれれば、敵の上陸を防げない。俺は急いで霧の発生源へ向かい、甲板上の魔導器に接近した。
危険を承知で敵船に接近し、霧の拡散を阻止しようとする。
直接壊すことはできない。だが、翼で風向きを変え、霧を船団側へ押し返すことはできる。
物理的な破壊ではなく、環境操作による対抗策を実行する。
船上の兵士たちが突然の逆風に翻弄され、霧が自軍側を覆って混乱が広がる。
敵の戦術を逆利用し、自爆的な状況を作り出すことに成功した。その隙をつき、リィナの投擲した火薬瓶が霧の中で爆ぜた。甲板が炎に包まれ、敵の指揮が乱れる。
チームワークによる連続攻撃で、敵の戦術を無効化している。
◆
しかし、まだ油断はできない。
これまでの攻撃で敵にダメージは与えたが、決定打には至っていない。船団の後方、最も大きな一隻の甲板に――見覚えのある黒い槍の影が立っていた。
最悪の予感が現実となって現れた瞬間だった。
(……やっぱり、生きてたか)
海に沈んだはずの黒槍の狩人が、傷跡もほとんど見せずにこちらを見据えている。
重装甲での海中落下から生還するという、常識では考えられない生存力を見せている。あの眼光は、昨夜と同じく一切揺らいでいなかった。
敗北を経験してもなお、戦士としての意志は微塵も折れていない。
次の瞬間、奴が大きく跳躍し、港の岸壁めがけて飛び込んできた。
魔術的な身体強化により、人間離れした跳躍力を発揮している。
「バルグ! リィナ! 狩人来るぞ!」
仲間に緊急警告を発し、最強の敵の再来に備える。
再び、港町を揺るがす戦いの幕が上がった。
昨夜以上に困難な戦いになることは確実で、三人の結束がこれまで以上に試されることになる。黒槍の狩人という最強の敵と、増強された黒羽同盟の戦力。
しかし、俺たちには昨夜の勝利という経験と、揺るぎない仲間との絆がある。どれほど強大な敵が現れようとも、港町と住民を守り抜いてみせる。
朝日を背に受けながら、俺たちは再び戦いの渦中へと身を投じた。終わりなき戦いの中で、真の平和を掴むために。
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