転生した元剣聖は前世の知識を使って騎士団長のお姉さんを支えたい~弱小王国騎士団の立て直し~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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19.ドワーフアトリエ

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「こちら、工房長のグルトさんです」
「初めまして、ゼナリオと申します」
「ゼナリオか。よろしゅうな」

 リーリアの紹介で互いに自己紹介を交わし、握手をする。
 俺は今、とんでもなくデカいドワーフの工房にいる。

 360°どこを見ても作業場が続いており、完全に俺の目は工房に奪われていた。

「それにしてもアトリエって……これ全部がですか!?」
「おうよ。どうだ、すごいじゃろ?」

 確かに凄い。というよりそれ以外に言葉が見つからないほどだった。
 果てしなく広がる空間、そしてそこで汗水たらして働く沢山のドワーフたち。
 
 この光景だけでも絵になるほどだった。
 
(俺が通い詰めていた工房とは比にならないな)

 あっちからこっちから金槌で鉄を叩く音が聞こえ、作業を円滑の進めるための会話が飛び交う。
 ちょっと熱気が籠っているところもまさに工房って感じだった。

「それで団長。俺をここに呼んだのって……」
「はい。ゼナリオさんには我が国の民と街を救って頂いたお礼をしたく思いまして」
「お礼……とは?」

 首を傾げる俺に鍛冶師のドワーフが補足説明をする。

「リーリアが坊主に剣をプレゼントしたいんだとさ。昨日の夜にいきなり頼まれて焦ったもんよ」
「け、剣ですか?」

 リーリアに視線を向けると、彼女は首を縦に振る。

「本当はもっと誠意あるお礼をするべきなのですが、これしか思いつかなくて……」
「い、いやいや十分ですよ! しかもあの事件を解決できたのはリーリア団長あってのものでしたし」
「そんなことはありませんよ。あなたが巨人に立ち向かったことで、逃げ遅れた兵たちも逃げ切ることができました。もしゼナリオさんがあの場にいなかったら甚大な被害は避けられなかったと、私は思っております」

 そんな大袈裟な……

 気を遣わせてしまったかなと少し思ってしまう。
 しかも製作費等全てを自分が負担するとか言っているし。

 本来なら丁重にお断りしたいところだが……

「ちなみに遠慮は無用です。後々剣は必要となりますし、ゼナリオさんにはより身の丈にあった剣を使って頂きたいのです」

 断る前に遠慮することを断れてしまった。
 でも確かに今後とも剣とは長い付き合いになる可能性がある。

 リーリアの言う通り、ここで自分に合ったチューニングを施した剣を作っておいたほうが巨人事件みたいに窮地に陥らないだろうし……

 俺は考え、悩む。

 そして一つの決断を下す――

「分かりました。団長のお言葉に甘えさせていただきます」
「はい。どうぞ遠慮なく」
「しゃあっ! では決まりじゃな!」

 結局、剣を作ってもらうことに。
 するとリーリアは、

「では、私は他用があるのでこの辺で。後はお願いしますね、グルト工房長」
「おう、任せておけ!」

 他に別の用事があるとのことで工房を出ていくことに。
 だが去り際、リーリアは俺の方へと振り向き、

「あっ、そういえばゼナリオさん。今日の夜に王城で歓迎会パーティーを開くので夕暮れ時にはお戻りくださいね」
「あ、はい……了解しました」
「では……」

 それだけ述べると、リーリアは工房から去っていく。
 それを見たグルトは脇からすすーっと抜けるように顔を出し、

「お前さん、結構気に入られとるな」
「えっ、そうですか?」
「ああ。なんだかお前さんといる時は表情が浮かれとったぞ」

 そうか? 別にいつもと変わらないように見えたが。
 
(いや、よく考えてみればいつものリーリアを俺は知らないからか)

 とはいえ、俺には浮かれているような感じには見えなかったけど。
 この鍛冶師とリーリアは相当前からの付き合いなのだろうか。
 
 対応もなんだか柔軟でスムーズだったし……

「ま、それは置いといて。おい、坊主!」
「は、はいっ!」

 グルトは俺を大声で呼び、大きな岩みたいなものを3つ用意する。
 そしてそれを俺の目の前に置くと、グルトは口を開いた。
 
「んで、お前さんがご所望する″剣″とはなんじゃ? 手始めにベースの素材を用意してみたが」
「ベースの素材ってこの岩がですか?」
「これは岩じゃなくて鉄じゃよ。厳密にいやあ鉄の原石、いわゆる鉄鉱石の塊じゃな」

 鉄鉱石の塊って……こんなの前にいた工房では見たこともないぞ?

