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01.魔法査定
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新作になります。
当分は毎日投稿で行く予定です。
何卒宜しくお願い致します!
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今年もこの日がやってきた。
そう、年に一度の魔法査定の日だ。
「今年こそ、G級生活から脱却だ!」
俺は意気込んでいた。
今年は自信があったのだ。
沢山魔法も学んだし、鍛錬も毎日欠かさず行った。
この一年は自分磨きに全てを費やしたのだ。
だから自信しかなかった。
ようやく”G”の不名誉から脱却できると、結果も出ていないのに湧いていた。
「……よし!」
自分の頬をバシバシと叩いて気合い注入する。
ここは王都にあるギルド本部。
煉瓦造りの巨大な建物は王都の観光スポット兼シンボルにもなっている。
で、今日はここで魔法査定が行われるってわけだ。
ちなみに魔法査定というのは年に一度行われる等級評価のこと。
世の冒険者はこの魔法査定と、諸々の検査、そして年間でこなしたクエスト件数で今後の冒険者生活が決まる。
魔法職、物理職関係なしに適性検査は行われ、F以上の査定結果を出せば次のステップへと進める。
だがこの査定でもし、査定結果Gが出てしまうと次のステップへと進むことはできず、強制的にGランクになる。
等級は全部で8段階存在し、SからGまである。
Sランク冒険者は言わずもがな、世の冒険者の憧れ的な存在。
そして誰もが目指す境地である。
待遇もその辺の中流貴族並かそれ以上の優遇が約束され、噂によればクエストをやらずとも一生遊んでくらせるらしい。
おっ、すげぇじゃん! 俺もSランク目指そ!
そう思っていた時期が俺にもありました。
でも現実はそう甘くない。
冒険者を初めてから3年、Sランクを目指していた男は未だ底辺を這いつくばっていた。
しかも一番可能性はないだろうと思っていたGランク。
Gランクという等級はいわば正真正銘の最底辺。
検査はこのG判定が出た瞬間に足切りされ、後一年間の冒険者生活が決定してしまう。
要は冒険者カーストでは救いようのないクソ雑魚レベルってわけだ。
が、別にギルドからの待遇が悪くなるわけではない。
冒険者保険やら何やら各種手当がおりなくなったり、受けられるクエストがかなり制限されるくらいだ。
でも、冒険者にとってクエストを制限されるってのはまぁ辛いこと辛いこと。
だってGランク如きに回ってくるクエストなんてそこら辺のガキンチョでも達成できるような内容ばかり。
もちろん、報酬なんて酒場で一杯やれるくらいの小遣い程度しか貰えない。
それじゃあ生計立てられないじゃん!
まさにその通りである。
だから最近はアルバイトもして何とか生計を立てている。
(だがしかし……!)
俺は心の中でそう叫ぶと、グッと拳を握りしめる。
(そんな悲しいひとときとはもうおさらばだ!)
今日で俺はGランク生活に終止符を打つ。
その為に俺はこの一年間を過ごしてきた。
知識の吸収、鍛錬での実践、そして試行錯誤の繰り返し。
360日以上続けてきたこのルーティーンは全てこの日に捧げてきたようなもの。
「……いくか」
俺は今まで自分が過ごしてきた時間を思い出しつつ、建物の中に入っていった。
♦
「うわぁ……すげぇ人だな」
本部内に入るとそこはもう人だかりばかり。
あっちを見てもこっちを見ても、人、人、人。
人酔いしてしまいそうなほどの数の冒険者が集まっていた。
「ま、そりゃそうか。今日は検査日だもんな」
検査期間は一週間設けられており、都合の良い日を一日決めて受けることになっている。
とはいってもここは大陸中の冒険者を管理するギルドの総本部。
検査もここでしかやらないため、そりゃ人混み状態になるよって話。
「あの人の防具すげぇな……多分Aランク以上か」
大体防具やその他装備などでランクが分かる。
そんなことしなくても人の集まりの中心にいる奴が大体Aランク以上の冒険者だ。
そんな奴らを見るたびに”いい暮らししてんだろうなぁ”って思ってしまう。
え? 俺の装備?
