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しおりを挟む「魔法でなんとかすりゃいいだろ。じわじわ相手の体力奪うとか」
「そういう回りくどい魔法、苦手なのよ私。っていうか、けっこう陰湿なこと言うのね」
「狩りをするには、まぁまぁ重宝する魔法だからな」
「ああ、なるほど」
そこで、シャールは首を傾げる。
「しかし、なんだってそんな簡単に婚約破棄なんてされるんだ。ちゃんと理由があって政略結婚してるはずじゃねーのか? 俺もあんまりそういったことは詳しくねぇけどよ」
「まぁ、私の国とレイディン国の友好のためっていうのもあるけど、たぶん一番の理由は私が魔法を使えるってことでしょうね。魔法を使えるやつを身内に置きたい見栄よ、見栄」
魔法が使えるか否かは、基本的に産まれた段階で決まる。ようは、素質の問題なのだ。
故に、その素質がなければどれだけ努力を積み重ねたところで、魔法が使えることは一生ない。
加えて、魔法の素質を持って生まれる者は稀だ。そのため、一部の者からは非常に重宝されるのである。
――逆に、一部の者からは恐れられ、忌み嫌われるけれど。
彼は、軽いため息を漏らした。
「はぁー、姫や王子に産まれるのも、それはそれで大変なんだな。でもよ、だったらますます一方的に婚約破棄されんのっておかしくね? 国のお偉いさんは見栄を大事にするもんなんじゃねーのか?」
「レイディン国の国王は、見栄を大事にするほうでしょうね」
「……お前の婚約相手は、そうじゃなかったと?」
「まったく気にしないってわけでもなかったと思うけど、国王ほどはこだわらないタイプだったと思うわ。婚約も、政略結婚として割り切ってる感じだったし、私にもあんまりくちうるさく言わなかったしね。まぁ、そこまで仲良くなかったってのもあると思うけど」
「仲悪かったのか?」
「良いも悪いもなかったのよ。私も政略結婚は割り切ってるタイプだったから、互いに放任主義だったっていうか」
「ずいぶんとドライだな」
「国の王子や姫に産まれた段階で恋愛結婚は難しいんだから、まぁこんなもんでしょ」
「そんなもんか?」
「こんなもんよ」
「だがよ、勝手に婚約破棄なんてしたら、その王子が国王に叱られちまうんじゃねーのか? ようは見栄を潰したわけだろ」
「ギャレオスは、くちが無駄にうまいのよ。私みたいに普段からワガママ放題してるわけじゃないから、性格は悪いけど周囲からの信頼は無駄にあるの」
「ワガママっていう自覚はあったんだな」
「うるさいわね。世界の常識が私の生き様についてこられていないだけよ」
「産まれてくるのが早すぎたってやつか?」
「世界の流れが遅いのよ」
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