鬼の縮命

風浦らの

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鬼の縮命

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 それから約一ヶ月半程が経った。
 日にち的に言うと現在は4月23日。

 俺の書いた小説は、無事会議で可決され出版される事が決定された。特に鴨志田さんの力が大きかったようで、なんでも会議の場で「私の進退をかけます!」と、恥ずかしげもなく言ったそうな。

 それは本当に喜ばしい事なのだが、問題もある。どんなに早くても、本になるのは6月を過ぎてから。そして俺が死ぬのは5月3日。
 俺は自分の作品が書店に並ぶのを見るどころか、世の中の反応すら聞くことが出来きずに死んでいく。
 当然、作家としては世間の評価が気になる訳で、俺の書いた本で世の中が変わる所を見て見たい。

 そこで、だ。

 俺は鴨志田さんに許可を取って、この小説をネット上で公開する事にしたのだ。
 小説のタイトルは『俺の人生鬼モード』。俺の人生をベースにしたハートフルコメディだ。

 俺とパソコンの間にニーオを置いて、俺は読者の反応を見ようと一日ぶりにパソコンを開いた。
 一昨日完成したのだが、作品を投稿してから燃え尽きたせいで、昨日は全く動けず寝たきりだったからだ。

「行くぞニーオ」
「しゅっぱーつ!」
「何処にも行かねぇっての」

 掲載した投稿サイトには、読者のポイントや、感想が入れられるシステムが備わっている。
    果たして、俺の作品は世間に受け入れられたのだろうか────


 ──────────。


 俺は画面に映し出された光景に絶句した。

 ジャンル別ランキングでは大きく離された第3位。感想欄は、ポツポツ。中には批判的な内容も含まれている。
 結果、文字通り俺の命をかけた作品は─────

「受け入れられ……なかった。お、俺の全てを賭た作品……が…………」

 この程度の評価を求めていたのでは無い。これを公開した後、俺は何か、世界が変わるような、そんな幻想を抱いていた。
    窓の外では桜が散り始めており、その光景と自分を重ね合わせた。

「藤田ぁ?」
「ごめ、ん。ニーオ、みっともない所、見せちゃって…………」

 大粒の涙が音を立ててテーブルを打つと、俺はニーオを退かして、そのままパソコンの前に伏せた。

「藤田ぁ、泣かないの」

 俺の人生何だったんだ…………


 ─────それから何分そうしていただろう。
    俺はノックの後に開いたドアの音で体を起こした。

 こんな時に誰が…………

「鴨志田さん……」
「あ、ごめんね。空いていたから、つい」

 鴨志田さんの顔を見たら、再び涙が零れた。折角応援してくれたのに、俺は………俺は…………

「ダメ、でした……」
「え?」
「ダメだったんですよ!!    全てが届かなかった!!     俺の人生、やり切っても、いい作品が書けなかったッ!!」

「そ、そんな事は……あれは確かに面白かった」
「俺が死ぬと分かっているからですか!?     世辞なんて要らないんですよ!    ハッキリつまらないとアドバイスが欲しかった────、俺の命、後1週間しか無いんですよ!!」

「藤田くん、違うよ!   世辞なんて────」
「煩い!!」

 こんな事なら、もっと面白いプロットを立てれば良かったんだ。人の心を動かすような、そんな、そんな───────

「まだ、まだだ、時間はある──────ッ」

 俺は再びパソコンと向かい合った。
 もう一度、あと一回だけ俺にチャンスを──────

「藤田君それ以上は……あれ以上面白い話をあと1週間でなんて────、それに体だってボロボロじゃないか!?    見るからに痩せこけて────」
「無理なんて無い!    出来る、やる!    やるんだ!    俺の小説でこの世の中を────、クソッせめてあと1ヶ月長く生きられたら…………ちっくしょぅ!!    なんで────」

 俺はパソコンで新規に小説を書くためのページを開いた。
    まだ間に合う、まだまだやれる。せめてあと1ヶ月──────


「もっと、もっと生きたい。次は もっと、“ 必死に生きる ” から。神様、もう少しだけ俺を…………生かして…………」

 我ながらこの後に及んで神頼みとは情けない。本当に人間ってやつは勝手だよな。でも一生懸命生きるのは本当だ。この小説にもその思いは込めた。


 その時。俺の心臓が大きく1つ脈打った─────

「ウガッ……」

 激痛に思わず胸を抑えて倒れこむ。
 どうなってるんだ俺の身体は……そんな筈ねぇのに……俺の命は最低でもあと────

「ウ……ググゥ……」

 やべぇ……息出来ねぇ……苦しい、なんで……どうして……まだ…………


「藤田君?    藤田君!!」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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