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第2章 おっさん、旧友と会う
第18話 レイナードの休日1
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「ば、バカな……」
とある休日。
俺は金融機関から送られてきた預金通知を見て衝撃を受けていた。
「一月働いてたったのこれだけ……これは何かの間違いか!?」
予想していた給料の額から上回るどころか大幅に下回るという無残な結果となっていたのだ。
「これじゃあ今月の下宿代を払って終わりじゃないか!」
俺は魔術講師として王都へ来る前、フィーネにある条件を出していた。
そう、それは下宿先の調達である。
神魔団のアジトから学園に通うとなると結構な時間を有する。
馬車を使ってざっと1時間だ。
フィーネは資産の節約だがなんだか言って往復2時間の道のりを通っているらしい。
が、素晴らしく怠惰なこの俺に毎日往復2時間の通勤は果たして耐えられるだろうか。
もちろん答えはNOである。
というわけでフィーネの幅広い人脈を活かし、王都内で住めるような場所を探してもらったわけだ。
一つだけ残念なのは家賃やら光熱費やらの諸々の費用は全部自分持ちということだ。
最初はそれも含めて条件として出したのだが、フィーネの表情に棘を感じたため断念することにした。
普段は滅多に怒らないフィーネの表情が一瞬だけ良からぬ方向へと変わったのだ。
情けない話だが、ビビってしまった。
そして今日、初給料日ということで少しだけワクワクしていた。
だが、結果は自分が暮らす分の費用でほぼ無くなるレベル。とてもじゃないが遊びに金なんか回せない。
食を得るだけで精一杯と言ったところだった。
「くそっ……これが続きでもしたら間違いなく死ぬ!」
着任当初、フィーネに給料は出るかとは聞いたがその詳細な情報までは聞いていなかった。
まぁ言うなれば俺の失態である。
それに魔術講師は給与がいい方だと思っていた。
講師試験は結構な倍率らしいし、その手の業界人に実力が認められるか推薦でもされないと中々なることができない職業であったからだ。
だが、実態はその辺の商人と同じくらい……というかそれ以下の可能性だって十分にあり得る。
とりあえずフィーネにもっと給与を上げるよう直談判をすることにする。
俺は高度な能力を持つ魔術師のみが扱える五感を司る高位魔術≪レ・サンク≫を使ってフィーネに連絡を取る。
『……ん? レイナード?』
『ああ、そうだ』
『あんたから連絡してくるなんて珍しいわね』
確かにこうして連絡をするのは初めてかもしれない。
基本的に顔を合わさない時以外で話したことはなかったからな。
『で、どうしたの?』
この問いに俺は単刀直入で話を切り出す。
『もっと給料を上げろ』
『……はい?』
『聞こえなかったか? 給料を上げろと言っているんだ』
フィーネは俺が何を言っているのかイマイチ分かっていないらしく、会話が噛み合わない。
『どうしたのいきなり。今日は給料日なのに……』
『その給料の額が問題なんだ!』
思わず声を張り上げる。
そして俺は給料についての不満をあますことなくぶちまける。
するとフィーネは、
『新人の内はみんなそうよ、キャリアを重ねていくごとに給料は増えるの。あとは出来高かな』
『キャリアの件は仕方がないが、出来高はどうなんだ? 俺はとてつもなく学園に貢献していると思っているのだが』
『毎回の授業が自習の講師に出来高分を支払うわけにはいかないわよ』
『ぐっ……』
フィーネは俺の授業形態を知っているようだった。
『出来高=人気じゃないんだから、その辺は自分で理解しなさいよね』
『むぅ……』
直談判で無理矢理にでも給与を上げようと計画していたつもりが逆に丸め込まれている。
だがしかし、俺は引き下がらない。
『頼む! もう少しだけ上げてくれ! このままじゃ生きていけん!』
俺は勢いだけで頼み込む戦法にシフトする。
『あなたの頼みでもさすがに出来ないわ。だから兼業でハンター業もやればって言ったのに……』
ああ、確かそんなことをいつの日か言っていた気がするが、まったく聞いていなかった。
だが、そんなことを言ってももう遅い。
俺はとにかく頼み込んだ。
『もう……だからできないって言ってるでしょ』
(このロリババア……このレイナード・アーバンクルス様がお願いしますと頼んでいるというのに……!)