そんなこと聞かなくても分かるだろ。
まぁ分かりやすく一言で言えば、焼肉とう○こぐらいの差があるとだけ言っておこう。
だが、それ故に悩みもあったりする。
「――お、おい見ろよあれ。Gのランスだ」
「――ホントだ。あいつまだ懲りずに冒険者やってんのかよ」
「――てか、どうやったらG判定なんて取れんのかねぇ。逆に教えてほしいわ」
「――はははっ! そりゃ言えてるぜ」
ロビーへひとたび足を踏み入れた瞬間、一気にロビー内にいる冒険者の注目が俺へと集まる。
そして至る所でコソコソと噂する声が聞こえてくる。
(バレバレだっつの……)
もう慣れた……と言えば嘘になる。
けど、仕方ないこと。
だってG判定なんて取っている冒険者は俺以外にいないから。
Gのランスってあだ名も色々な意味がある。
例えばゴミのG、グズのGなど。
まぁ詰まるところ、ネガティブに言えば最弱の冒険者、ポジティブに言えば唯一無二な存在。
それがこのオレ、ランス・ベルグランドってわけだ。
(気にするなオレ。こんな不名誉を受けるのも今日で終わりなんだから)
俺は完全スルーをしてスタスタと受付まで歩いていく。
「おはようございます、冒険者様。今日は査定の御用ですか?」
「はい、そうです」
ニコニコと営業スマイルをしてくる受付嬢に硬いスマイルで返す。
生憎笑顔は苦手なんだ。
「では、こちらに必要事項を記入してください」
受付嬢から書類とペンを受け取り、俺は黙々と筆を滑らせる。
「これで大丈夫ですか?」
「……えーっと、はい。大丈夫です。ではこの書類を持ってこちらへ」
俺は諸々の書類の受け取ると、奥の部屋へと案内される。
(いよいよか……)
さっきまで自信で満ちていたというのに急に緊張してくる。
少しばかりの不安が鼓動をどんどんアップテンポにしていった。
「こちらで適性検査を受けてください。終わったらまた受付に」
「分かりました。案内ありがとうございます」
軽く礼を言ってお辞儀すると、向こうもペコっと頭を下げてきた。
そして検査係へとバトンタッチが行われる。
「おはようございます、冒険者様。ご新規の方でしょうか?」
検査係のお姉さんがこれまた営業スマイルでそう言ってくる。
中々の美人さんだった。
「いえ、更新でお願いします」
「かしこまりました。では、持参したギルドカードをこちらに挿入してください」
魔力適性の検査ができる魔道具の隣にはギルドカードを差し込む場所があった。
ここにギルドカードを挿入することで査定結果が自動で印字されるって仕組みだ。
俺はそっとギルドカードを差し込むと、次なる指示を受ける。
「ギルドカードを差し終えましたら、こちらへと移動をお願いします」
次に受けた指示は例の魔道具の前に立てというものだった。
適性検査で行う魔道具は大きな鉄壁のような外見をしていて、真ん中にある測定装置に手を触れ、そこに魔力を流し込むことによって査定される。
確か名前は……いや、忘れたわ。
なんか魔力が生み出す独特の波動? みたいなものをキャッチしてその振れ幅の大きさで査定結果が決まるらしい。
「それでは、これより魔法適性の検査を行います。検査盤をお手を触れ、魔力を流し込んでください」
(来たか……)
言い渡される最後の指示。
高まる鼓動を抑え、俺は検査盤へと静かに手を触れ――ゆっくりと魔力を流し込んだ。
すると、突然魔道具からガタガタという騒音が聞こえてくる。
どっちかというと良からぬ音。
すぐ近くにいた検査係のお姉さんも顔を顰めていた。
だがすぐにその音は止むと、査定終了を告げる無機質な音が流れた。
「あ、査定終わりましたね」
どうやら無事査定はできたようで、検査係のお姉さんはホッと一息つく。
そして差し込んだギルドカードが挿入部分からススーッと出てきた。
(ど、どうだ……?)
さっきよりも高まる心臓の音。
今、お姉さんが手に持っているギルドカードに俺の今後全てがつまっている。
さぁ、どうだ!
険しく見守るオレ。
そして、受付嬢の口から出た言葉は――
「あ、あのぉ……」
「通過ですか!?」
心が先走り、つい情熱的に言葉が出てしまう。
だが、それを聞くと受付嬢はすぐに首を振った。
「い、いえ……申し訳ありませんが、検査はここで終了となります」
「……はい? それって……」
「はい……残念ですが……」
俺は一瞬自分の耳を疑った。
そしてすぐにギルドカードを見せてほしいと頼み、自分の目でその真実を確かめることに。
だが……
「う、ウソ……だろ」
ギルドカードの右上らへん。
そこにデカデカと書いてあったのは冒険者ランクGの文字だった。
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第一話をお読みいただきありがとうございます!!
