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22.その少女は……
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子供……? なんでこんな所に……
その少女はじっと俺を見つめてくる。
なんか目新しい物を見るかのような……そんな目だった。
「あ、アリシア陛下!」
リーリアがその子のことをそう呼ぶ。
(アリシア……?)
なんかどこで聞いたことがあるような……
「ねぇねぇ、もしかしてあなたが私の新しい騎士様?」
「えっ……? 騎士?」
少女は駆け寄り、そう俺に問う。
すると、
「陛下‼ 初対面の人と会ったらまずはご挨拶からと何度も言っているじゃないですか」
「んもう……相変わらずリーリアはせっかちだなぁ。言われなくてもするって!」
リーリアとのやり取りを見る限りだとかなり親しい様子。
というかアリシアという名前にどこか引っかかるところが……
少女はリーリアの忠告をはいはいと言いながら流し、その美しいドレス姿をちらつかせる。
そして俺の目の前でやってくるとドレスの裾を上げ、
「申し遅れて、誠に失礼いたしました。わたくしはバンガード王国第15代国王、アリシア・バンガードと申します。以後、お見知りおきを」
優雅にかつ華麗に。
その黒く華美なドレスがその漆黒の髪に存在感を持たせる。
ていうか――
「国王って……あっ!」
思い出した。
前にリーリアと初めて顔を会わせた時、彼女が言っていた人物。
この国を建て直し、再び繁栄をもたらしたというこの国の救世主。
この人が……この国の長、アリシア・バンガードか!
俺はすぐさま片膝を地につけ、右手を心臓部分に添える。
「も、申し訳ございませんアリシア陛下! 気がつがなかったとはいえ、多大なる無礼を……」
「顔を上げて新入り君。わたしはそういうのあまり好きじゃないの」
「で、ですが……」
「わたしがいいっていいったらいいの! ホラ、立って!」
「は、はい……」
とはいえ、驚いたもんだ。
まさか一国の長である人物が女性でかつまだ年端もいかない子供だったなんて。
推定年齢は大体11~13の間くらい。
あまり言い方は良くないが、国を立て直せるほどの実力の持ち主には見えない。
「リーリア、この者がわたしの新しい騎士でいいのか?」
「左様で御座います。彼は……」
「あっ、リーリア団長。そこは自分からさせてください」
そういうと俺はすぅーっと息を吸い、ゆっくりと息を吐く。
そして再び片膝を地につけ、
「申し遅れました陛下。自分は本日よりこの騎士団へ入営することになりました、ゼナリオと申します。先ほどの無礼は誠に申し訳――」
「だーかーら、別にわざわざ身を低くする必要なんてないの! 別にちょっとした無礼を働かせたからってわたし怒らないし」
「いえ、そういう問題では……」
「ゼナリオさん、お立ちください。彼女は……陛下はそういうお方なんです」
「だ、団長……」
団長がそういうのであれば……と俺はすぐに立ち上がる。
でもやはり違和感が抜けない。
何せ自分たちが忠誠を誓うべき相手を見下ろしながら会話をしているのだ。
普通ならあってはならないこと。場合によってはその場で処刑なんてこともあるくらいだ。
実際、生前にいた世界ではそういうことがあった。
少し顔が上がっただけなのに図が高いと言われ、その場で斬殺されたというあまりにも無残な事件。
それを見た時、俺は支配者と従者の関係というのはそれほど厳しい掟の元に存在し、かつ絶対に越えられない壁なのだと、そう思った。
だけど、この人は――
「よし、それで早速だがゼナリオ。今日からお前、私の騎士ね」
「……はい?」
唐突なる騎士任命。
アリシアは俺を指さし、ニヤリと笑う。
