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しおりを挟むすらすらと述べた秋人を、悠也は感嘆たる思いで見た。
「……な、なるほど……。お前……ミステリー書く才能があるんじゃないか……?」
「悠也くん、脚本家を目指してるんだったら、これくらいの発想は自分ひとりでしてほしいな。勉強不足なんじゃない?」
「ぐぬぬ……!」
原稿を悠也に返しながら、秋人は続ける。
「もしくは、単純にミステリーを書くのに向いてないとかね。君の性格を考えると、なんかこう、騒がしいタイプのエンターテイメントって感じの作風のほうが合ってる気がするよ」
「それは、なんとなく自分でも思う。思う! けど! 色々な作品を書けるようになりたいじゃないか! 色々なジャンルを書けるほうが、絶対に楽しいだろう⁉」
「まぁ……否定はしないよ。僕は脚本家を目指したことがないから、細かい部分はよくわからないけど」
それに――と、悠也は拳を握った。
「色々なジャンルを書くことで、自分の柔軟性を鍛えたい! 『あの脚本家のシナリオっていつもこんな感じだよね~』とか言われたくない‼」
「やけに真に迫った嘆きだけど、なにがあったかは訊かないであげるよ」
「よし!」と悠也は声に出して、腕を組む。
「ありきたりな作品だったとしても、これで一応ミステリーも書いたな! 次は……なに書くかな……」
「柔軟性を鍛えるのが目的なら、得意なジャンルとは方向性が違ったほうがいいよね。恋愛ものとかは?」
秋人の言葉に、悠也は一瞬かたまった。次いで、己の耳が急速に熱くなっていくのを自覚する。
「なっ……! れ、れ、恋愛ものだと……⁉」
「どうせ、彼女もいたことないんでしょ? 悠也くんデリカシーなさそうだもんね」
「いや普通に失礼だろ! あと彼女くらい居たことあるわ! 中学生の頃だけど! 一週間でフラれたけど! やめろ思い出させるな‼」
「可哀想に……」
「本気っぽく同情するのもやめろ‼」
「キスは? した?」
「これ以上、俺の心の傷を抉ろうとするなよ! ないよ‼」
「そっか、ないんだ」
屈辱に身を仰け反らせながら、悠也は秋人を指さして叫んだ。
「どうせ俺はお前と違ってモテないよ! バレンタインだって義理チョコしか貰ったことないし!」
「僕のお裾分けがあったじゃない」
「バカ野郎! 男からのお裾分けを前向きにカウント出来るか! 心がズタズタになるわ!」
そんな言葉を発しながらも、すでに悠也の心はズタズタである。
しかし、目の前の男はそんな悠也の傷だらけになった心を冷めた目で眺めながら言う。
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