不器用な指先

merori

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夫婦、とは

日常

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「……ただいま」


我が家の玄関にはドライフラワーだの写真立てだの、特に洒落たモノは飾っていない。
少し汚れた僕のクロックスと、嫁の恵里佳(えりか)が仕事で履く黒いパンプスだけが床に散らかっている。
僕がさっきまで履いていた仕事用の革靴、それと共にこの散らかった靴達も揃えリビングに向かう。



「おかえりなさい、今日も遅かったわね」



現在、21時半。

お風呂上がり、リビングのソファーでくつろいでいたと思われる恵里佳は立ち上がり、キッチンへ向かい冷蔵庫から何かを取り出してきた。


「今日はお寿司を取ったの。宏貴もお寿司好きでしょ。私は家に帰ってすぐに食べたから、その残ったもの全部食べていいよ」


恵里佳は家事がとても苦手だ。
洗濯はかろうじて出来るのだが、掃除と料理が壊滅的に出来ない。
なので、毎日出前かスーパーやコンビニの弁当で食事をとる。


「お寿司、ありがとうね」


苦笑いして、僕は恵里佳にそう言った。



僕の職業は中学校の理科教諭だ。
残業はもちろん、部活動の副顧問も担当している。
放課後の部活動の指導、下校時の安全確認、そして担任しているクラスの採点等で帰宅は早くても20時だ。
公務員は毎週土日休みなんて夢の中の夢…いやきっと、この教職だけなのだろうけど。 


家事が壊滅的に苦手な恵里佳の仕事はとあるホワイトな会社の事務職だ。
僕と真逆で定時に上がり、19時には家に帰っている。そして、土日休みだ。


僕はちょっと細かい性格である。
どんなに残業で疲れ果てても家に帰ったらまずクイックルワイパーでフローリングを綺麗にする。
そしてカーペットをカーペット専用のローラーで埃を取る。
お風呂と洗面台はカビが生えやすいから丁寧に掃除する……どんなに疲れていても。

平日は学校で給食を食べられるが、土日は節約のために出前や弁当を取らず、僕が料理をする。
担当する部活動では土日どちらかが練習日だ。
その時ももちろん自分でお弁当を作り、節約する。
そのため、金曜の仕事終わりはスーパーへ寄って安売りしている野菜や肉、そして冷凍食品を買って帰るのが日常である。



本当は恵里佳に家事を手伝って欲しいところではあるけど…以前お願いした時、彼女はこう答えた。

「最近は夫婦が分担して家事をする時代だってSNSで見かけたもの、私はお洗濯してるよ」

確かにそうだけど……。


僕は恵里佳に家事を全て任せたいのでは無く、半々にして貰いたいのが本音だ。
例えば、恵里佳が必ず休みである土日の昼間に掃除機をかけるなり…それだけで充分だ。


細かい性格である僕だけど、思ったことを強く言えないのが僕の弱点でもある。



「さて、私はそろそろ寝るね。おやすみ~」

「う、うん。おやすみ」




渡辺家、結婚3年目。


家事に対して僕は少し不満なところはあるものの…結局なんとかなってしまっているのが現状である。



2LDKのマンション、寝室は2つ。
僕達は別々の部屋で寝る。


そして僕達は……セックスレスである。



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