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初めまして 幽霊さん
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「初めまして、幽霊さん。で、あんたは何がしたくてここに居るんだ?」
彼がこの部屋に越してきてから約一ヶ月がたったある日、彼はどっかりとソファに座り、僕の目を見てそう言った。
僕を視て、驚かない人間は珍しい。大抵はこの部屋を見に来た時、僕と目が合った瞬間何かしらの反応が有る。いや、昔はもちろん誰にも驚かれる事なんかなかったけれど 僕がこの家に潜むようになってなからは少なくとも初めてだろう。
思えば、彼が初めてこの部屋を見に来た時も 僕が部屋の角で立っていた時 目が合ったはずなのに全く驚きもしなかった。だから、彼もきっと僕が視えてないんだと思っていたのに……。
彼は今、僕の目を見て当たり前のように僕へ話しかけている。それはつまり、僕の事がちゃんと視えているってことだろう。
「もしかしてあんた喋れない? そこに居るだけタイプ?」
今までこの部屋を使っていた子達は、僕が少し生活のお手伝いをしてあげるとそれに気付いた瞬間から怖がって受け入れてはくれなかったのに。
聞こえてねぇのかな……なんて言いながら険しい顔で僕の方へ視線を送り続ける様な人、珍しすぎて僕も少し怖いかも知れない。
『ぁ……あの、僕……』
「なんだ、喋れんじゃん」
ふっと眉間の皺が消えて頬を緩るませた彼の表情が、大好きだったあの人に重なって 今はない心臓が締め付けられる気がした。
「あんたさ、悪いヤツじゃなさそうじゃん? いつからここに居んの?」
『……あの、僕……ごめんなさい』
「ん?」
『ココに居て……ごめん、なさい』
大好きだったあの人はもうこの部屋に居ないのに。
僕はいつまでも惨めにこんな所に留まって、色んな人に不快な思いをさせて。
今日まで何も気にしていなさそうな素振りだったけど……こうして声をかけて来るってことは 彼だって……きっと僕の存在が不快で 僕に出ていって欲しいと思っているはずなのに。
「なんであんたが謝るんだ? 先に居たのはあんただろ。むしろ勝手に上がり込んで悪ぃな、あんたの部屋だったんだろ? でもよ、激安だったんだこの部屋」
なんで、君が謝ってくれるの?
僕とあの人が無理心中なんかして、その上僕が、アノ人とこの部屋でまだ生きていたいなんて思っちゃったから。だからきっと、僕だけがこの部屋から何処にも逝けなくなっちゃっただけなのに。
僕のせいで この部屋はずっと事故物件。
彼がこの部屋に越してきてから約一ヶ月がたったある日、彼はどっかりとソファに座り、僕の目を見てそう言った。
僕を視て、驚かない人間は珍しい。大抵はこの部屋を見に来た時、僕と目が合った瞬間何かしらの反応が有る。いや、昔はもちろん誰にも驚かれる事なんかなかったけれど 僕がこの家に潜むようになってなからは少なくとも初めてだろう。
思えば、彼が初めてこの部屋を見に来た時も 僕が部屋の角で立っていた時 目が合ったはずなのに全く驚きもしなかった。だから、彼もきっと僕が視えてないんだと思っていたのに……。
彼は今、僕の目を見て当たり前のように僕へ話しかけている。それはつまり、僕の事がちゃんと視えているってことだろう。
「もしかしてあんた喋れない? そこに居るだけタイプ?」
今までこの部屋を使っていた子達は、僕が少し生活のお手伝いをしてあげるとそれに気付いた瞬間から怖がって受け入れてはくれなかったのに。
聞こえてねぇのかな……なんて言いながら険しい顔で僕の方へ視線を送り続ける様な人、珍しすぎて僕も少し怖いかも知れない。
『ぁ……あの、僕……』
「なんだ、喋れんじゃん」
ふっと眉間の皺が消えて頬を緩るませた彼の表情が、大好きだったあの人に重なって 今はない心臓が締め付けられる気がした。
「あんたさ、悪いヤツじゃなさそうじゃん? いつからここに居んの?」
『……あの、僕……ごめんなさい』
「ん?」
『ココに居て……ごめん、なさい』
大好きだったあの人はもうこの部屋に居ないのに。
僕はいつまでも惨めにこんな所に留まって、色んな人に不快な思いをさせて。
今日まで何も気にしていなさそうな素振りだったけど……こうして声をかけて来るってことは 彼だって……きっと僕の存在が不快で 僕に出ていって欲しいと思っているはずなのに。
「なんであんたが謝るんだ? 先に居たのはあんただろ。むしろ勝手に上がり込んで悪ぃな、あんたの部屋だったんだろ? でもよ、激安だったんだこの部屋」
なんで、君が謝ってくれるの?
僕とあの人が無理心中なんかして、その上僕が、アノ人とこの部屋でまだ生きていたいなんて思っちゃったから。だからきっと、僕だけがこの部屋から何処にも逝けなくなっちゃっただけなのに。
僕のせいで この部屋はずっと事故物件。
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