君に会うためにここに居た気がする

紫陽さらり

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現代的言い訳

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 彼のと生活は、難点も色々あるけれど生前よりも心穏やかで、あの人の事を思い出す機会も減って行った。


 心にぽっかりと穴が空いているような、大切な何かを無くしてしまった時のような、虚しくて苦しくて悲しいような、そんな物足りなさを僕はずっと抱えていたのに、彼と出会って 彼に優しくされて、僕の心は少しずつ暖かいもので満たされていく気がする。 
 僕にはあの人想い人がいるのに。あの人以外で、染まっていく。

 そもそも、名前も顔も思い出せなくなてしまったあの人を、僕はまだ好きだと言えるんだろうか。言って、良いんだろうか。


「あ、今日飲み会行くから遅くなる」

 物思いにふけっていると、出かける準備をしながら彼が話しかけて来て、慌てて『わかりました』と返事をした。

「あんたいつも俺が帰るまで電気付けないけどさ、普通につけてて良いよ。暗いじゃん」
『ありがとうございます。でも、僕は暗くても見えてますし、家主不在で電気が付くのは不気味でしょうから』

 彼は少しきょとんとした後、クスッと笑ってから家主不在でも掃除機を使っていることや、布団を干している事は不気味の定義に当てはまらないのかと問い掛けてきた。
 確かに、言われてみれば彼の居ない時に洗い物をするから水音がするだろうし、洗濯機や掃除機は大きな音を立てて使うものだ。すっかり失念していたけれど、傍からすればとてつもなく不気味だろう。

『ぅ……でもほら、昼間はまだ多少不自然でも気にする人は少ないと思うんです』
 
 無理やりな理由なのは分かっているけれど、昼間ならハウスキーパーを雇っているとか言えそうだけど夜ひとりでに電気が付くのはやっぱり少し不気味じゃないかな……なんて、そんなのは大した差じゃないのかもしれないけど、彼の自転車が無い時に電気が付いてたら管理人さんに何か言われちゃうかも知れないじゃないか。
 その時、同居人がいますなんて言っても、僕は契約書にサインもできない名前を忘れた幽体なんだから説明すら出来ない。やっぱり、できるだけ夜は静かにしてなくちゃ彼に迷惑が
 
「別になんか聞かれても、AI家電使ってるから時間で電気つくようにしてるとか、洗濯機も掃除機もそうなんだってことにしちゃえばいけるっしょ。それより、俺は電気付いてるあったけぇ部屋に帰りたいんだけど、ダメ?」
 
 腹の底が疼くような、胸の鼓動が高まるような、そんな笑みに瞳を奪われて 僕は自然と『わかりました』と返事を返していた。
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