良ければお気に入り登録していただけると嬉しいです!!
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今年もこの日がやってきた。
そう、年に一度の魔法査定の日だ。
「今年こそ、G級生活から脱却だ!」
俺は意気込んでいた。
今年は自信があったのだ。
沢山魔法も学んだし、鍛錬も毎日欠かさず行った。
この一年は自分磨きに全てを費やしたのだ。
だから自信しかなかった。
ようやく”G”の不名誉から脱却できると、結果も出ていないのに湧いていた。
「……よし!」
自分の頬をバシバシと叩いて気合い注入する。
ここは王都にあるギルド本部。
煉瓦造りの巨大な建物は王都の観光スポット兼シンボルにもなっている。
で、今日はここで魔法査定が行われるってわけだ。
ちなみに魔法査定というのは年に一度行われる等級評価のこと。
世の冒険者はこの魔法査定と、諸々の検査、そして年間でこなしたクエスト件数で今後の冒険者生活が決まる。
魔法職、物理職関係なしに適性検査は行われ、F以上の査定結果を出せば次のステップへと進める。
だがこの査定でもし、査定結果Gが出てしまうと次のステップへと進むことはできず、強制的にGランクになる。
等級は全部で8段階存在し、SからGまである。
Sランク冒険者は言わずもがな、世の冒険者の憧れ的な存在。
そして誰もが目指す境地である。
待遇もその辺の中流貴族並かそれ以上の優遇が約束され、噂によればクエストをやらずとも一生遊んでくらせるらしい。
おっ、すげぇじゃん! 俺もSランク目指そ!
そう思っていた時期が俺にもありました。
でも現実はそう甘くない。
冒険者を初めてから3年、Sランクを目指していた男は未だ底辺を這いつくばっていた。
しかも一番可能性はないだろうと思っていたGランク。
Gランクという等級はいわば正真正銘の最底辺。
検査はこのG判定が出た瞬間に足切りされ、後一年間の冒険者生活が決定してしまう。
要は冒険者カーストでは救いようのないクソ雑魚レベルってわけだ。
が、別にギルドからの待遇が悪くなるわけではない。
冒険者保険やら何やら各種手当がおりなくなったり、受けられるクエストがかなり制限されるくらいだ。
でも、冒険者にとってクエストを制限されるってのはまぁ辛いこと辛いこと。
だってGランク如きに回ってくるクエストなんてそこら辺のガキンチョでも達成できるような内容ばかり。
もちろん、報酬なんて酒場で一杯やれるくらいの小遣い程度しか貰えない。
それじゃあ生計立てられないじゃん!
まさにその通りである。
だから最近はアルバイトもして何とか生計を立てている。
(だがしかし……!)
俺は心の中でそう叫ぶと、グッと拳を握りしめる。
(そんな悲しいひとときとはもうおさらばだ!)
今日で俺はGランク生活に終止符を打つ。
その為に俺はこの一年間を過ごしてきた。
知識の吸収、鍛錬での実践、そして試行錯誤の繰り返し。
360日以上続けてきたこのルーティーンは全てこの日に捧げてきたようなもの。
「……いくか」
俺は今まで自分が過ごしてきた時間を思い出しつつ、建物の中に入っていった。
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「うわぁ……すげぇ人だな」
本部内に入るとそこはもう人だかりばかり。
あっちを見てもこっちを見ても、人、人、人。
人酔いしてしまいそうなほどの数の冒険者が集まっていた。
「ま、そりゃそうか。今日は検査日だもんな」
検査期間は一週間設けられており、都合の良い日を一日決めて受けることになっている。
とはいってもここは大陸中の冒険者を管理するギルドの総本部。
検査もここでしかやらないため、そりゃ人混み状態になるよって話。
「あの人の防具すげぇな……多分Aランク以上か」
大体防具やその他装備などでランクが分かる。
そんなことしなくても人の集まりの中心にいる奴が大体Aランク以上の冒険者だ。
そんな奴らを見るたびに”いい暮らししてんだろうなぁ”って思ってしまう。
え? 俺の装備?
