54 / 67
31
しおりを挟む「ふぁ、ん……っ。おっぱい、いじめないでください……!」
「そういうわりには、嫌がっているふうには見えんがな」
指摘され、乃亜の顔が耳まで熱くなる。
ヴィクトールの言ったことは、おそらく――間違ってはいない。
乃亜はきっと、どんなに恥ずかしくても、苦しいほどの快楽でも、心の底からは嫌がっていない。
だが、それは相手が彼だからだ。
ヴィクトールにならば、なにをされてもかまわなかった。
けれど、その感情をうまく言葉にすることが出来ない。掴みかけた感情は、乃亜の指の隙間からするりと抜けて、また眼前を漂った。
だから、秘めた想いを込めて、自身の胸に触れているヴィクトールの手に、乃亜は己の手を重ねる。
すると、彼が目を瞬かせた。次いで、なにかを察したふうに瞳を細めて、突き上げる動作をいっそう激しくする。
これは、乃亜を攻め立てるだけの動きではなく、自身の絶頂を目指す動きだ。
乃亜の深奥に――白濁を注ぐための動きだ。
「ンぁっ、あっ、ぁああッ! ヴィクトールさん、ヴィクトールさん……!」
なにを求めてか、乃亜の声帯が我知らず彼の名前を呼ぶ。
両目からは涙が止まることなく零れ落ち、もうここが屋外であることなど微塵も気にならない。
わかるのは、ヴィクトールのことだけだ。彼の眼差しや、体温、与えてくれる愉楽。乃亜の知覚するすべてが、ヴィクトールに直結している。
彼が、唇だけで乃亜の名前をくちにした。眉間にしわを刻んでいるヴィクトールの表情に、余裕はない。限界が近いのだろう。
汗ばむ彼の手に、同じく汗ばんでいる自身の乳房が吸いつくようだった。
ふたりの肌の境界線が、わからなくなっていく。
わからなくなっていく事実に、形容し難い幸福を覚えた。
「ぁんっ、ふぁあアッ! も、イくっ、イッちゃいます! 私……ッ」
「……っ、ああ」
声を絞り出したヴィクトールが、そのまま絶頂を迎える。
大量の熱い粘液が、乃亜の最奥に叩きつけられた。
乃亜は悲鳴だか泣き声だかわからない声をあげて、彼を追い、再び絶頂を迎える。
肩が、腰が、膝が、荒波のような快感にガクガクと跳ねた。
痙攣する秘部は、注がれる精液を悦んでいる。
依然としてヴィクトールに揉まれたままの乳房は、未だに乳首を赤く尖らせていた。
うまく呼吸が出来なくなって、乃亜の目が眩む。
それなのに、自身を満たしているのは苦痛ではなく、恍惚だった。彼と一緒に絶頂を迎えることが出来たのが、単純に嬉しい。
32
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる