もう一度

ツキミヤ

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【著者不明の文献】より

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 この世界は彼女の存在と同時に不滅の場所と約束された。だが、彼女の枷が外れた今、その契約は破棄された。
彼女の存在意義の消失とともにこの世界は徐々に消滅しつつある。
彼女の存在意義の変化によりこの世界は有限であると約束された。
だが、我々人類がこの世界の消失の行く末を観測することも、記録することも、不可能だ。
なぜなら我々人類は、この世界が神を作り出すために生まれた副産物であり、失敗作である。
また、人類にこの世界を観測する権利は与えられていない。許されてはならない。
 結局、我々は、同じ世界から生まれた兄弟ともいえる存在を迫害し、畏怖し、軽蔑し、貶めた。
 そこに一切の情はない。集団心理のまま、我々人類は、この世界の意思に逆らったのだ。
もはや、この事実を覆す手立てはない。
 人類はこの世界の意思である「彼女」の手により終焉を迎えるしか道は残されていない。
我々がこの世界から消失する未来もそう遠くはないだろう。
ならば、我々が為すべきことは一つ。
この世界の意思である「彼女」を殺す。
 これは我々人類が招いたこと。故にこの物語の結末は「彼女」ではなく、我々の手によって迎えるべきだ。
たとえ、その行為がどれほど傲慢で愚行だったとしても、やらなければならない。この世界の意思を殺しても、我々は生き残らなければならないのだ。
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