 せいぜい小石程度のものだとばかり思っていた。
 しかも二種類もあるなんて。

「これは全部違う用途で使う鉄鉱石なんですか?」

 気になったので一応聞いてみる。
 するとグルトは、

「もちろん。例えばこの赤色の鉄鉱石は主に大剣などの重量のある剣使われる。そっちの青の鉄鉱石はその逆、短剣などの小型かつ軽量型の剣を作るときに用いるものじゃよ」
「では、この緑の鉄鉱石は何に使うんです?」

 俺が指差したのは俺の知る鉄鉱石とはかけ離れた色をした緑の鉄鉱石。
 なぜか分からないが厳重にバリケードで囲むように守られており、さっきから気になっていたのだ。

 赤が大剣、青が短剣と来たら緑はその中間に位置する剣を作るためなのか?

 と、思いきや、

「あ、そりゃあお前さんには関係のないものよ。緑の鉄鉱石は基本的に使わんからな」
「使わないんですか?」
「使わないというか使う機会があまりないんじゃよ。何せその鉄鉱石は秘剣を鍛造する時に使う特殊な鉄鉱石じゃからな」
「秘剣……ですか?」
「おうよ。まぁ俗に言う聖剣ってやつだ」
「聖剣!?」

 思わず声が跳ね上がってしまい、グルトもびっくりした顔を向ける。
 
「い、いきなりなんじゃ大声をだしおって……」
「す、すみません。でも聖剣って……」
「おとぎ話か何かだと思っているのか? だがお前さんもリーリアの剣を一度目にしたことがあるのじゃろ?」
「ありますけど……ってまさかあれが?」
「そうじゃよ。リーリアの持つあの剣こそ聖剣。名をアレキサンダーと呼ぶものじゃ」

 アレキサンダー……? 雷の聖剣か。

 確か俺のいた世界でもベルリとかいう剣聖が持っていたような……
 
 確かにリーリアの剣からは妙な雰囲気を感じた。
 初めは聖剣なんじゃないかと疑っていたが、まさか本当にそうだったとは。

「ま、聖剣を作るにはそれ相応のブツがないと作れんよ。アレキサンダーの場合はたまたま湖から引き揚げられた古い剣を復元しようとした時に偶然生まれたもんだ。その剣自体に恐らく何らかの強い力が秘められていたんじゃな」
「なるほど、そういうことだったんですね」

 だがまぁさすがに聖剣を作れなんて無謀なことは言わない。
 
 最低限自分の力量を発揮できるくらいの剣で十分なのだ。
 それも元聖剣所有者だから言える。
 
 あんなバケモノじみた力を持った剣を腰に差すのは物騒で仕方がない。
 近くに置くだけで所有者から魔力を吸っていくし、ちょっと剣先が掠れば一大事にもなったりする。

 正直、聖剣を持つのはもう――

「おっ、そうじゃっ!」

 グルトは手をポンと叩き、何か閃いた様子。
 そしてすぐさま俺にリーリアと持ってきた素材を見せるよう催促してくる。

「なぁ坊主。先ほど持ってきた巨人の宝玉とやらを貸してはくれまいか?」
「あ、はい」

 俺は箱から宝玉を取り出し、グルトに渡す。
 そしてグルトはその宝玉を少しずつ緑の鉄鉱石の塊へと近づけていく。

 と――

「うわっ、なんだこの光は。目が……」
「おぉ……やはりか。坊主!」
「は、はい?」

 眩しさに耐えながら俺は横目で返事をする。
 するとグルトは何やら目を輝かせながらこう言った。

「おい、坊主。もしかすりゃあすっげぇ代物ができるかもしれんぞ!」


 一方その頃――

「それにしても、彼は一体何者なんでしょうか。只ならぬオーラが出ているのは分かるのですが。でもあんなお可愛い顔をしておいてあんな剣技を繰り出すなんて……うーん……気になりますね……」

 女騎士リーリアはだけ、彼のことを気にしていた。
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