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正体不明の
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買い物も済ませて、あとは家に帰るだけだ。
頭では軽く考えていても、心の方はそううまくいかない。やはり、先ほどの下民のことが心残りなのだろう。しかし、今まで通り僕たちにできることなどなにもない。
ただでさえ、怪盗としての姿を探偵を名乗る男に見られているのだ。騒ぎを起こすなんて自殺行為でしかない。
「……魔法は拷問のために使うものじゃないはずなのに」
僕の横を通り過ぎて行った一人の男がつぶやいた。僕だってそう思うし、できればもっとまともなことに使ってほしい、でも、使う人間が不完全だと、自分の欲望を満たすためだけに使ってしまうこともあるだろう。完璧な人間などいないから、結局どの人間だって、善意を持つ人間だって、僕だっていつか誤った魔法の使い方をするかもしれない。
魔法が悪いわけじゃない……できることなら魔法をなくさないでいたい。
でもそれは詭弁だ。使い方によって悪いことができてしまうのが魔法なのだから。
「つらい?」
突然僕の顔をアルがのぞいてきた。おそらく、通りすがりの男のつぶやきが、彼女の耳にまで届いたのだろう。僕の耳に届いたのだから当然だ。
そして、彼女が僕を心配するのも当然だ。なぜなら、僕はさっきの彼と同じ考え方の持ち主なのだから。
「そうでもないよ。そりゃ魔法を奪うのは悪いことなのかもしれない。でも、本当に魔法がなくなるべきでないというんなら、僕たちがどれほど奪おうとなくならないはずだ。そうじゃないのなら、魔法なんて必要なかったってこと。僕はそう考えることに決めたから、何も辛くはない」
欺瞞だ。でも今の僕はそうするしかない。嘘で、彼女の言葉をごまかさなければ、彼女がどこかに行ってしまう気がして不安でならないのだ。
彼女のは僕なんかよりも何倍も優しいから、僕なんかのために命をも捨てかねない。
今の僕には彼女がいなければだめだ。だから、彼女を手放したくない。
「ならいいんだけど……フランは魔法が好きだから」
「同じことを何度も言わせないで。僕にとってはアルの方が大切なんだ」
妙に納得していないアルだが、僕が口でそういう以上は追及もしてこなかった。
家に着くと、なぜだか明かりがついている。
不審に思いながらも僕たちはドアを開けた。中にいたのは、警務部の制服を着たジャンヌだった。いつもなら私服で来ているはずの彼女が、制服を着ているということはいつもとは状況が違うということだ。
「エリートのあなたがどうしてこんなところに来たんですか?」
僕は出来るだけわけがわからないと驚いて見せた。何となく彼女がここを訪れた理由に気がついたからだ。
「話しが早いですね。ロードフラン、女王陛下がお待ちです。ご同行願いますか?」
「女王様が……?」
ジャンヌの話によれば女王はすでに死んでいたはずだ。つまり、女王に近い者のおよびということだろうか……しかし、伯爵の息子でしかない僕を呼び出すなんていったい何者なのだろうか。
「はい、あとアルさんもよろしければご同行を」
「平民である私が? 私のようないやしいものが女王様に会えるはずございません」
「女王様からのじきじきの指名でございます。どうかご同行を」
突然のイベントに戸惑うアルだ。まあ僕ですら意味が分からない出来事に少し動揺しているのだから、彼女が動揺するのも仕方がないだろう。
僕たちの怪盗としての活動がばれてなければよいのだが……
といっても、そんな風に不安に思っていてもしかたがないし、ばれていたのならもはや逃げることも許されないだろう。
腹をくくって女王を名乗るやからの前まで出向く以外に道は残されていないということだ。
「わかった。アルもそれでいいね?」
「うん」
それからは早かった。
ジャンヌに誘導されるがまま、裏道に止められていた馬車に乗せられ、僕たちは王宮へと運ばれた。役職がら、馬車に乗ることは多いのだが、僕は馬車があまり好きではない。
馬をこき使うという発想が気に入らないからではない。普通に魔法で移動した方が早いからだ。アルの魔法を使えばこんなゆったりした旅にはならないだろう。
しかし、魔法を使って王宮に行くというわけにもいかないというのが現実だ。
そんなことをしたら、暗殺かなにかだと勘違いされて殺されても文句は言えない。
「馬車はお嫌いですか?」
黙り込んでいた僕たちを気遣ってか、ジャンヌがそんなことを言い始める。
嫌いでも何でも、王宮に入る手段は馬車に乗るか、徒歩で行くかのどっちかしか無理なわけだから、距離的に考えて馬車で行くしかない。
「別に……」
言いたいことは色々あるが、今の僕とジャンヌは貴族と一兵士の関係でしかない。もう一人いる兵士や、御者に怪しまれるわけにもいかないため、仕方なくそうつぶやいた。
アルなんかは、おそらく面倒ごとを避けるために何もしゃべらない。
それでも、楽しい出来事も、楽しくない出来事も時間とともに終わるものだ。馬車は目的地に着いたようで、停止した。それと同時に、門番が馬車の中をあらためる。まあ王宮に不審者を入れるわけにはいかないから仕方がない。だが、貴族の中にはこんなくだらないことにクレームを入れるやからがたくさんいる。
「ドレイク卿と……アル様ですね。ご確認が取れましたので、ここからは徒歩でお願いします」
