18 / 160

18.クエストを受けよう

しおりを挟む

「とうちゃーく!」

「やっぱり人が多いですね……」

「職業別の人口ではナンバーワンだからな、冒険者は」

 というわけでギルド本部にやってきました。
 今日も本部は人で一杯!

 検査日はもう終わっているため、その時ほど人で溢れているわけではないが、流石は本部。
 それなりの人口密度である。

 と、その時だ。

「――おい、あれ……」

「――お、Gのランスじゃねぇか。連れがいるなんて珍しいな」

「――ああ。でもそれより、イェーガーウルフを倒したってのは本当なのか? 昨日の酒の席でもその話で持ち切りだったが、未だに信じられないな」

「――同意見だ。でもギルドは公式に認定したんだろ? 噂によればギルドマスターが直々に認定したらしいじゃんか」

「――ま、マジかよそれ! ってことはやっぱり……」

 あちらこちらからヒソヒソ聞こえてくる会話。
 内容はもう言わずもがな先の魔物騒動について。

 実はもう既にギルドマスターからギルド本部に今回の騒動についての詳細が伝えられているらしい。
 もちろん、俺が倒したっていう記録も全て。

 どっから漏れたのかは知らないけど。

「ごめんな、ソフィア。少し視線が……」

「い、いえ……わたしは大丈夫です」

 とはいってもソフィアは完全お忍びで冒険者をやっている。
 知っているのはギルドマスター含め、一部のギルド職員のみ。

 当の本人は最悪バレてもいいかなって言っているが、隠し通せるならその方が良い。

(あまりここで注目を浴びるのは宜しくないな)

「ソフィア、少し人目を避けるぞ」

「えっ、あ、はい」

 一旦、俺たちはひとけの少ない所に移動。
 俺も黒のマントをうまい具合に使って顔を隠すことに。

「ところでソフィア。クエストの受け方とかはもう分かっているんだよな?」

「はい、大丈夫です。あとクエスト後の報告の仕方や報酬の受け取り方も分かっています! この冒険者ブックのおかげですけど」

「ぼ、冒険者ブック! 懐かしいな、それ!」

 説明しよう。
 冒険者ブックとは冒険者登録されたその日に貰える初心者用ガイドブックのことである。

 クエストの受け方やその後の処理まではびっちり書かれており、右も左も分からない初心冒険者のお助けアイテムになっている。

 が、本当に基礎の基礎しか書いていないのでこれ一冊あれば完璧! というほどではない。

 あくまで何にも分からない人向けのアイテムなので本自体もかなり薄いし、文量もそこまでない。

 ちなみに俺はこの冒険者ブック、渡されたその日に無くしました!

 というか無くす前から見ること自体が面倒で開いてすらいない。

 しかしながら、ソフィアはこのガイドブックを余すところなく読破したようで、基礎を説明する必要はないご様子。

(流石はソフィアだ。マジメだなぁ……)

 勉強嫌いな俺にとっては厳しいものがあった。
 学生時代も勉強が嫌過ぎて毎朝白目剥きながら登校していたのを思い出す。

(ま、そんなことはどうでもいい。とりあえずは……)

「なら、早速掲示板観覧に行きますか」

 俺はソフィアを連れてクエスト掲示板の方へ。
 
 冒険者ギルドでのクエスト受注方法は万国共通だ。
 どこのギルドにもクエスト掲示板というものがあり、依頼が送られてくると、その掲示板に張り出される。

 冒険者はこの掲示板から受注したいクエストの依頼書を持ち出し、受付で認可を取り、許可が下りれば受注完了となる。

 クエストランクもS帯からG帯まであり、自身の等級を越えるクエストを受注することは基本出来ない。
 例えばAランク帯の冒険者はAからGまでのクエストは受けられるが、S帯のクエストは明確な理由がない限り不可能というわけ。

 理由さえあればいいというのは冒険者法だか何だかよく分からない法規に当てはまっている場合にのみ適用されるということらしい。

 ちなみにこれはあくまでソロであった場合の話。

 二人以上のパーティーの場合は少し勝手が違う。
 
「う~ん、どれを受けるか」

「そうだな~とりあえずソフィアと同じランク帯までなら何でも受けられるから好きなのを選ぶといいよ」

「わ、分かりました!」

 そう、実は冒険者の制度には少し裏がある。

 それはパーティーの場合に限り、下位のランクでも上位のランクのクエスト受けることができるという特別な制度。

 例えば、パーティー内にAランクがいて他の人間がBランク帯でもギルドから許可さえ下りればクエストを受注することが可能ということ。

 ただ、それは許可が下りて初めて成立する話になる。

 ソフィアの総合等級はBになるため、許可が下りればBランクのクエストをGランクの俺でも受けることができるわけだ。

「えーっと……じゃあこれにしようかな」

 と、ソフィアが一枚の依頼書を掲示板から剥がし、手に取った。

「なになに……レッドウルフの討伐か」

 ソフィアが手に取った依頼書はCランククエスト。
 内容はレッドウルフの群れの討伐だった。

 レッドウルフとはその名の通り、赤い毛皮を持ったモンスターで種族別だと狼族に当たる。
 ちなみにイェーガーウルフも狼族だが、あれは魔物化した少々特殊な存在。

 レッドウルフは魔物化していないため魔物ではなく、モンスターに分類される。

「どうでしょうか? ランス」

「いいんじゃないか。レッドウルフは魔法耐性の強いモンスターだから魔法の練習にも最適だしな」

「じゃあ、これにします!」

 ということで受注するクエストは決まった。
 
 後は許可が下りれば――

「はい、問題ありません」

「即答!?」

「やったぁ! これでクエストを受けることができますね!」

 受付に持って行った途端、受付のお姉さんは何も確認することなく許可を出してくれた。
 本来ならば本人確認とちょっとした検査が入るはずなのに……

「え、えーっと本当にいいですか?」

「はい。一応ギルドマスターからGランク冒険者のランス・ベルグランド様だけはどのクエストも通していいとお達しが来ているので」

「ま、マジですか……」
 
 どのクエストってことはSランククエストもOKってことなのか?

 聞いていないぞ、そんな話!

「ら、ランス……? どうかしました?」

「い、いや……何でもない」

(ま、とりあえず許可は下りたのでよしとしよう)

 俺たちは受付で必要な手続きを済ませ、受注を完了させた。

「はい、これで受注は完了となります。クエスト達成次第、24時間以内に再度受付へとお申し出くださいませ。クエストの途中破棄はキャンセル代金を頂戴致しますのでご了承を」

 受付のお姉さんは注意事項をさらっと説明すると、認印を押した依頼書を渡してくる。

「では、ご武運をお祈り申し上げます」

「ありがとうございます。じゃ、行くか!」

「はい!」

 こうして。
 俺とソフィアの初クエストは幕を開けたのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

処理中です...