自分勝手ながら機嫌が悪くなってくる。
(こうなったら……)
あまり使いたくなかったが、俺は最後にして最強の口述でフィーネに頼む。
『なぁフィーネ。礼と言ってはあれだが”いい奴”を紹介するよ』
『いい奴? 誰なの?』
『英雄時代の友人だ。そいつも確か婚約相手を探していたな』
『えっ!? 男!?』
フィーネはすぐさま食いつく。
彼女も今年で36になる。
そろそろ将来のパートナーを見つけないとと危機感を覚えていた。
神魔団ナンバー3のロリババアも相手探しに必死なわけだ。
『ああ、しかもイケメンで金も持っているぞ』
『……ほ、ホントなの……?』
妙に疑い深い。
それもそのはずフィーネは俺の過去を知る者の一人。
人と関わるのが苦手だったという事を知っているからだろう。
ちなみにその男とは俺の実の弟のことである。
彼もまた俺の血を引く有能なキャスターであったが、途中でキャスターを止めて医学の道へと進んだ。
『な? 紹介するから頼む!』
これで断られたら断念しよう……そう思っていた。
だが、
『わ、分かったわよ。今回だけよ?』
『ま、マジ!?』
『ま、まぁ……説明不足だった私のせいでもあるし』
(よっしゃ、きたぁぁぁぁ!)
心の底から喜ぶ俺。
そして彼女からその男を紹介することを忘れないようにと強く言われる。
『分かった? 約束、忘れないでよ?』
『分かった分かった。任せておけ』
ということで俺の給料マシマシ作戦は成功で終わった。
「はぁ……買い物に行かねば……」
そして俺は夕飯の材料を買うべく、王都の街に繰り出すのであった。
とある休日。
俺は金融機関から送られてきた預金通知を見て衝撃を受けていた。
「一月働いてたったのこれだけ……これは何かの間違いか!?」
予想していた給料の額から上回るどころか大幅に下回るという無残な結果となっていたのだ。
「これじゃあ今月の下宿代を払って終わりじゃないか!」
俺は魔術講師として王都へ来る前、フィーネにある条件を出していた。
そう、それは下宿先の調達である。
神魔団のアジトから学園に通うとなると結構な時間を有する。
馬車を使ってざっと1時間だ。
フィーネは資産の節約だがなんだか言って往復2時間の道のりを通っているらしい。
が、素晴らしく怠惰なこの俺に毎日往復2時間の通勤は果たして耐えられるだろうか。
もちろん答えはNOである。
というわけでフィーネの幅広い人脈を活かし、王都内で住めるような場所を探してもらったわけだ。
一つだけ残念なのは家賃やら光熱費やらの諸々の費用は全部自分持ちということだ。
最初はそれも含めて条件として出したのだが、フィーネの表情に棘を感じたため断念することにした。
普段は滅多に怒らないフィーネの表情が一瞬だけ良からぬ方向へと変わったのだ。
情けない話だが、ビビってしまった。
そして今日、初給料日ということで少しだけワクワクしていた。
だが、結果は自分が暮らす分の費用でほぼ無くなるレベル。とてもじゃないが遊びに金なんか回せない。
食を得るだけで精一杯と言ったところだった。
「くそっ……これが続きでもしたら間違いなく死ぬ!」
着任当初、フィーネに給料は出るかとは聞いたがその詳細な情報までは聞いていなかった。
まぁ言うなれば俺の失態である。
それに魔術講師は給与がいい方だと思っていた。
講師試験は結構な倍率らしいし、その手の業界人に実力が認められるか推薦でもされないと中々なることができない職業であったからだ。
だが、実態はその辺の商人と同じくらい……というかそれ以下の可能性だって十分にあり得る。
とりあえずフィーネにもっと給与を上げるよう直談判をすることにする。
俺は高度な能力を持つ魔術師のみが扱える五感を司る高位魔術≪レ・サンク≫を使ってフィーネに連絡を取る。
