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158.恩返し
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「ここをまっすぐに行けば排水路から地上に出れるわ。あとは自分たちで何とかして」
イリアは俺たちを案内すると、背後に回った。
「イリアさん、最後に一つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「どうして逃がしてくれるのです。貴女たちにとってわたしたちは邪魔な存在なはず」
「理由なんて特にないわ。前に貰った恩を返す、それだけよ」
「本当に、それだけなんですか……?」
ソフィアの真剣な質問にイリアは目線をそらすと、
「本当よ。わたしは敵側の人間、それ以外に何もない。今のわたしは一人の人間として振舞っているに過ぎないわ」
「でもこのことがバレたら……」
「間違いなく、国家反逆罪で死刑ね」
「でしたら……!」
ソフィアが強く前に出ると、イリアは首を振った。
「でも仮にそうなったとしてもわたしは構わない。それだけの覚悟を持っているから」
「イリアさん……」
「だからもう、わたしのことをきにしないで。ここから先はもう、戦いしかないから」
その言葉は重みのある一言だった。
彼女だからこそ、というのもあるかもしれないが、その一言は俺たちの心に重くのしかかった。
「ほら、早く行きなさい。それと首が繋がっている内にこの国から即刻退去しなさい。わたしは貴方たちを殺したくはない」
イリアはそういうと、後ろを向いた。
「じゃあね。それと――」
「……イリアさん……」
彼女は最後に一言述べると、俺たちの前から姿を消したのだった。
♦
「本当に地上に出れたな……」
「まさか王国の地下水路がこんな造りになっていただなんて、知りませんでした」
「王国は過去に幾度も戦争を経験していますからね。裏道やら奇襲用の裏ルートやらが沢山あるのです」
「なんとも物騒な話だな……」
いままさにその戦争が起きそうなんだけども。
「それでソフィア、これからどうする?」
「どうするも何もやることは一つしかないでしょう?」
「それはそうなんだが、俺はお前の護衛役でもある。護衛対象が自ら危険なことに首を突っ込むとあれば見過ごすことは出来ない」
もちろん、俺もソフィアと同じ気持ちだ。
でも国王にソフィアを任されている以上、感情だけで動くことは出来ない。
「……わたしは覚悟の上で言っています。この先にどんな運命が待っていようと、全てを受け入れます」
「本当にいいんだな?」
「ええ。それにイリアがあれだけの覚悟を持っているんです。一国の王女として尚更背を向けることはできません」
ただし、それは強制的なことではない。
相手の同意と覚悟が分かれば、俺は従うように言われている。
あくまで尊重するのは主であるソフィアの意見。
ソフィアが同じような志を抱くなら、もう止める理由なんてものはなくなる。
「分かった。俺たちも戦おう。国の為に、そしてイリアの為にもな!」
「ありがとう、ランス!」
「では早速準備に取り掛かりましょう。まずはギルドマスターに会いにいって現状を報告しないと」
「そうですね。時間は有限です。すぐに行きましょう」
こうして。
俺たちは帝国打倒とイリアを救うため、誓いを立てたのだった。
最後に彼女の言った言葉――【ありがとう】という言葉を胸に刻んで。
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イリアは俺たちを案内すると、背後に回った。
「イリアさん、最後に一つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「どうして逃がしてくれるのです。貴女たちにとってわたしたちは邪魔な存在なはず」
「理由なんて特にないわ。前に貰った恩を返す、それだけよ」
「本当に、それだけなんですか……?」
ソフィアの真剣な質問にイリアは目線をそらすと、
「本当よ。わたしは敵側の人間、それ以外に何もない。今のわたしは一人の人間として振舞っているに過ぎないわ」
「でもこのことがバレたら……」
「間違いなく、国家反逆罪で死刑ね」
「でしたら……!」
ソフィアが強く前に出ると、イリアは首を振った。
「でも仮にそうなったとしてもわたしは構わない。それだけの覚悟を持っているから」
「イリアさん……」
「だからもう、わたしのことをきにしないで。ここから先はもう、戦いしかないから」
その言葉は重みのある一言だった。
彼女だからこそ、というのもあるかもしれないが、その一言は俺たちの心に重くのしかかった。
「ほら、早く行きなさい。それと首が繋がっている内にこの国から即刻退去しなさい。わたしは貴方たちを殺したくはない」
イリアはそういうと、後ろを向いた。
「じゃあね。それと――」
「……イリアさん……」
彼女は最後に一言述べると、俺たちの前から姿を消したのだった。
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「本当に地上に出れたな……」
「まさか王国の地下水路がこんな造りになっていただなんて、知りませんでした」
「王国は過去に幾度も戦争を経験していますからね。裏道やら奇襲用の裏ルートやらが沢山あるのです」
「なんとも物騒な話だな……」
いままさにその戦争が起きそうなんだけども。
「それでソフィア、これからどうする?」
「どうするも何もやることは一つしかないでしょう?」
「それはそうなんだが、俺はお前の護衛役でもある。護衛対象が自ら危険なことに首を突っ込むとあれば見過ごすことは出来ない」
もちろん、俺もソフィアと同じ気持ちだ。
でも国王にソフィアを任されている以上、感情だけで動くことは出来ない。
「……わたしは覚悟の上で言っています。この先にどんな運命が待っていようと、全てを受け入れます」
「本当にいいんだな?」
「ええ。それにイリアがあれだけの覚悟を持っているんです。一国の王女として尚更背を向けることはできません」
ただし、それは強制的なことではない。
相手の同意と覚悟が分かれば、俺は従うように言われている。
あくまで尊重するのは主であるソフィアの意見。
ソフィアが同じような志を抱くなら、もう止める理由なんてものはなくなる。
「分かった。俺たちも戦おう。国の為に、そしてイリアの為にもな!」
「ありがとう、ランス!」
「では早速準備に取り掛かりましょう。まずはギルドマスターに会いにいって現状を報告しないと」
「そうですね。時間は有限です。すぐに行きましょう」
こうして。
俺たちは帝国打倒とイリアを救うため、誓いを立てたのだった。
最後に彼女の言った言葉――【ありがとう】という言葉を胸に刻んで。
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