確認を取っていた門番がそう言った。
いつもなら馬車ごと中に入るのだが、怪盗の騒ぎで警戒しているのだろう。
頭では軽く考えていても、心の方はそううまくいかない。やはり、先ほどの下民のことが心残りなのだろう。しかし、今まで通り僕たちにできることなどなにもない。
ただでさえ、怪盗としての姿を探偵を名乗る男に見られているのだ。騒ぎを起こすなんて自殺行為でしかない。
「……魔法は拷問のために使うものじゃないはずなのに」
僕の横を通り過ぎて行った一人の男がつぶやいた。僕だってそう思うし、できればもっとまともなことに使ってほしい、でも、使う人間が不完全だと、自分の欲望を満たすためだけに使ってしまうこともあるだろう。完璧な人間などいないから、結局どの人間だって、善意を持つ人間だって、僕だっていつか誤った魔法の使い方をするかもしれない。
魔法が悪いわけじゃない……できることなら魔法をなくさないでいたい。
でもそれは詭弁だ。使い方によって悪いことができてしまうのが魔法なのだから。
「つらい?」
突然僕の顔をアルがのぞいてきた。おそらく、通りすがりの男のつぶやきが、彼女の耳にまで届いたのだろう。僕の耳に届いたのだから当然だ。
そして、彼女が僕を心配するのも当然だ。なぜなら、僕はさっきの彼と同じ考え方の持ち主なのだから。
「そうでもないよ。そりゃ魔法を奪うのは悪いことなのかもしれない。でも、本当に魔法がなくなるべきでないというんなら、僕たちがどれほど奪おうとなくならないはずだ。そうじゃないのなら、魔法なんて必要なかったってこと。僕はそう考えることに決めたから、何も辛くはない」
欺瞞だ。でも今の僕はそうするしかない。嘘で、彼女の言葉をごまかさなければ、彼女がどこかに行ってしまう気がして不安でならないのだ。
彼女のは僕なんかよりも何倍も優しいから、僕なんかのために命をも捨てかねない。
今の僕には彼女がいなければだめだ。だから、彼女を手放したくない。
「ならいいんだけど……フランは魔法が好きだから」
「同じことを何度も言わせないで。僕にとってはアルの方が大切なんだ」
妙に納得していないアルだが、僕が口でそういう以上は追及もしてこなかった。
家に着くと、なぜだか明かりがついている。
不審に思いながらも僕たちはドアを開けた。中にいたのは、警務部の制服を着たジャンヌだった。いつもなら私服で来ているはずの彼女が、制服を着ているということはいつもとは状況が違うということだ。
「エリートのあなたがどうしてこんなところに来たんですか?」
僕は出来るだけわけがわからないと驚いて見せた。何となく彼女がここを訪れた理由に気がついたからだ。
「話しが早いですね。ロードフラン、女王陛下がお待ちです。ご同行願いますか?」
「女王様が……?」
ジャンヌの話によれば女王はすでに死んでいたはずだ。つまり、女王に近い者のおよびということだろうか……しかし、伯爵の息子でしかない僕を呼び出すなんていったい何者なのだろうか。
「はい、あとアルさんもよろしければご同行を」
「平民である私が? 私のようないやしいものが女王様に会えるはずございません」
「女王様からのじきじきの指名でございます。どうかご同行を」
突然のイベントに戸惑うアルだ。まあ僕ですら意味が分からない出来事に少し動揺しているのだから、彼女が動揺するのも仕方がないだろう。
僕たちの怪盗としての活動がばれてなければよいのだが……
といっても、そんな風に不安に思っていてもしかたがないし、ばれていたのならもはや逃げることも許されないだろう。
腹をくくって女王を名乗るやからの前まで出向く以外に道は残されていないということだ。
「わかった。アルもそれでいいね?」
「うん」
それからは早かった。
ジャンヌに誘導されるがまま、裏道に止められていた馬車に乗せられ、僕たちは王宮へと運ばれた。役職がら、馬車に乗ることは多いのだが、僕は馬車があまり好きではない。
馬をこき使うという発想が気に入らないからではない。普通に魔法で移動した方が早いからだ。アルの魔法を使えばこんなゆったりした旅にはならないだろう。
しかし、魔法を使って王宮に行くというわけにもいかないというのが現実だ。
そんなことをしたら、暗殺かなにかだと勘違いされて殺されても文句は言えない。
「馬車はお嫌いですか?」
黙り込んでいた僕たちを気遣ってか、ジャンヌがそんなことを言い始める。
嫌いでも何でも、王宮に入る手段は馬車に乗るか、徒歩で行くかのどっちかしか無理なわけだから、距離的に考えて馬車で行くしかない。
「別に……」
言いたいことは色々あるが、今の僕とジャンヌは貴族と一兵士の関係でしかない。もう一人いる兵士や、御者に怪しまれるわけにもいかないため、仕方なくそうつぶやいた。
アルなんかは、おそらく面倒ごとを避けるために何もしゃべらない。
それでも、楽しい出来事も、楽しくない出来事も時間とともに終わるものだ。馬車は目的地に着いたようで、停止した。それと同時に、門番が馬車の中をあらためる。まあ王宮に不審者を入れるわけにはいかないから仕方がない。だが、貴族の中にはこんなくだらないことにクレームを入れるやからがたくさんいる。
「ドレイク卿と……アル様ですね。ご確認が取れましたので、ここからは徒歩でお願いします」
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