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 メルウィンの返答を聞いたラックが「ぬぬ……」と唸った。
 顔を渋くしながら、ザルフィナも「……少しばかり耳が痛いですね……」と零す。どうやら、ふたりは精神的にダメージを与えられている様子だった。

 ミサはザルフィナを窺いながら続ける。

「だから、私から要求するものは、キレッドの街の復興のお手伝い以外はとくにありません。……もう、この世界と別の世界を繋ごうとするような真似はやめてほしい――とは、思いますが」

 これに、ザルフィナは黙って俯いた。
 メルウィンが小首を傾げながら訊く。

「おや、どうしたんだい。しょんぼりして。まさか、まだ諦めきれないのかい?」
「と、いうより……私はこれから、この世界とどう向き合っていけばよいのか、と――」

 ぺしん、とメルウィンがザルフィナの頭を軽く叩いた。
 ザルフィナは驚いた表情で、メルウィンを見返す。

「なっ……あ、あ、あなたはなにを……!」
「だから、そうやって生真面目に考えすぎちゃうところがよくないんだってば」

「べつに、生真面目に考えているつもりはありません。単にあなたが不真面目すぎるのではないですか」

「まぁ、それも否定しないけど。だけどさ、ザルフィナくんってあれだよね。優秀だからっていうのも無関係じゃないんだろうけど、基本的に自分ひとりでぜんぶ解決しようとするよね。

 真面目な上にひとに頼ることも甘えることも苦手って……よくこれまでやってこれたよねぇ。いや、優秀だから【やってこれちゃった】のか」

「……なにが言いたいのですか」
「単刀直入に言って、魔術師ひとりで世界を変えようとするのは限度があるよ」

 この発言に、ザルフィナは目を見張った。
 彼はメルウィンの胸ぐらを掴む。

「あなたは……っ! 私を、侮辱するのですか? 私のおこないは、すべて無駄だったと――」
「そうじゃない、そうじゃない」

 厳しい剣幕で前のめりになるザルフィナに対し、メルウィンは両手をあげて降参のポーズをとった。

 次いで、彼はザルフィナのひたいを人差し指で軽くつつく。
 ザルフィナは毒気を抜かれながら、上目遣いで自身のひたいを突く指を見た。

「……な、なんですか」
「この世界の魔術師は、君ひとりじゃないだろう」

「……は?」
「あーもう、君って頭はいいはずなのに、根本的なところでちょっとおバカさんだよね」

「バカ? 今、バカと言いましたか? この私に? 魔術師でもトップクラスの実力を持った、この私をバカだと?」
「ああ、言ったよ。おバカさん。君ってば本当におバカさんだ」

 メルウィンの台詞に、ザルフィナは絶句する。おそらく、今までこんなにもバカと言われた経験がなかったのだろう。


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