「騎士って……どういう」
状況が読み込めていない俺にリーリアが補足説明をする。
「ゼナリオさん、黙っていて本当にごめんなさい。実は今回のパーティーは歓迎会という名目の傍ら、陛下の側近騎士としての叙任式も兼ねているのです」
「叙任式……? ということはアリシア陛下の……」
「右腕、とも呼べるでしょうか。簡潔に言えば、国家騎士の中では私と同等なる地位を与えられるということです」
「同等って……自分はまだ今日入団したばかりの新兵ですよ? いきなりそんな……」
すんなり話が進んでいるが、俺は未だに飲み込めていなかった。
国王陛下の側近騎士といえば、いわば国家騎士の中でも優秀な人物のみが選ばれ、騎士にとっては花形とも言える重要な役柄。
基本的に団のトップがその座につくが、国王からの任命や団長直々の推薦を得られれば、どの人間でもその座につくことができる。
どうやらこの国ではその席が二つあり、一席はリーリアが担っているがもう一席は空席の状態だという。
そこでその席を埋めるべく、選ばれたのがこの俺。
だけど――
「ですが我々の団にはヴェルリール副団長がいるではありませんか。それに、こんなまだ実績も浅い騎士がいきなり側近騎士になっては周りの兵たちに示しがつきません。疎まれる対象になるのでは……?」
「それは大丈夫だと思います。ゼナリオさんは先の戦いで十分なご活躍をされました。この団長である私がこの眼でしっかりと見ましたのが何よりの証拠です。それに、ヴェルリールには断られてしまいましたので」
要するに、あの巨人との成果を称えて俺を側近騎士にしたいと……
リーリア団長もアリシア陛下も俺を側近騎士にする気満々らしい。
でも本当にそれでいいのだろうか。
たった一回の成果で、しかもリーリアがいなければ成し遂げられなかったことなのに。
迷いに迷いを重ね、無言のまま棒立ちする。
すると――
「ねぇゼナリオ」
「なんでしょうか?」
「ちょっと一緒に来て。二人で話がしたいの。いいよね、リーリア?」
「それは構いませんが、一体何のお話を?」
「ふふふ、それは秘密。行くよ、ゼナリオ!」
「ちょ、ちょっとお待ちくださいアリシア陛下!」
「へ、陛下! どこへ行かれるのですか!」
そのまま腕ごと引っ張られ、半ば強引に団長室への外へと連れ出される。
そして城内をアリシアと共に駆け巡ると、とある場所へと連れていかれるのだった。
その少女はじっと俺を見つめてくる。
なんか目新しい物を見るかのような……そんな目だった。
「あ、アリシア陛下!」
リーリアがその子のことをそう呼ぶ。
(アリシア……?)
なんかどこで聞いたことがあるような……
「ねぇねぇ、もしかしてあなたが私の新しい騎士様?」
「えっ……? 騎士?」
少女は駆け寄り、そう俺に問う。
すると、
「陛下‼ 初対面の人と会ったらまずはご挨拶からと何度も言っているじゃないですか」
「んもう……相変わらずリーリアはせっかちだなぁ。言われなくてもするって!」
リーリアとのやり取りを見る限りだとかなり親しい様子。
というかアリシアという名前にどこか引っかかるところが……
少女はリーリアの忠告をはいはいと言いながら流し、その美しいドレス姿をちらつかせる。
そして俺の目の前でやってくるとドレスの裾を上げ、
「申し遅れて、誠に失礼いたしました。わたくしはバンガード王国第15代国王、アリシア・バンガードと申します。以後、お見知りおきを」
優雅にかつ華麗に。
その黒く華美なドレスがその漆黒の髪に存在感を持たせる。
ていうか――
「国王って……あっ!」
思い出した。
前にリーリアと初めて顔を会わせた時、彼女が言っていた人物。
この国を建て直し、再び繁栄をもたらしたというこの国の救世主。
この人が……この国の長、アリシア・バンガードか!
