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87.驚きと葛藤
しおりを挟む「お、お父様が……撃たれた……?」
激震が走るマスタールーム内。
俺たちもその真実を聞くなり、開いた口が塞がらなくなった。
「ど、どういうことですか!? お父様が撃たれたって……! お父様はご無事なのですか!?」
ソフィアはすぐさまアルバートさんのもとへと駆け寄り、両肩に手を乗せ、肩を揺らす。
アルバートさんはそんな乱れかけていたソフィアを目の前にしながらも、口を開いた。
「お、落ち着いてください殿下! ご安心ください、王は無事です」
その言葉を聞くと、ソフィアの動きはピタリと止まった。
同時に自分の行いに非を感じたのか、
「ご、ごめんなさい……取り乱してしまって……」
すぐに皆に謝罪をする。
こればっかりはしょうがないことだ。
自分の親がそういう目に遭えば、誰だって気を保てなくなる。
それにしても、フォルト国王の命が無事で本当に良かった。
「アルバート、話を聞かせてもらえるかしら? もしかしたら、わたしたちがこれからしようとしていた話と何か関係があるのかもしれません」
真剣な眼を三人へと向け、そう話すソフィア。
その姿はいつもの冷静なソフィアそのもので、さっきまでの乱れが嘘のよう。
こういう切り替えの早さはさすが王女様と言ったところだ。
アルバートさんら三人は互いに顔を合わせると、同時にコクリと頷く。
「もちろんです、お話しましょう。皆さんも座ってください」
そういうとアルバートさんは俺たちをテーブルの方まで誘導する。
そして各々ソファに腰を下ろし、緊急会議が始まったのだった。
♦
「昨晩のことです。使用人の一人が王室で銃声らしき音を聞いたとのことで、急いで駆けつけたところ、陛下がベッドのすぐ横で血を流して倒れているのを見つけまして……」
「銃声? 相手は魔法とかではなく、飛び道具を使ったのですか?」
「ええ、恐らく魔法銃でしょう。胸部に数か所魔法弾のようなもので撃たれた形跡がありました」
会議が始まってから、アルバートさんの口から知る限りの情報が全員に語られた。
纏めると事件が起きたのは昨日の夜。
一人の使用人が王室へ向かう途中に謎の銃声を聞き、駆けつけたところ、フォルト国王が倒れていたという。
ちょうどその時は護衛騎士の交代の時間で部屋の前には誰もおらず、警備も業務上、その時間帯は少々手薄になる頃だったらしい。
「ちなみに犯人はどうなったんですか?」
「それが、情けないことに姿すら見ることなく逃がしてしまった。我々としても何がどうなったのか全く分かっていない状況なのだ……」
俺の質問にアルバートさんは俯きながら、言いにくそうにそう話す。
要するに犯人の姿かたちは不明のまま、取り逃がしてしまったということか。
「いま調査班が原因究明を行っているが、未だに手掛かりは見つかっていない。だが、一つだけ確実なことがある」
「確実なこと……? それって、まさか……」
「ああ、君の察しの通りだ。恐らく事件が起きるだいぶ前から、城内にスパイが入り込んでいたのだろう。そうでなければ、ここまで完璧な犯行に及ぶことは不可能だ。王城内外の警備も考慮するとな」
「やっぱり……」
本来ならば針の穴一つない王城内だが、何かしらの手口を使って城内に潜入できれば今回の犯行は十分に可能だ。
多分、城内の使用人か何かに紛れ込んで調べていたのだろう。
犯行に及ぶまでのルート。
警備関係の時間帯。
そして脱出経路の発見。
犯人はこれら全ての内部事情を知った上で犯行に及んだと考えられる。
と、なると俺が得た情報は……
「あの、アルバートさん。一つ自分からもいいですか?」
「なんだ?」
俺はソフィアたちの方へと視線を向ける。
すると約一名を除く二人はアイコンタクトで意思表示をしてくれた。
これは俺の口から話すほかない。
俺が得た情報はこの事件に大きく、いや直結していると言っても過言ではない。
どういう連中だったか、どういう話をしていたか。
場の空気を味わった俺にしか話せないことはたくさんあるしな。
「実は……」
この後。
俺は三人に例の闇計画についてのことを洗いざらい話した。
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