しぇいく!

風浦らの

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第三章 【誓】

これが現実

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 ──第三試合──

 第三試合。
 卓球台を挟んで両者が向かい合っているのだが、対戦相手の双子の夢と叶は、コソコソお喋りに夢中な様子だ。
 時折こちらを見ては、クスクス笑う仕草も見受けられる。

 「海香先輩、なんか……」
 「まー、気にしない気にしない」

 前出の選手同様、感じの悪い雰囲気に包まれながらも、試合は始まる──、

 ──念珠崎ベンチ──
 
 「桜先輩、あの双子本当にそっくりですね……」
 「片倉夢と片倉叶。双子のペアという事で、私達の世代じゃ有名なんだよね。でもそこまでの実績のあるペアでは無いよ。決して勝てない相手じゃ無いと、私は思うけど……」
 「どんな卓球をするんですか?」
 「んー。前に見た時は、ピッタリと息の合ったコンビネーションで、攻撃と守りの役割がハッキリとしたペアって印象だったかなぁ」

 白球を目で追いながら、桜はブッケンの質問に答えた。
 この試合に勝てば、いよいよ決勝が見えて来る。逆に落とせば一気に崖っぷちに立たされる一戦──、

 姉の夢のドライブ。
 卓上に着くなり加速したボールが和子の横をすり抜けていく。

 【0ー2】

    攻撃担当は姉の夢。
 見るからに得点の取りやすい、和子のレシーブ側に照準を絞って攻めてきているようだ。

 「わっ子ちゃん、硬いよー。リラックスリラックスー」

 得点を許しても気落ちしないように、海香は和子に声をかけたが、和子の耳に届いている様子は無い。
 まだ始まったばかりだというのに、息は上がり、動きもぎこちなく明らかに緊張している様子である。

 ならばと海香は、一気に攻撃に転じた。和子に攻撃が及ぶ前に、夢に向けての先制攻撃。得意のドライブを、夢の懐深くに打ち込んだ。
 海香のドライブが夢のラケットに当たった瞬間、そのラケットを駆け上るかのように、上に上にボールがよじ登って来るのを夢は抑えきれず、堪らずコート外へと弾き飛ばしてしまった。
 たったの一撃で海香のドライブの異常さを思い知らされた夢。

 ──なにこれ……こんなのあり!? 違反ラバーでも使ってるんじゃ無いの!?──

 そう思うのも無理が無いほど、海香のドライブは中学生の中では群を抜いている。

 【1ー2】

     少しでも甘く入ればすかさず海香のドライブが飛んでくる。
 逆に、海香のボールが甘くなれば、和子を狙い得点を決めるチャンスが巡って来る展開。

 【3ー5】
 【5ー8】

    縮まらない差。
 いかに海香といえども、これはダブルス。自分一人ではどうにもならない失点もある。一人で勝てる程甘くは無い。
 海香と和子の体が交錯し、バランスを崩せば次の攻撃もうまくはいかない。
 対して夢、叶えペアは完璧な動き。まるで相手の考えている事がわかっているかのような、時には一人でやっているかと錯覚するような無駄のないその動き。

 ──でも、勝つためには得点するしか無いんだよねーっと──

 海香の無理な体制からのカーブドライブ。鋭いカーブを描き、着弾とともにさらに曲がる桁外れの変化。

 それを、夢がなんとか食らいつきラケットに当てるも、回転に負け明後日の方へとボールが弾け飛んでいく。

 「あぁぁっ! もぅ! 馬鹿みたいに回転かけてぇぇ!」

 夢は堪らず声を荒げた。

 ──ドライブマンは冬に強くなる。
 
 卓球界にはこんな言葉がある。

 これは迷信ではなく、実際にそうなる事も珍しくない。それは──、
 湿度の高い夏場、ボールとラケットの間の摩擦が落ちるのに対し、乾燥する冬場は摩擦力が上がり、それに比例するようにドライブの回転数が上がるのだ。
 回転数で勝負するドライブマンにとって、冬場は正に天国なのだ。

 【6ー8】

 「夢、ちょっといい?」
 「ん?」

 夢と叶の体を寄せての短い作戦会議。
 小さな声のやりとりは、当然、他の者たちには聞こえてこない。

 「よし。わかった。あとは任せて!」
 「じゃあ、基本的には今まで通りで」

 不適な浮かべた瓜二つの顔。
 この二人には海香を封じ込める秘策があるのだろうか──

 再開後。
 海香のカーブドライブ。
 強烈な回転から来る鋭い変化だが、体制不十分からの打球はコースが甘く、これは夢の守備範囲内。
 先ほど同様、夢のラケットにぶつかりラケットの中で暴れだす。
 だが、今回は弾け飛ぶことはなく、上手く回転を抑え込まれ、和子の元へと返ってきた。

 「はわわわわ」

 返ってきたボールを焦ったようなスイングで迎え撃つも、和子には相手コートに返す事ができず──

 【6ー9】

    この得点がターニングポイントとなり、念珠崎はその後一気に攻め込まれ、このセットを落とした。

 【7ー11】

    これでセットカウントは【0ー1】

 第一セットが終わると、両者はコートをチェンジするために場所を入れ替える。
 散々攻め込まれ、多くのミスを重ねてしまった和子は、下を向く事しかできなかった。
 そんな和子に、海香が優しい言葉をかけるより先──

 「やっぱりね! ど素人だね!」
 「こっちを狙ってれば間違いないよね!」

 すれ違いざまに投げかけられた、夢と叶の心無い言葉。

 あまりにも辛い現実。それでも試合は続く──

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