四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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97 住民たちに投資しよう!

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 あの後、意識の戻ったシスター・ウサミンも【才能開花《ハヨサケ・スキル》】を施したところ、『回復魔法』『治癒魔法』に『月魔法』という、ちょっと珍しい属性の魔法の才能が開花した。

 『月魔法』とは、主に反射や複製を司る魔法で、使い方によってはかなり凶悪だったりする。

 コギッツくんと同様に俺が再度、腕切断して、それを回復してくれたのだが、半泣きで「もう、これ以上の無茶はしないでくださいッ!」と懇願されてしまった。

「だ、だけど……これは、凄すぎるぜ……旦那ァ……」

「しかも、使い続けたり、ダンジョンでレベルを上げれば、さらに能力が成長するんですよね……」

「ええ。それはもちろんです。ですので、お二人共、お時間のある時にハポネスのダンジョンへ潜ってみてはいかがですか?」

 多分、この二人ならゴブローさんは難しいかもしれないが、ネーヴェリクの調整してくれたアンデッドゾーンくらいまでは行けるんじゃないかな?

「ウサミン! 旦那もそう言ってるし、今度一緒にダンジョンへ行ってみようぜ!!」

「え、で、でも、私、戦闘は……」

「平気だよ、俺が守るし!!」

 うむ、よきかな、よきかな。
 そうやって、ダンジョンに潜ることで本人のレベルを上げてくれれば、より、単体から得るダンジョン・ポイントがUPする。

 そうすれば、さっき使った程度のポイントなど、すぐに補ってくれるはずだ。
 つまり、この作業はダンジョン・ポイントの無駄遣いではなく、未来への投資なのだ!

 ダンジョンに潜ることに少し抵抗を感じているらしいシスター・ウサミンに向かって俺は微笑んだ。

「シスター・ウサミン。能力が開花するキッカケなどは些細なことです」

「カイトシェイド様……」

「……ですが、その才能を『使える』と『使いこなす』と『極める』は違います。私ができるのは最初の一歩を踏み出す背中をぽん、と押しただけ。それを使いこなし、極められるかどうかは、本人の努力次第ですよ」

 コギッツくんの回復魔法だって、使えるとは言っても、正直最初は一日1回か2回が限度のはず。
 これを『いつでも、どこでも、だれにでも』レベルまで引き上げられるかどうかは本人次第だ。

「そ、そうですよね……分かりました!! 私、カイトシェイド様が目覚めさせてくださった、この力を決して無駄にはしません!」

 おお!? シスター・ウサミンが燃えている。
 だが、やる気を出してくれるのは大変良い事だ。

 俺はこの調子で翌日以降『医療組合』に掛け合って、この街に残っていてくれた全回復術師達の元を周り、強化を実施した。
 まぁ、中には多少反発するヤツや信じてくれないヤツも居たのだが、シスター・ウサミンやコギッツくんにしてやったのと同じような事をしたら、一発。

 ある意味ぐうの音も出ない実演で、あっさりと信用を勝ち取った。
 まぁ、この状況下でもハポネスに残ってくれているような回復術師達なので、それほど難儀なヤツはいなかったけどな。

 皆、話せばわかる良い人達ばっかりだったよ?

 ただ、流石にこのやり方……1,2回は問題無いのだが、3回、4回と腕を切り落とす作業を分身体にやらせると、魔力流出量が増えすぎてしまい、分身体そのものの維持が困難になってしまう。

 そのため、ちょっと手間ではあったのだが、俺本体が【才能開花ハヨサケ・スキル】を使い、回復術師達の能力を開花、その証明のために腕を切断し、本人に治療して貰う……を、繰り返した結果!
 結構なダンジョン・ポイントを使ってしまった。

 一人あたり数百ポイントとはいえ、対象者が100人いれば一万ポイントを優に超える。
 すでに大分、回復術師は減っていたみたいで200人を切っていたのは逆に助かった。

 は、ははは……今更になって、もうちょっとゆっくり作業すればよかったかな~……なんて、ね。
 いや、でも、これだけの技能を持つ回復術師がゴロゴロいる街は珍しいみたいから、きっと訪問者も増えるはずだ!!

 大丈夫、コレは投資! ダンジョン・ポイントの投資だから、きっとすぐに増えるようになるッ!!
 そう己を励ましながら、全ての回復術師達の開花作業を終えた俺は、ルシーファの元を訪ねていた。


「……ねぇ、カイトシェイド……」

「おう。何だ、ルシーファ……せっかく遊びに来てやったんだ。感動に咽び泣いて喜べ、友達居ないボッチ天使が」

 だが、俺の皮肉よりも目の前の光景の方が衝撃的だったのだろう。
 冒険者ギルドの5階、聖域結界のお陰でようやく人並みの生活リズムを取り戻したちび天使が困惑の表情を浮かべている。

「一体、どうするんですか? ……コレ」

「……欲しいか?」

「一個たりとも、いりませんよッ!!」

 この作業、もうちょっと時間をかけた方がよかったかなー……と、感じたもう一つの理由が目の前に広がるコレである。
 見てのとおり……無数に転がる俺の

 ほら、能力を開花させるじゃろ?
 切断された体の再生が自分自身で出来る事を実感させるために、自分の腕を切り落とすじゃろ?
 回復術師が新たな腕を生やしてくれるじゃろ?
 切り落とされた左腕があまるじゃろ?
 そのままにしておけないじゃろ?
 回収するじゃろ?
 回収したブツ、どうしようかな……? ←イマココ。
 
「お前さ……堕天使の頃は、何か、こーゆーのの処理方法とか活用方法とか詳しく無かったか?」

「誤解ですッ! 知りませんよ、そんな禍々しいものを駆使する方法ッ!!!」

「テメェ、無駄に本ばっかを読んでいただろ! 知識を絞り出せ!!」

「……コンポストに放り込んで堆肥にでもなさったらどうです?」

「よし、任せた! 趣味・ガーデニングッ!!」

「こんな猟奇的な肥料はいりませんっ!!!」

 ……っち、コイツに押し付ける作戦は失敗か。
 こういう、俺自身の身体のパーツを抱えてウチに戻ると、ネーヴェリクが、すっげぇ悲しそーーーーな顔するんだよなぁ……

 先日、コギッツくんと、シスター・ウサミンを開花させた時、分身体が持ち帰って来た左手を見て、妙にぺっそりしていたのだ。

「何だよー、貴重な本体のパーツなのに……」

 ちぇ。
 結局、俺の左手の山は適当な肥料にすべく、樽に詰めて、屋敷の地下の倉庫に放り込んでおいた。
 まぁ、魔力は引き抜いてあるから、いわば単なる肉だし……腐ったらマンドラニンジンの畑に撒くか。
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