そんなこと聞かなくても分かるだろ。
まぁ分かりやすく一言で言えば、焼肉とう○こぐらいの差があるとだけ言っておこう。
だが、それ故に悩みもあったりする。
「――お、おい見ろよあれ。Gのランスだ」
「――ホントだ。あいつまだ懲りずに冒険者やってんのかよ」
「――てか、どうやったらG判定なんて取れんのかねぇ。逆に教えてほしいわ」
「――はははっ! そりゃ言えてるぜ」
ロビーへひとたび足を踏み入れた瞬間、一気にロビー内にいる冒険者の注目が俺へと集まる。
そして至る所でコソコソと噂する声が聞こえてくる。
(バレバレだっつの……)
もう慣れた……と言えば嘘になる。
けど、仕方ないこと。
だってG判定なんて取っている冒険者は俺以外にいないから。
Gのランスってあだ名も色々な意味がある。
例えばゴミのG、グズのGなど。
まぁ詰まるところ、ネガティブに言えば最弱の冒険者、ポジティブに言えば唯一無二な存在。
それがこのオレ、ランス・ベルグランドってわけだ。
(気にするなオレ。こんな不名誉を受けるのも今日で終わりなんだから)
俺は完全スルーをしてスタスタと受付まで歩いていく。
「おはようございます、冒険者様。今日は査定の御用ですか?」
「はい、そうです」
ニコニコと営業スマイルをしてくる受付嬢に硬いスマイルで返す。
生憎笑顔は苦手なんだ。
「では、こちらに必要事項を記入してください」
受付嬢から書類とペンを受け取り、俺は黙々と筆を滑らせる。
「これで大丈夫ですか?」
「……えーっと、はい。大丈夫です。ではこの書類を持ってこちらへ」
俺は諸々の書類の受け取ると、奥の部屋へと案内される。
(いよいよか……)
さっきまで自信で満ちていたというのに急に緊張してくる。
少しばかりの不安が鼓動をどんどんアップテンポにしていった。
「こちらで適性検査を受けてください。終わったらまた受付に」
「分かりました。案内ありがとうございます」
軽く礼を言ってお辞儀すると、向こうもペコっと頭を下げてきた。
そして検査係へとバトンタッチが行われる。
「おはようございます、冒険者様。ご新規の方でしょうか?」
検査係のお姉さんがこれまた営業スマイルでそう言ってくる。
中々の美人さんだった。
「いえ、更新でお願いします」
「かしこまりました。では、持参したギルドカードをこちらに挿入してください」
魔力適性の検査ができる魔道具の隣にはギルドカードを差し込む場所があった。
ここにギルドカードを挿入することで査定結果が自動で印字されるって仕組みだ。
俺はそっとギルドカードを差し込むと、次なる指示を受ける。
「ギルドカードを差し終えましたら、こちらへと移動をお願いします」
次に受けた指示は例の魔道具の前に立てというものだった。
適性検査で行う魔道具は大きな鉄壁のような外見をしていて、真ん中にある測定装置に手を触れ、そこに魔力を流し込むことによって査定される。
確か名前は……いや、忘れたわ。
なんか魔力が生み出す独特の波動? みたいなものをキャッチしてその振れ幅の大きさで査定結果が決まるらしい。
「それでは、これより魔法適性の検査を行います。検査盤をお手を触れ、魔力を流し込んでください」
(来たか……)
言い渡される最後の指示。
高まる鼓動を抑え、俺は検査盤へと静かに手を触れ――ゆっくりと魔力を流し込んだ。
すると、突然魔道具からガタガタという騒音が聞こえてくる。
どっちかというと良からぬ音。
すぐ近くにいた検査係のお姉さんも顔を顰めていた。
だがすぐにその音は止むと、査定終了を告げる無機質な音が流れた。
「あ、査定終わりましたね」
どうやら無事査定はできたようで、検査係のお姉さんはホッと一息つく。
そして差し込んだギルドカードが挿入部分からススーッと出てきた。
(ど、どうだ……?)
さっきよりも高まる心臓の音。
今、お姉さんが手に持っているギルドカードに俺の今後全てがつまっている。
さぁ、どうだ!
険しく見守るオレ。
そして、受付嬢の口から出た言葉は――
「あ、あのぉ……」
「通過ですか!?」
心が先走り、つい情熱的に言葉が出てしまう。
だが、それを聞くと受付嬢はすぐに首を振った。
「い、いえ……申し訳ありませんが、検査はここで終了となります」
「……はい? それって……」
「はい……残念ですが……」
俺は一瞬自分の耳を疑った。
そしてすぐにギルドカードを見せてほしいと頼み、自分の目でその真実を確かめることに。
だが……
「う、ウソ……だろ」
ギルドカードの右上らへん。
そこにデカデカと書いてあったのは冒険者ランクGの文字だった。
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