鬼の縮命

風浦らの

文字の大きさ
5 / 5

鬼の宿命

しおりを挟む

    昔むかし。
    今からずっと昔の話。
    この辺りには沢山の鬼が住んでおった。

    「鬼?」

    そう。鬼じゃ。
    その鬼達は人間の魂を抜き取り、それを喰らっておったそうじゃ。
    鬼の力は凄まじくての。人間では到底太刀打ちする事は出来なかった。その結果、遂には村が一つ滅んでしまったのじゃ。

    「村が?    怖いね」

    そうじゃな。
    だがそれを良しとしなかったのが、当時この国を治めておった神様じゃった。
    神様は傍若無人な鬼達の、目に余る振る舞いに釘を刺すべく、鬼の長を呼びつけた。そしてその鬼の長に対しこう言ったのじゃ。

    『お前達は人間を喰いすぎた。手当り次第に喰っていると、いずれこのままでは人間が滅んでしまう。そうなって困るのは、お前達も一緒ではないのか?    もう少し節度を持って行動してくれないか』

    それに対して鬼の長は、それを了承するどころか、人間の弱さを引き合いに出し鬼がいかに優れた存在なのかを雄弁に語りだした。

    アイツらが軟弱なのが悪い。人間はまだまだ沢山居る。俺達はこれからも喰いたい時に喰いたいだけ喰うんだ。と、神様の言う事を全く聞こうとはしなかったそうな。

    その態度に怒った神様は、鬼がこれ以上人間を喰い過ぎないように、その大いなる力を使い、鬼の食事に三つの制約をかけた。

    「せいやくって何?」

    条件を課して自由にさせない、という事じゃ。

    「どんな条件だったの?」

    一つ。健康体の人間である事────
    二つ。喰らう鬼に心を開いた人間である事───
    三つ。必死に生きようとしている人間である事────

    それ以外の人間は、味もしなければ栄養も無く、空腹も満たされることはない────という過酷な条件じゃった。

    「味もしなくて栄養も無いなんて、食べる意味無いよね」
    
    喰らう意味が無くなり、その条件を満たせなかった沢山の鬼達が、その姿を消していったそうじゃ。
   逆に生き残った鬼達は、生きる為に知恵を付け、人間に恐れられない存在へと変わっていった。

    「厳しい制約だったんだね」

    その通り。
    おかげで鬼の数は激減し、当時絶滅寸前まで追い込まれた。
   しかし鬼の姿を見る事は無くなった今でも、僅かな生き残りが稀に人里に降りてきて、生きる為に人に取り入り、喰らおうとしておるそうじゃ。
    
    「ふーん。でも生きるためだから仕方がないよね」

    そうじゃな。人間も生きるために狩りをし、多くの動物の命を奪ってきた。彼等だけを責めることは出来ぬよな。

    鬼達は、人間に心を開いて貰うために近づき、時には自らその心を開いた。
    そうやって心を通わせた仲になった相手だとしても、鬼は生きるためにその人間を喰らわねばならない──────
    それが現代の"鬼の宿命"なのじゃ。

    「なんか、かわいそう」

     わしもそう思う。
     神から与えられし制約は、あまりにも重かった──────

    「────あ、もうこんな時間!    お話の途中だけど、私、今日これからお友達と遊ぶ約束してるの」

     友達じゃと?

    「そう!   昨日お友達になったの。ニーオっていう子なんだけど、すっごく可愛くて面白い子なんだよ!」

    そうかいそうかい。
    では気を付けて行っておいで。
    あんまり暗くならないうちに帰ってくるんじゃよ。

    「うん!    行ってきます。また夜お話聞かせてね、おばあちゃん」

    さて、もうお昼か。
    わしも『俺の人生鬼モード』の再放送でも観て昼寝でもしようかの。
    あれは何度観てもええ。わしの人生のバイブルじゃ。






     おしまい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

処理中です...