この歴代最強の新米魔王様、【人間界】の調査へと駆り出される~ご都合魔王スキルでなんとか頑張ります!~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第16話:お友達計画

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「あーあ、今日もしんどいなぁ~なぁイブリス」
「お、おう……」
「マジで学園の美女と連絡先とか交換できたらやる気でるのになぁぁぁ」
「お前の原動力は女なのか……」

「当たり前だ!」と声を張るザック。
 
 今日は学園初日から次の日。俺とザックは教室で雑談をしながら講師が来るのも待っていた。
 一応定時には皆、クラスに集まる者のやはり雰囲気は未だ重苦しい状態が続いていた。
 
「こんな空気じゃなければどんどん話に行くのに……美女限定で」
「そこは揺らがないんだな」
「揺らぐも何も俺はそのためにこの学園の受験勉強を必死こいて頑張ったんだ。合格したんだからなんかご褒美くれてもいいはずなのによ……」
「そのため……ってまさかここを受けた理由って」
「ああ、美女とキャッキャウフフするためだ。ホルンは女生徒の割合の方が多いからな。その上美人な貴族令嬢もたくさん入学してくる。まさに美女の宝庫ってわけさ」

 は、はぁ……

 受験動機があまりにもくだらな過ぎて思わず溜息が出てしまう。しかもその上Sクラスにいるという大成功っぷり。
 彼が言うには毎年Sクラスには必ずと言ってもいいほど美女が一人はいるとのこと。だがザック曰く、今年はかなりレベルが高いとのことで例年より美女の割合が増していると数分間かけて力説してくれた。

 というか何でこいつはそんなことを知っているのか。寧ろそっちの方に焦点を当てて聞きたかったのだが、まぁ特別興味があるわけではないのでスル―しておく。

「……んなわけで俺は美女たちとまずはお友達になりたいんだ! 特にあそこに座っているセレスさん。あの人はこのクラスでも美貌が一つ抜けていると思うね」
「まぁ……容姿はな」
「は? 容姿はってなんだよ容姿はって! あんな美女、中身もいいに決まってるだろ! 美女に外れはないんだから!」
「そ、そういうもんなのか……?」
「おうよ。とにかく、俺は美女にお友達をバンバン作る! そして俺だけのハーレム学園生活を築き上げるのだ!」

 お、おお……なんというやる気だ。その真剣な目を見る限り、ホントにそのためにこの学園に入ってきたんだという事が伺える。
 
 だがザックよ、その歪んだ考えは今すぐ改めた方がいいと思うぞ。いやなるべく早く……そうしないと取り返しのつかないことに……
 と、本人に言いたいところだが彼の思想を真向から否定するのもどうかというもの。
 
 魔界でも俺は魔王として様々な意見を民から聞くが、もちろんその中には常識では考えられない歪んだ思想が生まれることも珍しくはない。
 だがそれを真向から否定することはたとえ魔王である俺でもすることはできない。
 思想というものはいわばその人物の個性そのもの。それを否定するのは魔権剥奪、人間界でいうところの人権侵害にあたる。

 魔族の上に立つ者として容易なことはたとえ相手が人間であろうとも慎まなければならないのだ。

「……ザック、頑張れよ。色々と」

 ザックの肩を叩き、労いの言葉をかける。

 すると、

「は、何言ってるんだイブリス。お前にも手伝ってもらうぞ?」
「……え……?」

 先ほどまでヘラヘラと笑っていたザックがいきなり真顔でそう言いだす。

「いや手伝うって……何を?」
「はぁ? 決まっているだろ。俺の学内美女お友達大作戦のだよ!」

 あたかも当然だろうと言わんばかりの口調で話を進める。

「な、なんで俺が手伝わなきゃならないんだよ。もっとそういう事に詳しい友人とかいるだろ?」

 他にも適任はいっぱいいるはずだ。特にザックはその気さくで接しやすい性格から友人も多そうだし俺に頼るまでもないはず。

 だが俺がそういうとザックはいきなり下を向き、悲し気な表情をすると、

「……俺、友達いないんだよ」
「え……いないってまさか……」

 もしかしたら何らかの原因で友達がいないのかもしれないという仮説が脳内に浮かぶ。
 
(この深刻そうな顔……間違いない、彼は過去に……)

 悪いことを聞いたかなと思ったその時、彼はいきなり首を上げ、

「俺しかこの学園を受験してねぇんだよーーーーー!」

 ……は?

「いやそりゃ友達は故郷にわんさかいるさ。でも地元からここまで丸一週間かかる場所にある学校だぜ? 誰も行くわけがなく案の上ボッチだってことだ」
「あ、ああ……そう」
「ん? なんだその微妙な表情は。あ、まさかイブリス俺が正真正銘のボッチだとか思っていたのか?」
「い、いや別にそんな……」
「はっはっはっは! そんなわけあるか、俺はこう見えても地元じゃ人気なんだぜ? 自分で言うのもあれだけど顔もそこそこ整っているし、運動もそれなりにできる。地元民からは人気要素の詰め合わせみたいな男だなってよく言われるのさ」

 はあ、そうですか。

 なんか心配して損をした気分である。でもそれを聞いて安心した。
 これで俺も自らの任務を果たすための判断が下せる。

「じゃあ寧ろ俺が手伝うと邪魔になるだけだな。後は頑張ってくれ」
「いやちょっと待てどこに行く?」

 立ち上がり、教室を出ようとするとザックが止めに入る。
 
「いや、トイレだが?」
「トイレだと? 小便を出す前に今ここで出すべき答えがあるだろ?」
「はて? なんのことか」

 ポカーンと違う所を見つめる俺に目線を合わせてくる。
 
「とぼけるな、お友達計画の手伝いについてだ。答えをここで聞かせて貰おうじゃないか」
「答えも何もお前は故郷じゃ人気者なのだろう? 同じ要領で攻めれば自動的に友達は増えるんじゃないのか?」
「それとこれとは別だ。地元の友人は小さい頃から長い年月をかけてそこまでの関係に発展させた。だがここでの生活はたったの3年。それまでにより多くの美女のお友達を作るのは相当至難な業なのだ」
「だから?」
「お前に手伝ってほしいというのだ。頼む! それを達成せねば俺がわざわざここまで来た理由が……」

 俺に対し、懇願するザック。初めはドライな対応で断ったのだが、彼の積極的な頼みと廊下での公開土下座による圧倒的な攻めに負け、最終的に彼の願いを受け入れることにした。

「おお、ようやく分かってくれたかイブリス!」
「分かってたまるか。仕方なくだよ。あまりにもうるさいから」

 こんなくだらないことで注目を浴びてしまったら学園生活2日目にしてドジを踏むことになる。
 特に公開土下座の際は視線が大いに集まったものだ。
 
 できる限りならあまり顔も知られたくないくらい。常にフェイスマスクを被って生活したいまであるが逆に目立つということでリリンに却下された。
 
「……で、具体的に何をするんだ?」
「ああ、それはな……」

 学園二日目。俺は潜入調査……ではなく美女たちとお友達になるべく学内美女お友達大作戦の計画を立てようとしていた。
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