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しおりを挟む「なんだよ、信用ねーなぁ。妙なものどころか、お前の日々の疲れが取れるように特性の魔術を施したんだぜ」
「そら見ろ、妙なものが入っているではないか。そんな危ないものが飲めるか。持って帰れ」
「えー、ひでぇ」
ヴィクトールの言葉に、ナツネは心外だとでも言いたげな声を出した。
ノアが瓶を手に取り、ふたりをなだめる。
「ヴィ、ヴィクトールさん、私が味見してみますから」
言いながら、彼女はさっそく瓶の蓋をあけると、その中身を側のグラスに注ぎ始めた。中身は、オレンジ色の液体である。
「おい、よせ」
「だから、ほんとに変なもんなんか入れてねぇって」
「信用できるか」
ヴィクトールとナツネが言い合っているあいだに、ノアはグラスに注いだものを一気に飲み干した。その飲みっぷりは見ていて気持ちがいいほどで、相変わらず妙なところで豪胆な娘だと、改めて思う。
飲み終えたノアは、笑顔をナツネに向けた。
「おいしいです。これ、本当にナツネさんが作ったんですか?」
「そうだぞ。俺がトールのために、心をこめて作ったんだ」
「気持ち悪いからやめろ」
胸を張って誇らしげに答えるナツネに、ヴィクトールは顔を顰めて反論する。
ナツネは親指でヴィクトールを指さし、ノアに続けた。
「こいつ、こんなんだから友達少なくてなぁ。だから、俺がかまってやってるっつーわけ」
「友人が少ないのはお互い様だろうが。破天荒すぎるせいでお前にひとが寄り付かんこと、儂が知らんと思うか」
「天才は孤独なもんだから、しょうがねーんだよ。なにせ頭の出来が違うから、そもそも周りと話が合わねぇ」
指先で自身のこめかみを軽く叩きながら、彼は言う。
ヴィクトールはノアに向き直った。
「ノア、なんともないか。吐き気がしたり頭痛がしたり寒気がしたり眩暈がすることはないか?」
「俺そんなに信用されてねぇの? ほんとに?」
ナツネがいくらかショックを受けたふうな声を出したが、聞こえないふりをする。
ノアは笑顔で返答した。
「はい、なんともありませんよ。とってもおいしいジュースです。ヴィクトールさんもどうぞ」
言って、彼女はグラスにまた瓶の中身を注ぎ始める。
ヴィクトールは内心で歯噛みした。飲みたくない、というのが正直なところであったが、ノアが飲んだ手前、自分が飲まないわけにはいかない。
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