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04.まさかのお誘い

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 俺はとんでもない人と顔を会わせて話していた。
 最初は普通の女の子だと思っていたのに……

(王女ってどういうことだよ!?)

 なんと相手は我が国のグリーズ王国の王女様だったのだ。
 それはつまり、国王陛下の娘さんということ。

 俺は王都の人間じゃないから、言われるまで分からなかった。
 
 まぁ言われてみれば何となく分かる気がする。

 まずかなりの美少女という点で頭一つ抜けているのと、立ち居振る舞いに上品さがあった。
 きちんとした教育を受けてきたんだなぁ~という場面はまだ会ったばかりだというのに何度かあった。

 で、今彼女は騎士団のおっさん方と話しがあるとのことで酒場の外にいる。

「はぁ……なんかとんでもない人に目をつけられたな……」
 
 あ、嫌とかそういうわけじゃないぞ。
 
 ただただ、驚いているだけ。

 まさか一国の姫君に対して貴族でもない俺が対等に話しているんだ。
 
 普通なら「無礼者」と言われて処刑案件になりかねないこと。

 しかも俺はその姫様に魔法を教えてほしいと言われてしまった。
 まだ返事はしていないけど、断ったら断ったらで怖い。

「前途多難な気がしてならないな……」

 肘をつき、「はぁ」とため息を漏らしていた時だ。
 隣に座っていた中年冒険者二人の会話が耳に入ってきた。

「おい、聞いたか? 今年もまた出たらしいぜ。魔道具壊しが」

「魔法査定の話だろ? 聞いた聞いた。どうも今年で4回目らしいな」

「ああ。しかも3年連続での出来事だ。原因は全部、魔力過多による内部破損らしいぞ」

「マジかよ。どんだけ魔力お化けなんだよそいつ……」

「多分犯人はSランク級の冒険者だとは思うがな……」

「そうだとしてもおかしいぜ。あ、もしかして人間じゃないんじゃね?」

「はははっ! そりゃあるかもな!」

 へぇ……世の中にはとんでもない人もいるもんだな。
 あのでっかい魔道具をぶっ壊せるほどの魔力持ちなんて、そうそういない。

 ま、G級の俺にとっては雲の上のような存在であることに変わりはないが。

「すみません。お待たせしてしまって」

 ……と、ここでソフィアと騎士団のおっさん方が帰ってきた。
 そして早々に口を開いたのはソフィアではなく、例のゴッツイ騎士様の方だった。

「ランス殿、お話はソフィア殿下より全てお伺いした。殿下を救っていただいたこと、心より感謝を申しあげる!」

「え、ああ……いや」

 開口一番に言ってきたのはお礼の一言だった。
 騎士団の人は皆、俺に深々と頭を下げてくる。

「あ、頭を上げてください騎士様。俺は別にたいしたことは……」

「いえ、貴方は殿下の恩人です。それに、例のイェーガーウルフを一人で討伐なさったとか」

「そ、それは……そうですけど」

「実は例の魔物出現の件、騎士団には討伐命令が発令されていたのだ。もちろん、我々国家騎士だけではなく、ギルドでも等級の高い冒険者に緊急招集をかけていて一時は大混乱になっていた」

「そ、そうだったんですか……」

 まぁA級危険指定の魔物が出たんだから当然といえば当然。
 だがその魔物は俺によって討伐された。

 突然現れたとてつもない魔力反応が一瞬にして消えたことで、逆に混乱を招いていたという。

「最初は魔物発生すらもフェイクだと私は考えていたが、殿下の話を聞いて納得した。殿下のお命を救ってくれたことに加えて、王都の民を守ってくれたその武勇に改めて深く感謝を申し上げたい!」

「い、いや……そんな大袈裟な」

「大袈裟ではない! あのA級危険指定に認定されているイェーガーウルフをたった一人で討伐したのだ。これは私の知る限りでは前代未聞の出来事ですぞ!」

「そう……なんですか」

 興奮する騎士様。

 どうやら俺は結構すんごいことを成し遂げてしまったらしい。
 現役の国家騎士様がそう言うんだ。間違いない。

 ……正直、全く実感湧かないけど。

「それで、ランス殿。いきなりで悪いのだが、これから少し時間を貰えないだろうか?」

「え、別にいいですけど……どうしてですか?」

「実は今回の一件を国王陛下に報告したところ、是非ともお会いしたいという一報があってな。ランス殿を王城に招待してほしいと言われたのだ」

「はぁ……国王陛下が俺に……って、えっっ!?」

 一瞬聞き流しそうになったところを巻き戻す。
 そしてその言葉の重大さをようやく理解した。
 
「ま、マジですか!? その話!」

「マジです」
 
 真顔でそう話す国家騎士様。
 
 てかいつ国王に報告したんだ? 
 まだそんなに時間は経っていないはずなのに。

 ある意味怖いよ、本気マジで。

「ごめんなさい、ランスさん。いきなりこのような話を持ち掛けてしまって……」

「い、いやいやいや……謝らないでください王女殿下!」

 むしろ俺が謝りたいくらい。
 知らなかったとはいえ、王女殿下に堂々とタメ口をきいていたのだから。

「で、どうだろうかランス殿。我々の招待を受けてくれるか?」

 受けるも何も国王陛下直々の誘いを蹴る方がおかしいというもの。
 もう既に俺には選択権などないのだ。

 それにどうせ断っても他にやることなんてないし……。

「分かりました。国王陛下の望みとあらば、是非招待を受けたく思います」

「感謝する。では、早速行くとしよう」

「え、もう行くんですか?」

「もちろんだ。さぁ、行きますぞ!」

「ランスさん、どうぞこちらへ」

「え、えぇ!?」

 まだ何も準備してないのに……!

 俺は流れるままにソフィアと騎士様たちに連れていかれる。

 あぁ……なんかとんでもないことになっちゃったな……。
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