好きな人に触ると、その人私の事忘れちゃうんですけど!

七瀬 巳雨

文字の大きさ
14 / 36

14

しおりを挟む
 
 
「どうぞ、召し上がって下さい」
 可愛らしい声でそのメガネの女の子は、椅子を引く。
 
「あっ、ありがとうございます」
 何度も小さく頭を下げて、エヴァリーはお言葉に甘えさせてもらった。
 
 
「パッ、パーベル・アビーの方と話すの初めてですっ。今、こちらで部活動されてる方も居ますよねっ、凄く可愛い子が居るって、皆っ凄く盛り上がってるんですよっ」
 たどたどしくも一生懸命メガネの女生徒がエヴァリーにそう言った。
 
 気づいちゃいました?気づいちゃいました?そうなんですよねー、リリアンの事でしょう?我がパーベル・アビーの宝ですっ…––と言いたいが、言えない。
 
 エヴァリーも少なからず緊張している。
 
 
「ずっずっと、ブライトンとパーベル・アビーがっ仲良くなれたらなって、思ってたんですっ。うちの両親はっ、両校の出身なのでっ」
 
「そうなんですね…––」
 エヴァリーはカップとソーサーを手に目を見開く。
 
 まるで悲恋のカップル…古典悲劇にあったような話だ。
 現実の2人は結ばれて、今目の前に居る女の子が存在している訳だが。
 
 –––考えれば、何をそんなにずっといがみ合っていたのか……学校長も変わって方針が変われば、以前から親交を持ちたいと思っていた生徒には嬉しいことだろう。
 
 
「私もっここに来れて嬉しいですっ––」
 エヴァリーも緊張しながらそう返す。
 
 
「…パーベル・アビーにはこんな麗しい男性のような女性が居るんですね」
 本棚の影から、茶色い髪の三つ編みの女の子と金髪でくるくるとした髪をした女の子が、エヴァリーを見ていた。
 
「フランカ、ティナ、失礼よっ!」
 メガネの女の子に軽く叱責された2人は、影から出てくる。
 
「だって、アイゼイア様と一緒に入ってきた時は男性かと思ったんだもの」
 
「お二人でなんて麗しい…と思ったら、スカートを履かれていたから、驚いてしまって。すみません」
 2人はそう言ってエヴァリーに頭を下げる。
 
 
「…まぁアイゼイア様にはユウリ様がいらっしゃいますからねっ」
 フランカとティナは、話し込むアイゼイアとユリアをうっとりと見た。
 
「あのお二人は学園でも有名なんです。 本当にお美しいので…恋人同士なのかははしたなくて聞けませんが、見れば分かります…–––」
 なんだか、ここにも小花が舞い始めているような…––とエヴァリーは何も見えないはずの空間を見つめる。
 
 
 
「アイゼイア様はユリア様が直々に副会長に任命されたんです!6年生では無く、5年生なのに…!」
 
「それに、お二人がご一緒に居る時のお二人の表情…雰囲気…––察して余りある、とは正にこの事…––。会長は先にご卒業されてしまいますが、アイゼイア様も同じ大学を希望されてるので、またすぐにご一緒に過ごされるでしょう––」
 
 春満開、フランカとティナは小躍りしながら小花を蒔き、エヴァリーの前をくるくると回る。
 
 
 確かに…––絵になる2人だな、とエヴァリーも思っていた。信頼し合って尊敬している、そんな空気を感じた。
 
 エヴァリーとは育ちも生まれも違うであろう2人には、自信や活力が満ちている。
 
 なんだろう、これ……––ジリジリと胸が痛んで、お腹の辺りが気持ち悪い…––
 
 
〝なんで自分ばっかり…〟
 
 エヴァリーの胸がジリジリ焼けるように痛むと、どこからかそんな声が脳に響いて来る。
 その瞬間が、エヴァリーは嫌で仕方ない。
 
 
 エヴァリーはそれ以上紅茶にもお菓子
 にも手が伸びなかった。
 
  
   
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

戦いの終わりに

トモ
恋愛
マーガレットは6人家族の長女13歳。長く続いた戦乱がもうすぐ終わる。そんなある日、複数のヒガサ人、敵兵士が家に押し入る。 父、兄は戦いに出ているが、もうすぐ帰還の連絡があったところなのに。 家には、母と幼い2人の妹達。 もうすぐ帰ってくるのに。なぜこのタイミングで… そしてマーガレットの心には深い傷が残る マーガレットは幸せになれるのか (国名は創作です)

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

悪女の最後の手紙

新川 さとし
恋愛
王国を揺るがす地震が続く中、王子の隣に立っていたのは、婚約者ではなかった。 人々から「悪女」と呼ばれた、ひとりの少女。 彼女は笑い、奪い、好き勝手に振る舞っているように見えた。 婚約者である令嬢は、ただ黙って、その光景を見つめるしかなかった。 理由も知らされないまま、少しずつ立場を奪われ、周囲の視線と噂に耐えながら。 やがて地震は収まり、王国には安堵が訪れる。 ――その直後、一通の手紙が届く。 それは、世界の見え方を、静かに反転させる手紙だった。 悪女と呼ばれた少女が、誰にも知られぬまま選び取った「最後の選択」を描いた物語。 表紙の作成と、文章の校正にAIを利用しています。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...