俺はすぐさま片膝を地につけ、右手を心臓部分に添える。
「も、申し訳ございませんアリシア陛下! 気がつがなかったとはいえ、多大なる無礼を……」
「顔を上げて新入り君。わたしはそういうのあまり好きじゃないの」
「で、ですが……」
「わたしがいいっていいったらいいの! ホラ、立って!」
「は、はい……」
とはいえ、驚いたもんだ。
まさか一国の長である人物が女性でかつまだ年端もいかない子供だったなんて。
推定年齢は大体11~13の間くらい。
あまり言い方は良くないが、国を立て直せるほどの実力の持ち主には見えない。
「リーリア、この者がわたしの新しい騎士でいいのか?」
「左様で御座います。彼は……」
「あっ、リーリア団長。そこは自分からさせてください」
そういうと俺はすぅーっと息を吸い、ゆっくりと息を吐く。
そして再び片膝を地につけ、
「申し遅れました陛下。自分は本日よりこの騎士団へ入営することになりました、ゼナリオと申します。先ほどの無礼は誠に申し訳――」
「だーかーら、別にわざわざ身を低くする必要なんてないの! 別にちょっとした無礼を働かせたからってわたし怒らないし」
「いえ、そういう問題では……」
「ゼナリオさん、お立ちください。彼女は……陛下はそういうお方なんです」
「だ、団長……」
団長がそういうのであれば……と俺はすぐに立ち上がる。
でもやはり違和感が抜けない。
何せ自分たちが忠誠を誓うべき相手を見下ろしながら会話をしているのだ。
普通ならあってはならないこと。場合によってはその場で処刑なんてこともあるくらいだ。
実際、生前にいた世界ではそういうことがあった。
少し顔が上がっただけなのに図が高いと言われ、その場で斬殺されたというあまりにも無残な事件。
それを見た時、俺は支配者と従者の関係というのはそれほど厳しい掟の元に存在し、かつ絶対に越えられない壁なのだと、そう思った。
だけど、この人は――
「よし、それで早速だがゼナリオ。今日からお前、私の騎士ね」
「……はい?」
唐突なる騎士任命。
アリシアは俺を指さし、ニヤリと笑う。
「騎士って……どういう」
状況が読み込めていない俺にリーリアが補足説明をする。
「ゼナリオさん、黙っていて本当にごめんなさい。実は今回のパーティーは歓迎会という名目の傍ら、陛下の側近騎士としての叙任式も兼ねているのです」
「叙任式……? ということはアリシア陛下の……」
「右腕、とも呼べるでしょうか。簡潔に言えば、国家騎士の中では私と同等なる地位を与えられるということです」
「同等って……自分はまだ今日入団したばかりの新兵ですよ? いきなりそんな……」
すんなり話が進んでいるが、俺は未だに飲み込めていなかった。
国王陛下の側近騎士といえば、いわば国家騎士の中でも優秀な人物のみが選ばれ、騎士にとっては花形とも言える重要な役柄。
基本的に団のトップがその座につくが、国王からの任命や団長直々の推薦を得られれば、どの人間でもその座につくことができる。
どうやらこの国ではその席が二つあり、一席はリーリアが担っているがもう一席は空席の状態だという。
そこでその席を埋めるべく、選ばれたのがこの俺。
だけど――
「ですが我々の団にはヴェルリール副団長がいるではありませんか。それに、こんなまだ実績も浅い騎士がいきなり側近騎士になっては周りの兵たちに示しがつきません。疎まれる対象になるのでは……?」
「それは大丈夫だと思います。ゼナリオさんは先の戦いで十分なご活躍をされました。この団長である私がこの眼でしっかりと見ましたのが何よりの証拠です。それに、ヴェルリールには断られてしまいましたので」
要するに、あの巨人との成果を称えて俺を側近騎士にしたいと……
リーリア団長もアリシア陛下も俺を側近騎士にする気満々らしい。
でも本当にそれでいいのだろうか。
たった一回の成果で、しかもリーリアがいなければ成し遂げられなかったことなのに。
迷いに迷いを重ね、無言のまま棒立ちする。
すると――
「ねぇゼナリオ」
「なんでしょうか?」
「ちょっと一緒に来て。二人で話がしたいの。いいよね、リーリア?」
「それは構いませんが、一体何のお話を?」
「ふふふ、それは秘密。行くよ、ゼナリオ!」
「ちょ、ちょっとお待ちくださいアリシア陛下!」
「へ、陛下! どこへ行かれるのですか!」
そのまま腕ごと引っ張られ、半ば強引に団長室への外へと連れ出される。
そして城内をアリシアと共に駆け巡ると、とある場所へと連れていかれるのだった。
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