君に会うためにここに居た気がする

紫陽さらり

文字の大きさ
1 / 17

初めまして 幽霊さん

しおりを挟む
「初めまして、幽霊さん。で、あんたは何がしたくてここに居るんだ?」

 彼がこの部屋に越してきてから約一ヶ月がたったある日、彼はどっかりとソファに座り、僕の目を見てそう言った。
 僕を視て、驚かない人間は珍しい。大抵はこの部屋を見に来た時、僕と目が合った瞬間何かしらの反応が有る。いや、昔はもちろん誰にも驚かれる事なんかなかったけれど 僕がこの家に潜むようになってなからは少なくとも初めてだろう。

 思えば、彼が初めてこの部屋を見に来た時も 僕が部屋の角で立っていた時 目が合ったはずなのに全く驚きもしなかった。だから、彼もきっと僕が視えてないんだと思っていたのに……。

 彼は今、僕の目を見て当たり前のように僕へ話しかけている。それはつまり、僕の事がちゃんと視えているってことだろう。

「もしかしてあんた喋れない? そこに居るだけタイプ?」

 今までこの部屋を使っていた子達は、僕が少し生活のお手伝いをしてあげるとそれに気付いた瞬間から怖がって受け入れてはくれなかったのに。

 聞こえてねぇのかな……なんて言いながら険しい顔で僕の方へ視線を送り続ける様な人、珍しすぎて僕も少し怖いかも知れない。

『ぁ……あの、僕……』
「なんだ、喋れんじゃん」

 ふっと眉間の皺が消えて頬を緩るませた彼の表情が、大好きだったあの人・・・に重なって 今はない心臓・・・・・・が締め付けられる気がした。

「あんたさ、悪いヤツじゃなさそうじゃん? いつからここに居んの?」
『……あの、僕……ごめんなさい』
「ん?」
『ココに居て……ごめん、なさい』

 大好きだったあの人・・・・・・・・・はもうこの部屋ここに居ないのに。

 僕はいつまでも惨めにこんな所に留まって、色んな人に不快な思いをさせて。

 今日まで何も気にしていなさそうな素振りだったけど……こうして声をかけて来るってことは 彼だって……きっと僕の存在が不快で 僕に出ていって欲しいと思っているはずなのに。

「なんであんたが謝るんだ? 先に居たのはあんただろ。むしろ勝手に上がり込んで悪ぃな、あんたの部屋だったんだろ? でもよ、激安だったんだこの部屋」

 なんで、君が謝ってくれるの?

 僕とあの人が無理心中なんかして、その上僕が、アノ人とこの部屋でまだ生きていたい一緒にいたいなんて思っちゃったから。だからきっと、僕だけがこの部屋ここから何処にも逝けなくなっちゃっただけなのに。



 僕のせいで この部屋はずっと事故物件。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

【オメガバース】溺愛アルファとの夫婦生活。小さな正義の味方に降参した夜

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
BLのショートストーリーです。 オメガバースで3分ほどで読めるかと思います✨

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

悋気応変!

七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。 厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。 ────────── クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。 ◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。 ◇プロローグ漫画も公開中です。 表紙:七賀ごふん

処理中です...