『……ん? レイナード?』
『ああ、そうだ』
『あんたから連絡してくるなんて珍しいわね』
確かにこうして連絡をするのは初めてかもしれない。
基本的に顔を合わさない時以外で話したことはなかったからな。
『で、どうしたの?』
この問いに俺は単刀直入で話を切り出す。
『もっと給料を上げろ』
『……はい?』
『聞こえなかったか? 給料を上げろと言っているんだ』
フィーネは俺が何を言っているのかイマイチ分かっていないらしく、会話が噛み合わない。
『どうしたのいきなり。今日は給料日なのに……』
『その給料の額が問題なんだ!』
思わず声を張り上げる。
そして俺は給料についての不満をあますことなくぶちまける。
するとフィーネは、
『新人の内はみんなそうよ、キャリアを重ねていくごとに給料は増えるの。あとは出来高かな』
『キャリアの件は仕方がないが、出来高はどうなんだ? 俺はとてつもなく学園に貢献していると思っているのだが』
『毎回の授業が自習の講師に出来高分を支払うわけにはいかないわよ』
『ぐっ……』
フィーネは俺の授業形態を知っているようだった。
『出来高=人気じゃないんだから、その辺は自分で理解しなさいよね』
『むぅ……』
直談判で無理矢理にでも給与を上げようと計画していたつもりが逆に丸め込まれている。
だがしかし、俺は引き下がらない。
『頼む! もう少しだけ上げてくれ! このままじゃ生きていけん!』
俺は勢いだけで頼み込む戦法にシフトする。
『あなたの頼みでもさすがに出来ないわ。だから兼業でハンター業もやればって言ったのに……』
ああ、確かそんなことをいつの日か言っていた気がするが、まったく聞いていなかった。
だが、そんなことを言ってももう遅い。
俺はとにかく頼み込んだ。
『もう……だからできないって言ってるでしょ』
(このロリババア……このレイナード・アーバンクルス様がお願いしますと頼んでいるというのに……!)
自分勝手ながら機嫌が悪くなってくる。
(こうなったら……)
あまり使いたくなかったが、俺は最後にして最強の口述でフィーネに頼む。
『なぁフィーネ。礼と言ってはあれだが”いい奴”を紹介するよ』
『いい奴? 誰なの?』
『英雄時代の友人だ。そいつも確か婚約相手を探していたな』
『えっ!? 男!?』
フィーネはすぐさま食いつく。
彼女も今年で36になる。
そろそろ将来のパートナーを見つけないとと危機感を覚えていた。
神魔団ナンバー3のロリババアも相手探しに必死なわけだ。
『ああ、しかもイケメンで金も持っているぞ』
『……ほ、ホントなの……?』
妙に疑い深い。
それもそのはずフィーネは俺の過去を知る者の一人。
人と関わるのが苦手だったという事を知っているからだろう。
ちなみにその男とは俺の実の弟のことである。
彼もまた俺の血を引く有能なキャスターであったが、途中でキャスターを止めて医学の道へと進んだ。
『な? 紹介するから頼む!』
これで断られたら断念しよう……そう思っていた。
だが、
『わ、分かったわよ。今回だけよ?』
『ま、マジ!?』
『ま、まぁ……説明不足だった私のせいでもあるし』
(よっしゃ、きたぁぁぁぁ!)
心の底から喜ぶ俺。
そして彼女からその男を紹介することを忘れないようにと強く言われる。
『分かった? 約束、忘れないでよ?』
『分かった分かった。任せておけ』
ということで俺の給料マシマシ作戦は成功で終わった。
「はぁ……買い物に行かねば……」
そして俺は夕飯の材料を買うべく、王都の街に繰り出すのであった。
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