【R18】異世界転移少女、イケオジと猫耳プレイする

チーズたると

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 ドドドドッと、扉がすさまじい速度でノックされた。

「あけろよトール! あけてくれねぇと、あした城でお前の変な噂しこたま流すぞ! いいのか!」

 外からの声を聞き、ノアが困惑に眉根を寄せる。

「ずいぶんと……主張の激しい幻聴ですけど……」
「そんなこともあろう。気にすることはない。お前も、なにも聞かなかったことに――」

 そう言いながら、玄関に背を向けた直後だった。

 背後から魔力の存在を感知し、振り返ると、玄関扉の表面に淡く光る魔法陣が刻まれているのを視認する。

 その魔法陣が消えたのと同時に、カチャリと小さな音が響いた。ドアの鍵があけられた音なのだと、すぐに気が付いた。

 そうして、扉は家主に施錠された事実などすっかり忘れて、軽やかにひらく。
 ひらいたドアの向こうからは、忌々しいほどに明るい声が聞こえてきた。

「いやー、ロック解除の魔法がこんなところでも役に立つとはな! 不法侵入になっちまうけど、同僚を問答無用で追い出すほうが悪いから、まぁ仕方ねーよなぁ。これに懲りたら、トールも鍵かけるなんて無駄な足掻きはせずに――」

 扉から入ってきた人物の台詞が、途中で途切れる。彼の瞳は、ヴィクトールの後ろにいるノアに釘付けとなっていた。

 ヴィクトールは後悔する。目の前の男に、彼女の存在を知られたくはなかった。
 目をしばたたいた彼が、戸惑い気味の指先でおそるおそるノアを指す。

「……トール、お前……」
「ナツ、これには事情が――」

「なんだよ、隠し子がいるならもっと早く言えよ~~~! びっくりしたじゃねーか~~~!」
「違う」

 笑顔で盛大に誤解をした男にヴィクトールは否定の言葉を返したが、聞いてはもらえなかった。

 そんなわけで、結局ヴィクトールは彼の誤解を解くために、相手を自宅に招き入れることとなったのである。

 大変、不本意ではあるが。
 ――大変、不本意ではあるが。





 リビングのテーブルについた客人に、ヴィクトールは自らコーヒーを入れて相手に手渡した。
 彼は嬉しそうにマグカップを受け取り、それにくちをつける。

「お、さんきゅー。って、あっついなコレ!」

 唇をつけた瞬間、男は驚愕に目を見開いた。ヴィクトールは淡々と謝る。

「そうか、すまなんだ。わざとではない」
「嘘つけ! 殺意を感じる熱さだぞ!」

「…………」
「目を逸らすな!」

 ふたりのやり取りを、ノアが戸惑いの眼差しで見ていた。仕方なく、ヴィクトールは彼女に目の前の男を紹介する。

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